術後〜ここからが闘病 闘病備忘録2
ICUで二晩過ごした後、僕は一般病棟に帰ってきた。ちょっと落ち着いたときに見てみるとお決まりの尿道カテーテルはもちろんのこと、点滴は腕と首に、後はお腹から管が6本とそれぞれの管の先に大小の袋が付いている。そして脚には塞栓症防止の機械が定期的に音を立てながら動いていた。
まるでガリバーだ。
手術中の14時間のことは、当然の事ながら何も憶えていない。ICUにいた2日間はいろいろなモニターの光や音に包まれて大宇宙をちっぽけな宇宙船で漂っているような気分だった。
病室に戻った瞬間からそれが一気に現実に引き戻された感じだ。現実とは言え、自分一人では何も出来ずナースコールを握ったまま天井を見ているだけで時間が経つのがやたらとゆっくり感じられた。それでも人間としての感覚は容赦なく戻ってくる。まずは痛み、そして便意、不自由な身体ではあまり戻ってきて欲しくない現実だ。特に痛みには閉口した。開腹手術で、鳩尾をてっぺんにメルセデスのエンブレムのようにメスが入っていて、まずその傷の痛み、そしてお腹の内部からの痛みがひっきりなしに襲ってくる。人間、痛いところがあるとメンタルがグッと落ち込むもので、考えることといえばこれから先自分の身体はどうなっていくのか?すぐに再発したらどうしよう?身体に刺さっている管がぜんぶとれる日がくるのか?などネガティブなことばかり…。
とりあえず見える範囲の癌は取り除かれた。しかし、ここからが長い闘病生活の始まりである。