共同売店幻想(落ち穂R3.3.18)

 自分でも共同売店をやれるかも、と思ったきっかけは、安田協同店の存在だ。6年前から運営している移住者の夫妻は、スペシャルティーコーヒー栽培というカッコよすぎる本業がある。そして当初からSNSで発信していた。かれらのおかげで、移住者、副業、面白そう、というイメージがあった。自分が始めた少し後には、やはり移住者の若い方が辺野喜共同店の運営を始めた。さらに、愛と希望の共同売店プロジェクトという共同売店の魅力を発信する若い二人組がいるし、ほかにもちらほら売店を起点とした地域の課題解決を考えている人がいるようだ。彼らに共通しているのは、共同売店の本質を理解しつつ、発信して外部の人の流入を促したり、独自のアイデアを出したりできることだ。今後共同売店は思わぬ形で進化していくんじゃないかという期待がますます高まる。

 ところでなぜ私は赤字覚悟で売店をやろうと思ったのか。「地域の役に立ちたいから」という答えを期待されることが多いが、どちらかというと好奇心でやっている。リアルな共同売店と集落を体験してみたい、黒字化できるか、ちょっとした雇用を生み出してみたい――。もちろん運営の過程では地域に一役買っているのかもしれないと感じる瞬間が少なからずあり、それはやりがいというボーナス、売店運営の付加価値だととらえている。

 共同売店は福祉的ボランティア的側面で憧憬をもって語られることが多いが、私はそこには本来対価やしくみがあるべきで、誤解を恐れずにいえば、ただでさえ経営が厳しい独立採算制の共同売店の人の善意に頼るのはちょっと違うと思っている。実際人柄と善意とで上手に運営している方もいて、そういう方には心底敬服する。でも自分にはなかなか難しい。共同売店とは、極めて独特な立ち位置の、なかなかに因果な存在なのだ。

 いろんな人がいろんな立場で共同売店に幻想を抱いている。私はひそかに、その幻想を打ち砕いてみたいと夢想する。

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