#2

見渡す限りの黄金、己が立つ地面から地平線の向こうまで
ありとあらゆる存在が黄金で構成された黄金の楽園
その楽園の中心にその黄金の狐は居た
全身が黄金の輝きで満たされたその狐は周囲の黄金を見渡し
満足げに目を閉じると目の前の奇妙な訪問者を軽く蹴りつける
ケモノのような耳としっぽが生えた食パンのようなソレは
ふわふわとした触感で蹴っていてやや気持ちが良かったのだが
黄金でないものがここに存在するということはやはり気に食わない
懐から黄金の球体をソレに押し付けながら黄金の狐は呟く
「んでコイツは何?けもののパン?パンケモ?いやけもぱん?」
「そう、けもぱんだ」
いつの間にか隣に立っていた小さな黒い狐は
黄金に変わっていくソレを撫でながらそう呟いた
「けもぱんねぇ…アンタが連れて来たの?」
そう問いながら黒い狐にも黄金の球体を押し付ける
「いや違う…まて押し付けるな…なんだその球は!」
「Matcapだよ、お前も黄金になれ」
「断る!!!」
そう拒絶した黒い狐は黄金の狐を押し返す
「…私はけもぱん調査隊長、kuran、コイツを調査しに来た」
そう宣言すると同時に懐から取り出したカメラで
黄金と化したその生物を撮る
「黄金のけもぱん、新種だな…で、君の名前は?」
「fira、コイツみたいなのがたくさんいるのかい?」
「いる…まてなんで…その…Matcapを構える」
「そいつらの価値を上げてやろうと思ってね」
「黄金になったからと言って価値があがるわけじゃないだろう」
コイツは何を言っているんだ…?と訝しむfiraだったが
kuranは気にせず続ける
「黄金の価値はソレが生み出すモノにある
黄金の輝きを磨き上げた芸術、黄金と引き換えに得られる金銭
黄金の性質が生み出す技術…それらが黄金に価値を与えるのだろう」
詭弁だと反論することは簡単だった、しかしただ反論するのではつまらない
そう考えたfiraはしばらく考えた後にこう反論する
「ふゥン…だったらこの黄金のけもぱんとやらも何か生み出すってワケ?」
これなら反論に困るだろう、と自信たっぷりに言い放ったのだが
その黒い狐はソレを待っていたとばかりに目を紅く光らせた
「そうだ…コイツはきっと混沌を呼ぶ、きっと大きな、大きな狂乱を…!」
ー狂気、そう呼ぶにふさわしい威圧感
今となって眼の前に存在する"ソレ"が何者かと問いたくなるほどの恐怖
しかし、その恐怖の先に確かに存在する"価値"
その狐が言う"価値"に対する好奇心が高まり思わず尻尾がつり上がっていく
「だったら…私にもその先にある価値とやらを見せて」
「勿論、君ならこの狂乱をもっと大きくできるだろう」
そう言って互いに手を硬く握りーfiraは拳を振るう
何が起こったのか一瞬理解できずに瞳に涙を浮かべるkuran
やってやったと言わんばかりに堂々と立つ黄金のfira
一見相容れぬように見える二人はここに同盟を結んだのであった

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