バレルサウナ導入のススメ
「せっかくなら本格的なサウナを所有してみたい」
パンデミックによって世の中が大きく変遷し、サウナ施設を気軽に訪れることが容易でない時代に。そのような折、サウナファンから「自分のサウナを持ちたい」という相談が急増しました。
筆者は2019年に テントサウナ購入のススメ という記事を執筆したのですが、さらに本格的なサウナを導入したいというご要望も頂くように。そうした中、新たなトレンドとして登場したのが ”バレルサウナ” でした。
樽の形をした木製アウトドアサウナは、テントサウナと比べ物にならないほど耐久性が高く、体感温度や感じ方は温浴施設のサウナと遜色ない。そしてなにより、誰にも邪魔されることなく、セルフロウリュを堪能できる…
筆者はバレルサウナを仲間内で購入し、日常、非日常それぞれの場面でバレルサウナを使い倒してきました。こちらの記事ではバレルサウナを導入してみた所感と、オススメのモデルについて取り上げていきます。
ちなみにこの記事の結論としては、「バレルサウナを有効活用できるかはオーナーの考え方次第」と現時点で考えています。その理由についてもしっかりと触れていきますので、よろしければ最後までお付き合いください!
バレルサウナをプライベートで買ってみた
バレルサウナの良さは「温浴施設と遜色ないレベル」「誰にも邪魔されずロウリュを楽しめる」と書いたのですが、「バレルサウナを通じてサウナを作る喜びを共有できた」ことも、自分にとっては極めて重要な要素でした。
ただのサウナ好きが、どのように人を巻き込み、どのように物事を進めるか。そして1人で作業するよりも、重い木材を運び出しながら、皆で汗を流したという思い出と、サウナが建つ時の達成感は何事にも代えがたい。
バレルサウナの購入から設置に至るまで、その過程では予測もできないほどの困難が連続します。テントサウナの場合は10~20万円で購入でき、設営撤去も個人で完結しますが、バレルサウナの場合は同じようにはいきません。
だからこそ、「自分のサウナを持ちたい」という志を持った仲間が身近にいるかどうかが肝になります。その実体験から、バレルサウナは個人向けのようでいて、実は個人向けでないという印象を、勝手ながら抱いています。
人とサウナを建てる過程を楽しめる。そしてサウナが建つ喜びを周りの人達に共有したい。とりわけバレルサウナは、人とプロセスを分かち合える方にこそ向いているように考えます。テントサウナとは、趣旨目的も全く違う。
そういった方は、個人で10万円~を工面してテントサウナを買うよりも、10万円~を工面できる仲間を沢山集めてバレルサウナを買う方が、コスパが合うかもしれません。少なくとも筆者にとっては、後述の理由で買いでした。
皆で散々苦労し、ようやく建った時のサウナ初め。ロウリュでジュワっとしたときの音と、仲間たちの歓喜の声。それは何事にも代えがたい歓びで、この喜びのためなら、10万円~の費用さえ安いと感じたのは不思議でした。
設置に至るまでの苦労や困難は後述しますが、それらすべて報われる程の魅力が、バレルサウナにはあります。まずは2022年現在、日本で流通している各種バレルサウナについて、詳しく取り上げていきたいと思います。
➀ロシアの本格バレルサウナ
まずはロシア産のバレルサウナ、"Bochky" を紹介します。 "Bochky" は
福岡県宗像市でサウナ小屋を運営している、株式会社イズバが販売代理店を務めています。筆者はイズバ社を通じて、"Bochky"を導入しました。
"Bochky"の生産ラインを紹介しているPVがあるのですが、思わずバレルサウナが欲しくなるような、洗練されたムービーですね。 "Bochky" が国内でいかにブランディングに優れているのか、PVからも伺い知ることができます。
"Bochky" は多種多様な内外装とサイズ展開がありますが、筆者はもっともオーソドックスなものを導入。サウナ室を仲間内で広々と使えるよう、長さは3m、重量1000kgのタイプを導入しました。※スペック詳細はこちらを参照
内装はこちら。熱が効率よく循環する樽型サウナならではの仕組み。木材は天然シダーを使用しており、木の香りが室内に充満します。ストーブですが、筆者はHARVIA社の電気ストーブを導入。※ストーブのくだりは後述
ストーブは用途によって変更可能で、薪ストーブも選択することができます。筆者は電気ストーブと薪ストーブ、どちらも体験したことがあるのですが、熱さに関しては正直どちらも変わらないです。しっかり暖まる。
また、モノによっては屋外から薪くべができるタイプも。こちらであればサウナ室に入室しなくても、外から薪をくべることが可能です。薪くべする人が汗をかかなくて良いという点で、運営側の利点も考慮したいところです。
内装には前室を設けることもできます。寒冷地の場合、前室によって過度な冷えを防ぐほか、着替えを置いたり、休憩スペースとしても活用することが可能です。筆者は実際導入してみて、改めて前室は必要と感じました。
以上が"Bochky"の紹介でした!その他、筆者が気付いた"Bochky"の購入検討ポイントを簡単にまとめましたので、ご一読いただけましたら幸いです。
②エストニアの新星バレルサウナ
次に紹介するのはエストニア産のバレルサウナ。totonoü Japan株式会社が販売代理店を務めています。エストニアのサウナ?と聞いてもピンとこないかもしれませんが、エストニアのサウナ文化をまとめたPVがありました。
実はエストニアも、サウナの本場フィンランドに匹敵する文化を持ち、ほとんどの家庭にサウナがあるとのこと。totonoü社は、日本でまだ少ないプライベートサウナの絶対数を増やす、というビジョンを掲げているそうです。
totonoü社はイズバと同様に、多種多様のバレルサウナを輸入できるとのことです。そして筆者がまず体験したのはガラス張りのタイプ。この外装においては、先に取り上げた"Bochky"とは一線を画すると、筆者は感じました。
こちらのバレルサウナは長さ2m、重量は600kgほど。背面の上半分がガラス張りになっており、室内から外の景色を一望できます。サウナで汗を流しつつ、周りの景観を眺めながら、視覚からも "ととのう" ことができそう。
そして内装で驚いたのは、ガラスがほぼ曇らないこと。何度かロウリュを試みたのですが、特殊な加工が施されているのか、熱や水蒸気で曇らないのは驚きました。テントサウナの窓などは曇りがちなので、逆に新鮮でしたね。
極めつけは木材!サーモ加工されたスプルースの香りが絶品で、他のモデル以上に匂いの良さが印象的でした。その香りはアロマ水も不要と思えるほどで、全体を通してバレルサウナの品質の良さが、とても目を引きました。
景色や香りなど五感を刺激されることで、より開放的な気持ちになれるのがエストニアンサウナかもしれません。検討ポイントを以下にまとめます。
③持ち運びが容易な国産バレルサウナ
続いては、国産型の"ONE SAUNA"を紹介します。株式会社Livertyshipが生産および販売を行っており、宮崎県の木材振興課との連携で開発が決まったそうです。まさにサステナブルな、イマの時代を反映したサウナですよね。
"ONE SAUNA"のPVはコチラ。現在は1種類のみの外装とサイズ展開ですが、今後は宮崎県外の木材でサウナを開発したり、ユースケースに即したカスタマイズモデルを作られるそうです。国産ゆえの柔軟性の高さが特徴ですね。
木材は宮崎県産のスギ材。やはり国産のものだと、日本人の心を思い出してほっとリラックスできます。こちらは完全国内生産のみの手配になるため、納期が短く納入スケジュールが計算しやすいことが特徴です。
"ONE SAUNA"の外観はコンパクト。長さは1.8m~ほど、サウナ自体の重量は200kg~と軽トラックの耐荷重に収まる前提で設計されています。そして最大の特徴はネジを一切使わず、DIY初心者でも1日で建てられること。
こちらのPVはキットを無人島に搬入し、大人達で楽しくビルドしている様子。設営が簡易で済む分、撤去も自由自在だそうです。"Bochky"とは対照的にモビリティ性が高く、初心者にオススメできるバレルサウナですね。
"ONE SAUNA"の内装はシンプルそのもの。ストーブは珍しいガスが熱源のものですが、ロウリュを行うとしっかり暖まります。筆者も体験したのですが温浴施設並の熱さで、冷たい水風呂にも抵抗なく入ることが出来ました。
さらに"ONE SAUNA"にも、ガラス張りのタイプが登場しました。サウナで汗を流しつつ周りの景観を眺めながら、視覚からも "ととのう" ことができます。バレルサウナの広さもいくつかタイプがあり選択することが可能です。
以上が"ONE SAUNA"の紹介になります。検討ポイントもまとめておきます。
④タテ型が珍しい国産バレルサウナ
こちらは2021年9月にリリースされた、国産バレルサウナの"BURROW"です。碁盤や将棋盤の国内シェア8割を誇る、茨城木工株式会社 によるオリジナルブランドです。日本の伝統と技術を感じる素敵なバレルサウナですね。
サウナ室内では茨城県産の「常陸ヒノキ」を使用。ヒノキはスギ材に比べて強度があり、水にも強いため、常設で考えているオーナーにとっては心強いと言えるでしょう。ストーブは電気と薪、両方を選択することが可能です。
そして"BURROW"最大の特徴は断熱材を挟んだ二重構造で作られていること。外気温の変化に左右されづらく、サウナ室内の暖まりを維持することができます。本格的な熱さを求める方に向いているバレルサウナでしょう。
"BURROW"には変わり種として「タテ型」のバレルサウナもリリースされています。バレルサウナは天井に溜まった熱を下ろしやすいよう、円柱型であること多いのですが、このタテ型は従来とは異なる発想で作られています。
外壁は雨に強いモルタルが使われており、サウナ室内は常陸ヒノキを使用しています。筆者はこちらのタテ型で、実際の暖まりを確認できてはおりませんが、一般的なバレルサウナとは異なる暖まり方ではないかと推測します。
以上が"BURROW"の紹介でした。検討ポイントを以下にまとめておきます。
⑤ペンタゴン型の国産バレルサウナ
さて、ここから一見異なるモデルのバレルサウナを取り上げていきます。合同会社新木場ネットワークスが手掛ける "サムライサウナ" です。バレルサウナの大半が海外産であることに疑問を持ち、作られたブランドだそうです。
"サムライサウナ" はペンタゴン型の構造ですが、従来のバレルサウナと同様に対流熱が起こしやすい構造とのことです。そしてベンチの高低差がバレルサウナよりも高く、よりダイレクトな熱を直に体感することができます。
実際の "サムライサウナ" 室内はこちら。アウトドアサウナで最近トレンドとなっている「茂暖」の薪ストーブが使われており、きわめてパワフルな熱を発します。バレルサウナ室内の体感温度としては、高い部類に入りますね。
木材は秋田県産のスギ材を使用。施工には釘や金具を必要とせず、いわゆるサウナキットと呼ばれる部類で、短い納期と施工日数で設営できるところが特徴です。形は違えど "ONE SAUNA" と似たモデルとも言えるでしょう。
個人的に興味深かったのは、壁側に開閉可能な換気口が設けられていたこと。サウナ室内の換気を行う箇所が増えることによりカビ発生防止に役立つことや、アウフグースやウィスキング施術の際の一助にもなりますよね。
以下にて、"サムライサウナ"の検討ポイントをまとめておきます。
⑥樽型の弱点を克服したコンクリートサウナ
最後はもはやバレルサウナではありませんが、樽型の弱点を克服したサウナを取り上げます。北海道の加工会社が手掛ける、コンクリートを再活用したプライベートサウナ "CUBERU" が2022年3月にリリースされました。
木組みのサウナ全般に言えることですが、経年劣化で木材が劣化します。熱による木材の歪みが発生し、穴が開いたりもします。"CUBERU" は外壁がコンクリートのため耐用年数は桁違いで、常設に向いたモデルと言えます。
外壁はコンクリートですが、サウナ室内はご当地の木材を使用。断熱材も組むことができ、サウナ室内の保温性は間違いないでしょう。内装を自在に調整できるためベンチを高く設置することができ、設計の自由度が高いです。
もはや温浴施設で施工したプライベートサウナと変わらぬ内観。サウナストーブはHARVIAを導入しており、電気と薪ストーブどちらでも選択が可能です。サウナ室内のライティングも自由自在にセットすることができます。
"CUBERU" は外観のデザイン性も高く、今後は温浴施設やホテル等で導入が進むことが想定されます。バレルサウナの耐久性は数年単位でみても疑問符がつきますし、常設を前提としたオーナーは検討して良いかもしれません。
以下にて、"CUBERU" の検討ポイントをまとめておきます。
バレルサウナ導入の注意点
以上、バレルサウナの主にポジティブな点について説明してきました。しかし、バレルサウナ設置に至るまで様々な困難とハードルがあることは、これまで表立って語られることはありませんでした。
具体的に何のハードルがあるのか説明しますと、例えばストーブの設置について。特に海外の電気ストーブは要注意!海外ブランドのストーブは見栄え自体は良いですが、実はそのまま直輸入しても日本国内では使えません。
なぜこのようなことをくどくど説明するかといいますと、筆者達は上の座組みを理解せぬまま電気ストーブを輸入してしまい、再工事等で数十万円の追加費用を支払う憂き目に遭ったためです。思い出すだけで泣きたくなる…
さらに、「バレルサウナをどこに設置するのか?」という論点。テントサウナにおいても考慮しなくてはならない点ではありますが、この論点にも裏に潜んでいる課題が山積みで、意外と見落とされがちなんですよね。
たとえば設置を行うのは自宅か、私有地か、事業運営を行う場所か。不特定多数を招くか否かによっても対応は大きく変わります。仮に不特定多数を招く場合は、お住まいの各自治体での施工条例に則る必要があります。
事業を営むか否かに関わらず、不特定多数を招致する場合は保健所や消防署等へのアプローチが求められます。この場合はバレルサウナ購入前に、メーカーから図面を手配し、予め事前相談を行っておくのが確実と考えています。※先に購入~施工してしまうと、後から申請通すのは至難の業…
一方でアウトドアサウナに関する条例は、日本全国で定まっていないのが現状で、各種自治体によっても対応ケースは千差万別。お住まいの自治体情報を専門家に共有しながら、導入検討を行うことが何より大切ですね。
また、いま世界はウッドショックに見舞われており、輸入木材の不足と高騰が懸念されています。商品の値上げもあり得る中、もっとも起こり得るのが納入タイミングの遅延です。この点も考慮しなくてはなりません。
特に多いのが、自治体の補助金等を活用してバレルサウナを購入してしまうケース。実績報告から逆算して事業開始タイミングを決定したいが、肝心のキットが手元に届かず、クレームに繋がるケースも一部散見されます。
これは確かに事業者の気持ちはわからなくもないのですが、メーカーを煽るのではなく、全世界で共通して起こっている事象と割り切り、納入タイミングに+1ヶ月ほどの猶予をみて、検討されることを推奨いたします。
最後に
最後に堅苦しい話題ばかりが続きましたが、事前に情報収集を十二分に行い、専門家を巻き込みながら適切な対応を行えば、バレルサウナライフは難なく実現できると確信しています。
筆者はバレルサウナを個人でも導入し、実際に提案~導入に至った施工事例もあります。各メーカーにお繋ぎすることもできますので、バレルサウナ導入を検討される方は、ぜひTwitterのDMまで一報頂ければと思います!
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