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原作者が30点と評価したゲーム、アノニマス・コードをクリアした感想。(ネタバレ含む)

今回も、シュタゲンズゲートを超えられなかったか


タイムリープとDメールによる世界線変動で運命を変えたシュタインズ・ゲートに対して、セーブ&ロードというチートでフェイトラインを超えるのが今作、アノニマス・コードである。

延期に延期を重ね、なんと制作期間7年(といっても本当に7年間開発しっぱなしだったわけではないと思うが)をかけた本作はシリーズファンの期待がどうしても大きい作品となった。

感想としては、7年もの間膨らみ続けた期待に十分答えてくれたかというと、素直に首を縦に振るのは難しかった。
とはいえシュタインズゲートというループやり直しものがありながら、違った面から攻める本作には褒めるべき点もいくつかあった。なのでまずは良かった点から書いていく。 

良かったところ

序盤からスピード全開、畳み込むような展開

同じく事件を追う形で始まったカオスチャイルドでも、日常シーン→事件に巻き込まれるといった展開だったが、本作ではいきなり事件の最中で逃亡から始まる。
クエストの合間の数日程度、平穏な日々があるぐらいなのでいったいつになったら盛り上がるのか..といった時間はない。 
ファスト映画が生まれるような現代ではこういった展開になるのは妥当だろう。漫画風なカットインもスピード感のある動き、展開を盛り上げるのに貢献していた。 

陰謀論や2038年問題と現実社会の融合

科学ADVでは同じみの陰謀論、IT技術、現代社会の事件を絶妙な比率でストーリー展開に混ぜこみ一見不可能と思えることを科学的な落とし所でもって解決・実証するスタイルは健在だった。
他の作品と比べても今作は特に陰謀論、終末思想と宗教にスポットを当てているようでいつもよりはファンタジー要素は多めか。

聖女の出現は地球シミュレータによって実証されている等、科学によってオカルトを証明するところは実にシリーズ作品らしい。 

悪かったところ

世界層とは結局何だったのか

世界線は横に展開するもので、世界層は縦である。
地球シミュレータによりさらに下の層で地球シミュレータが開発され、さらにその下で..といったループが世界層の元の概念だった。 
本作は世界線ではなく世界層を中心にした話、と最初は聞いていた気がするのだが、蓋を開ければほとんど世界線の話しかしない。 

最初に地球シミュレータGAIAの公開のとき、シミュレータと現実の結果が異なり過去から未来に干渉することから世界線とは違う形で結果を変えられるかと思い、ワクワクしていた。


ところがポロンがセーブ&ロードの話をオズとリディにしたとき、持ち出されてたのは世界線。丁寧にダイバージェンスメーターまで登場して世界線を変えているらしいことを指摘される。
その後しばらく登場するのもフェイトライン。だいたい世界線と意味は同じ。

終盤になってようやく世界層が直接絡んでくるが、実際意識するのは一個上の世界層だけで良いので、正直この設定なくても物語成立できたと思う。
地球シミュレータはせいぜい予測装置でしかなかったし、世界層の設定の風呂敷を広げすぎて畳みきれていなかった。 

"ループ(世界層)を閉じろ。神をハッキングせよ。"

ループを閉じることもなかったし、いうほど神をハッキングしてもいない。
世界層じゃなく世界線についての話なら、シュタインズ・ゲートでお腹一杯なのだ。これ以上なにかするならSteins:??でやればいいのであって他作品でやろうとしたら劣化シュタゲになるだけ。 

ただでさえシュタインズゲートと同じループものということで、シュタインズ・ゲートと何が違うのかを見たかった本作で、世界層の設定が死にかけていたのは致命的。

ボリュームが薄い

まずノーマルエンドとグランドエンドの2つしかなく、キャラクターごとの分岐がない。他にあるのはバッドエンドとちょっとだけ展開が変わる要素のみ。プレイ時間にすれば10時間少々で終わる人が多いのではないだろうか。 

その薄さゆえ、キャラクターの掘り下げや当然あっただろう描写はかなり急ぎ足で進行してしまっている。 

顕著なのはポロンがセーブ&ロードした際、最初こそやり直し特有の同じことをするシーンが挟まれていたが中盤には説明は省略、なんやかんやあってこうしたみたいなところから開始する。 

グランドエンドに行くためのロードとそれまでの事件解決に至っては道中のセーブデータの記録を覗いても、"全部知っていたから完璧に手を打った"程度の描写しかない。
そのせいか、ポロンが救世主扱いで寂しさを覚えているという気持ちもあまり伝わってこないのだ。 

日常パートがない

日常パートの少なさもボリューム不足に引っ張られている。 
満足できた日常パートといえばサイバーフォースドールのライブ、それから愛咲モモとのデート兼クロスとの出会いの話をしていた時ぐらいか。 

サイバーフォースドールのライブは十分以上に良くできていたと思う。 
警察官でありながらアイドルという設定は正直プレイヤーには馴染みづらいものだったから、ARを駆使したライブによって世界観の描写をしつつ人物像を掘り下げることに繋がっていた。
それでも日常パートはこれで全部である。
ウインドのZOOTOMOのパートナーが出てくるのはほぼ序盤のみ、高校に通っている以外は特に情報はないし、「中野のオンリーワンになる」という意味も最後までシナリオに絡んでくることはなかった。 

キャラクターの魅力がない

今作のキャラクターは良くも悪くも尖ったところがない。
おまけに掘り下げるボリュームもなかったのでキャラクターによっては存在理由自体問われる者もいる。(バイクモーターズの二人など)

特にクエストをサポートしてくれたクロウとウインドだが、彼らにスポットが当たることは結局一度もなく、二人合わせて癖のなくなったダルみたいだった。
ロザリオも少しだけ日常パートでポンなところを見せていたが、それ以上は何も語られなかった。鮫洲さんとバンビがアイドル警察官を始めた理由やオズとノンノの出会い、JUNOとケントの関係..何もかも情報がない。 

割と事件の展開はワンパターン

ハイテンポな展開が良かったクエストと事件だが、おおまかに分けると全部で以下の通りになる。 

  • ハイハック

  • フェイスハック

  • プールハック 

  • 垓機関潜入 

  • 小惑星衝突阻止 

  • 終末の日回避

  • 愛咲モモの救出 

これだけあるのだが、展開は基本的に同じ。

  1. 事件発生

  2. 4chan等駆使して事件の概要把握 

  3. 仲間の力を使って情報入手・解決策の模索

  4. 現場に向かう

  5. 問題が発生, 2,3,4のどれかにロードで戻る

  6. 問題がなくなるまで繰り返す 

  7. 解決する 

正直私はプールハックのころにはワンパターンなのを感じてきて、
"どうせこの時間のロスはセーブ&ロードを使って最初に戻って情報を得た上でやり直すのだろう"という検討がつくようになってしまっていた。

垓機関潜入に限っていえば、万能のチートと思われたセーブ&ロードを駆使しても蘇我ミオリの死とアスマの災いを避けられず失敗したのは良いアクセンセントだった。シュタインズ・ゲートのまゆりの死の運命のオマージュにもなっていてポロンの心が折れた気持ちにも共感しやすかった。 

しかしその後の章はミッションがいよいよ現実離れし始めた。
小惑星衝突の回避にしろ終末の日阻止にしても、アスマの舐めプ(舐めプというより主人公だけ放置)に頼ったご都合主義を感じるようになった。
ケントは存在ごと消滅させたくせに、ポロンとその一行については激しく敵対しながらも直接手はくださないし、小惑星を消されたならもう一度降らせればいいだけの話。だって願うだけで大抵のことはできるんだし。 

唐突に始まる上の世界層の存在 

アスマの暴走後、彼の超常現象によって人々はこの世界がデジタルでシミュレーションであることに気づくのだが、その考えに至れたことがいまいちわからなかった。 
ポロンのセーブ&ロード、ダビデの復活、サクラメントという超常現象はそれまでにも散々発生していたのにこれらには触れてこなかった。この章になって突然人々が一つ上の層の世界を意識し始めて自分達がデジタルの世界だと認識するようになったのである。 
どうも無理やり世界層に話を持っていったように感じた。
期待していたより世界層って話として展開されないんだな..と思って盛り下がったのもこのあたり。 

メタ要素が弱かった

ジャンル: メタ科学ADVというだけあって、プレイヤー=アノニマス君の存在をポロンは物語のかなり始めの方から認識していて第4の壁を超えてくる。

危ない場面になったらポロンへハッキングトリガーでデータのロード、すなわちやり直しを提案することできる。 
確かにセーブ&ロードのシステム自体は面白い。シュタインズ・ゲートとはまた違ったやり方でループするシステムは最初こそ新鮮さがあった。

だが実際のところ、プレイヤーがポロンに干渉できることはセーブ&ロードのタイミングを促すのみ(終盤の一部を除く)で、それほど自由度の高いシステムではなかった。
期待していたものを下回ったと感じたプレイヤーは少なくないと思う。 

理由はもうひとつあるが、単純に時期が悪かった。
2022年になって、本作が7年も開発に要している間に世間ではメタ的要素をメインとしたゲームが次々発売されていた。 

プレイヤーの存在をキャラクターが認知していることはもちろん、当然のようにセーブデータを破壊したり、キャラクターデータそのものに干渉するようなものもあり、そういった衝撃を体験済みのユーザーは少なくない。 

そんな中でメタ要素を謳ったゲームであれば、セーブ&ロードくらいでは"どっかで見たな"程度の印象を超えられないのだ。 
プレイヤーがデータをロードしたことそれ自体を認知したり、今が何回目のロードかを丁寧に数えるような描写を持ち込んでくるゲームさえ存在したが、本作にはそれを超えるようなあっと驚くような仕掛けは正直なかった。
インタビューでは驚くようなどんでん返しがある..みたいな話だった気がするが、そんなのあったっけ..? 

ハッキングトリガーが使いにくい

プレイした人は全員同じ感想を抱くと思うが(開発陣も分かっているだろう)、ハッキングトリガーが非常に使いにくく融通の聞かないシステムである。
プレイヤーからポロンに対してロードを促す目的で、ハッキングトリガーを使えるがそれにポロンが承諾するのはごく一部のタイミングというか数回のメッセージのみである。 
それを逃せばいかに危ない展開だろうと、「今じゃないだろ!」「黙っていてくれ!」「失敗したんだ…」とまるでこちらの意を解さない言動で突っぱねられる。ロードすべきタイミングはわかっているのにゲームの仕様でボタンを連打するしかないマヌケ行為をやらざるを得ない。
これ本当に令和のゲームだろうか。

個人的に気になったところ 

ポロンとアノニマス君のシンクロ率が低すぎる 

ハッキングトリガー自体の問題の項目と重複する部分があるが、ポロンがセーブ&ロードするタイミングと我々がセーブ&ロードを提案したいタイミングが絶妙に噛み合わない。 
ポロンは終盤になってようやくアノニマス君が作成したセーブデータからロードするようになるが、それは特定のタイミングドンピシャで作成したセーブデータのみで、人によってはそこを探すのに攻略を頼ったものもいるのではないだろうか。 
バックログが使いにくいのと悪い意味で噛み合ってしまい、結果的に没入感を削いでいたと思う。 

愛咲モモのデータを世界へアップロードするコマンドについて、"ここまで観測してきたあんたならわかるはずだ"なんて言われるが、私はそれまでライフゲームは一度も起動してなかったし何なら愛咲モモの顔にタトゥーがあった事自体ほぼ忘れていた。(服装が変わってからは顔のアングルも変わるため、タトゥー自体目立ちにくい。タトゥーの存在について触れるのも最初だけなので言うほど愛咲モモの象徴って呼べるか…?少なくとも本人はそう思ってなさそうだけど)

タトゥーより気ぐるみのほうが印象強くない?

なお、私はタイトルに戻ってギャラリーからモモの写真をアップロードできるのではと苦戦していた。

愛咲モモについて

本編でほとんど見なかった気ぐるみ。
トレイラーや宣伝は全部この格好なのに

キャラクターの掘り下げについては十分やったと思う。
気になるのは気ぐるみだ。
アノニマス・コードがまだトレイラームービーぐらいしか公開していなかったときから、彼女だけ気ぐるみの姿で正直一人だけ浮いていた。
当初このキャラクターデザイン馴染めるかななんて思っていたが、科学ADV作品では癖のあるキャラこそ作品を終えるころには好きになっているもの、と信じていざプレイしたのだが..。
軍から逃げた次の日にはもう気ぐるみは着替えて、もう二度と披露することはなかった。いや、実際街中であの格好は目立つと思うけど実質彼女のトレードマークだったのにどうしたんだ。 
主題歌のCDジャケットだってあの姿だったのにゲーム内ではほぼお披露目なし。 


古理久ケントについて

結局立ち位置はどこなんだ

cicada3301、もといケントについては突っ込みどころが多い。 
終末の日を回避するために協力者に相応しい人間を探すのは結構なのだが、そのためのクエストがどんどん過激になっていって人が死ぬようになったり、社会を壊しかねない事件になっていった。
なぜクエストが過激化していったのか、これについての描写は正直なかったと記憶している。 

所詮シミュレートだから多少人が死んでもいいと思っているのだろうか?
だとしても終末の日より先に世界を終わらせかねなかったフェイスハックについては何を考えていたのだろうか。 
おまけにcicadaに会えたことに喜ぶだけでここらへん言及するキャラは誰もいなかった。困っている人を助けるポロンとモモとは対立すると思うんだけど…。これも掘り下げが弱いせいだと思う。 

聖務室およびエージェントについて 

聖務室とそのエージェントだが、思ったより弱くない..?
身体的に多少優れていようと炎を広げられるのは手の届く範囲ぐらい。 
実際二回ともダビデは銃弾一発に敗れているので、銃を持った一般人なら十分対処できるのではと感じてしまう。
っていうか二回目はゾンビなのに銃弾頭に食らっただけで死ぬんだ…?
もう死んでいるんだからてっきり死体ごと消滅させるんだと思っていのだが。

ローニン。舐めプに見えた場面は未来予測のタイミングを合わせていただけと信じたい。 ところで最初登場したとき、いくら未来予測ができるからって発泡自体できなかったのはなぜ。 
あとモモの行動も一部予測していた気がするけど、モモ自体シミュレーターには出てこないから予測できないんじゃ?

ロザリオ。多分フェリーノ・アルカナにはスパイなのバレていたと思うけど、どうやって嘘つき通した? 

フェリーノ・アルカナ。 
未来予測とフェイトラインを変えられる使徒を操れる。
ポロンにとっては天敵ともいえるが、セーブ&ロードの先まで予測されていたのは正直謎。 

ところで、サクラメントのデメリットって途中から死に設定になってたと思う。ローニンに至っては再計算するの代償とかなさそうだし。 
武装した軍隊に比べればそんなに強いとはどうも思えない。

あの世界のセキュリティ意識がおかしい

アノニマス・コードの世界ではレベルの差はあれどハッカーが世界中に存在している。ランクを見る限り、CERNへハッキングできるほどの腕を持っていたダルに匹敵するかそれ以上のハッカーが存在しておりcicadaは超ウィザード級で過去に相当な事件も起こしていたほどだった。

なのでシステムを完全に乗っ取られるということが十分ありえる世界だったにも関わらず、フェイスハックでは台帳をスタンドアローンな状態にしていなかったり、認証システムが作動しないだけで事故を起こすようなシステムが社会のインフラを担っていた。

2037年の未来のはずなのに、このセキュリティ意識は現代以下だろう。
外部サービスに頼った箇所は障害が起きることを前提に、なんらかのフェイルセーフが働くようにするものなのだが。 

それから、パスワードが使われていることについて。
ハイハックのときと、小惑星衝突阻止のためにポロンの父親のPCを起動するときにパスワードが使われていたが、そのときのポロンいわく"今どき旧式のパスワードを使わなくても"だった。 

あの世界では地球シミュレータを各国が開発していたことを思い返すと、テロの起こりやすい航空機に関してはパスワードは絶対採用すべきではない。
どうあがいてもシミュレートによって秘密は筒抜けになるのだから、地球シミュレータが極秘裏なものだということを踏まえてもその対策として本人以外が突破可能なパスワードは重要な場所では廃止か、本人認証を複合させておきべき。
このあたりの描写が現代より退化していて、見ていて気になった。

パスワードといえばサイバーフォースドールの歌"パスワードには大文字小文字と記号を入れよう!"というタイトルだが、ポロンも言ってたとおり旧式の認証方式なんじゃなかったっけ?それ啓蒙してどうするんだ…。 

終盤の落下するビルに見えた光の軌跡 

終盤、バチカンに東京のビル群が落下していく際にポロンは"直感的に"ビルに対して光の軌跡が見えた"気がした"という描写で、後にグレイパーを持ってきて滑走するのだが、これはARじゃないとはっきり名言している。
にも関わらずBMIを解除すると消えるのだ。
多分これは制作のミス。


回収されてないと思うもの一覧

  • プロローグの少年 誰だったんだ結局

  • ウインドの時計修理のとき意味深に落下した工具。連絡に出なかった理由

  • 愛咲モモのタトゥー。気ぐるみ。履いてない理由 

  • 愛咲モモのデータ容量が多かった理由 

  • セーブ&ロードの代償に発動するフラッシュバックの正体

  • 例の詩をモモが覚えていること、ポロンの涙。(リーディング・シュタイナーと同じように何かしらの形で記憶に残るのか)

  • 最初のセーブデータが404 Not Foundな理由。

結構回収してない伏線(伏線ですらないのかもしれないけど)が多い。

まとめ

これではボリュームを薄くしてキャラクターの魅力が少なくてトゥルーエンドの達成感のない劣化シュタゲと言われても仕方ないのでは。
物語は世界線から世界層へってなんだったの?

アキバのラジ館でシュタインズゲートの動画流してアノニマス・コードの宣伝してたらしいけど、シュタゲを客寄せパンダにして擦るのはSteins:〇〇の中だけにしてほしい。

牧瀬紅莉栖のことをリディが"間違いなく天才"と言っていたが、GAIAの開発者であるアスマや超ウィザード級ハッカーのケントなど現実離れしたレベルの天才がポンポン出てきた本作では霞んでしまう。

サプライズ程度に出す分にはいいと思うが、わざわざ"牧瀬紅莉栖"みたいに強調していて匂わせ感が強いのも気になった。
宣伝でやたら世界線というワードを出した割に、世界層の設定を生かしきれなかったらどうしてもシュタゲの劣化に見えてしまう。 
シュタゲの出張と匂わせはもう勘弁してほしい。もうシュタゲを超える気もなくなったのか…?


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