専門家は無口になる

こんばんにゃ、にゃんこです。そろそろ暗くなってきましたにゃ。

同居人はどこにいるのかわかりません。ボスもいませんにゃ。お留守番というやつです。

にゃんこはにゃんこなんですけど、同居人から聞いた話しを。

専門家はどうしても無口になってしまう」という話にゃ。以下同居人の話・・・・。

なんでも知っている専門家なんかこの世にいないんだけど、専門家は間違いを言ってはいけないというプレッシャーがある。論文だっていつも批判的に読んでいて、たいていの論文に対して懐疑的。データは合っていても解釈には同意できなかったり、データでも本当かなあといつも疑っている。自分の研究室のデータですら、常に疑っている。いつも本当なのか、それで良いのか自問している。結局、信じられるのは、自分でやった実験のみ。いや、自分の得た結果すら疑っている。研究者はそんな性質の人間がほとんど。だから、自分以外の論文を紹介するのも本当に勇気がいる。特に自分の感覚と異なる結果の報告は果たして紹介して良いものかわからない。

マスコミでもSNSでも発信すると常に批判を浴びることにびびっている。(極端の話、正式な手続きを踏んで発表した論文ですら、反論が来るんじゃないかとしばらくどきどきしているもの。)

だって、自分がいつも批判しているから(誹謗中傷というのではなくて)。専門から少し外れている人が言っていることなら、「ああ、専門外だからウイルスのことを良く知らないんだ。しょうがないよなあ。」って思うけど、本当の専門家(ウイルス学や免疫学)と思われている人が間違ったこと言ってると、「この人、大丈夫なのか?」って思う。それは大学などでの地位があればあるほどそう思う。若い研究者なら仕方ないと思っても・・・・。

あと、教科書レベルのことですら、専門家は全部覚えているものでもない。うっかり思い違いもあるし。普段扱っていないウイルスのことは、基本的なことも覚えていないものです。毎年授業しているくせに、授業する時にいつも復習しているし。

毎回、TVでは下調べはできない。生放送だと間違ったこと言っても、カットできない。だからほとんどの専門家はマスコミに出られない。誠実であればあるほど無理と思う。

しかし、それで良いのかとも思う。まったくの専門外の人が明らかに間違ったことを言っていても、誰も止められない。

ほんとうにどうしていいか分からない。だけど、このままではいけない。だからマスコミに進んで出なきゃいけない時があるんだ、と。しかも、それがまじめな番組だけじゃだめなんだ。NHKスペシャルなんてみんなが観るものじゃない。バラエティの方がより広く伝わるのであれば、専門家がでなきゃいけない。

あと、身分の高い人は自分が絶対と思うところがある。一方、普通の善良な専門家はいつも自分も疑っている。そして身分の高い権力者は、自分の間違いに気付いても、保身のために、自分を批判したり、自分とは違う意見を言う人を押さえつける。逆に、身分の低い人は、身分の高い人の意見でおかしいと思っても、声はなかなか上げられない。声を上げるには、研究者をやめる覚悟がいる。自分と家族、そしてラボの学生、部下、秘書を守るか、自分、友人、家族、職場の人々を捨てて、国民を守るか、究極の選択。

以上、同居人の嘆きでした。嘆きをにゃんこが紹介しました。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?