SSTR2023 串本〜千里浜 505km完走
まだ興奮も冷めやらぬまま、SSTR2023の話を書いてみたい。
そもそもSSTRとは、冒険家の風間深志さんが企画したツーリングラリーイベントで、Sunrise Sunset Touring Rally の略称である。今年で11回目の開催となり、ちょっとした歴史あるイベントである。
実は、SR400 Final Editionを購入する前からイベントの存在は知っていた。
心惹かれたのは、日本で唯一、世界的にも珍しい砂浜を走れる道路「千里浜なぎさドライブウェイ」をゴールに設定してあること。
そして、日本列島の東海岸のどこかを日の出と共にスタートして、千里浜の砂浜に日没までにゴールするというシナリオに心が躍った。
本当は、SR400を購入した翌年の2022年(10回目となる記念大会)に参加したかったのだが、3月のツーリング中に単独転倒事故で左鎖骨を骨折したので断念していた。
約一年の準備期間を経て、満を持しての参加というわけだった。
ルートの設定にあたっては、漠然とGoogle mapsを眺めていたときに日本列島を南北に貫くように走るルートを思い付き、本州最南端にほど近い名勝 橋杭岩をスタート地点とした。
あとはナビアプリで条件設定をして検索。導き出されたルートを元に、通過しなければならない道の駅を組み込んで暫定ルートとした。
発走日をSSTR開催期間中の5月24日(水)に設定。和歌山県串本町 橋杭岩辺りの日の出時刻 4:51以降にスタートし、同日の石川県羽咋市 千里浜の日没時刻 19:00までにゴールする。制限時間約14時間。有料高速道路を使わずに走行してギリギリの計算だった。
そして、いよいよ本番を迎えることになる。
前日に自宅を出て、橋杭岩近くのビジネスホテルへ宿泊。時間はたっぷりあったが興奮のためか寝付けず。やや睡眠不足のまま4時前にスタート地点の道の駅 くしもと橋杭岩へ。
缶コーヒーを飲みながら日の出を待った。寒い朝だったが季節柄なのかホットは売ってなかったのでコールドで…
日の出直前は、まさにマジックアワーというべき幻想的な風景で、海の向こうから太陽が姿をみせた瞬間は感極まるものがあった。
04:52 SSTRシステムでスタート登録を済ませて太陽との追いかけっこが始まった。
走行中は、観光要素はまるでなく、まるでアスリートのようにストイックに走行を続けた…
持参したエナジーバーを齧り、お茶をすすり…
しかし、そればかりでは集中力が続かないので、関宿を越えてからは道の駅で積極的に休憩することにした。
前編・後編の2回のレッキで、トラブルさえなければ完走できる自信はあったが、通しで走るのはもちろん今回が初めて。はやる気持ちを抑えつつ、SR400のエンジンの鼓動を満喫しながら走行を続けた。
※走行映像のダイジェストをYouTubeに掲載しています。
和歌山・三重・滋賀・福井と順調に、しかしある意味で単調に走行していたが、石川県に入る頃に眠気に耐え切れなくなり…
RedBullを投入。
この日に向けてカフェイン摂取を控えていたのもあり、一気に覚醒して走行を続けることが出来た。
金沢へ入り、いよいよゴール目前。のと里山海道へ入った。
果てしなく広がる日本海を左手にみながら、これまでの道のりを思い出していた。
と、ミラーに視線を移すと赤と青の回転灯が…
ピッタリと白バイ隊員にマークされていて驚いたが、制限速度を厳守していたため事なきを得た。
白バイ隊員へ手振りで「そちらの存在に気が付いている」と知らせると、追越車線から追い抜いて行った。ご苦労様です…危なかった。
今浜ICを降りて、千里浜なぎさドライブウェイ今浜口へ到達。時刻は18時を少しまわった頃だった。
砂浜を走るのはもちろん初めて。少し走ったところでゴール登録を済ませた。日没まで十分に余裕があったので、徐々に沈みゆく太陽を眺めながら感慨に浸っていた。
頃合いをみて、再びバイクに跨り砂浜を走り出した。
子供の頃にテレビで観たパリダカールラリー。そのラストは砂浜を一斉に走るビクトリーラン。
SSTRは、それをイメージして企画されていると知っていたが、砂浜を走るという特別なシチュエーションに心を揺さぶられるような感動があった。
約8kmと長くはない距離をゆっくり味わうように走ると、彼方に小さくゴールゲートが見えてきた。
最後は、イベントを支援してくださる地元の方々と、関係者の方々の温かい声援を受けながら、ゆっくりとゴールゲートをくぐった。
駐車場へ誘導され、バイクを停めて受付へ向かい参加賞を受け取ってイベントとしてのSSTR2023は終わった。
無事に完走できた安堵感と、やってやったぞという達成感。そして何より全身に重く感じる疲労感…
その後は、山越えして宿泊地の富山県氷見市へ向かった。
予約したビジネスホテルにも参加者がたくさんおり、SSTRの人気を感じることとなった。
チェックイン時間が遅くなったことと、騒がしいのが苦手だったのでホテルの目の前にある普通の居酒屋チェーン店で一人完走の祝杯をあげ、食事を終えて部屋でひと息ついたのち館内の温泉に浸かって疲れを癒し、その後は泥のように眠った…
SSTRに初めて参加して感じたことは、とても人気があり愛されているイベントなんだということ。そして、自分次第で難易度を自由に設定でき、また「最後は日没までに千里浜へゴールする」というルールさえ守れば、旅の目的さえも自由に設定できる点は面白いと感じた。
一方で、僕が今回走ったように「単にゴールを目指す」だけだと真の旅の楽しさは得られないかも知れない。何と言っても時間との闘いで楽しむ余裕がなかったから…
ゴールゲートをくぐったとき、少し呆気なく感じたのは、そうした「旅の演出」が足りなかったからかも知れない。
次回、いつかまた参加するなら、記憶に残る旅にしたいと思う。
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