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人生の夢

人生の夢なんて、最初から持ってなかった。小学校と中学校の卒業文集には「通訳になりたい」なんて書いたけど、これは先生に怒られないようなことを書いただけ。友達は「車関係の仕事に就きたい」と書いて、先生に「具体的な仕事を書きなさい」と叱られてた。何のための卒業文集だったんだろうと今思う。体裁文集。もちろん、夢にあふれた同級生もいたと思うが、思うが、思うが。

今、いい歳になって、やはり人生の夢などない。人生の楽しみなどもない。生への執着だけで生きている。もちろん「アレを買ったから、明日届くのが楽しみ」というのはある。そういう小さな楽しみはある。無ければ心のバランスが崩れていることだろう。癌を患って、抗がん剤の副作用が出てから、大好きだった筋トレも止めて、木から落ちそうな枯れ葉のような心で生活をしている。

もっと大変な人はたくさんいる。進行性筋ジストロフィーの人など、私と同じく首を少しずつ真綿で締められる感覚なんだろう。それでも明るく生きている人もいる。寝たきりで会社を興した人もいる。彼らに比べると弱音を吐けない。そう、比べちゃいけない。でないと自分の心を犠牲にしてしまう。ただ生きていく。この身体を引きずって。

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