#2 コロナ禍、誹謗中傷、全米デモ

2020年 6月 2日(火)

夕食をとりに二階の自室から階下の食卓へ向かうと

「その髪の顔が目に入るとこっちが迷惑やねん」

出会い頭に、家族から身体的特徴への誹謗中傷を浴びた。

と書くと大仰だが、大学授業/システム開発のバイトがオンライン化したことで、知り合いに顔を見せる機会のないのを良いことに整髪を怠っている私を注意してくれたのだろう。(間髪は入れず髪の話題を入れてくる。話題選びと瞬発力はさすがは関西人の姉である。)

我が家では食事の際にニュースを流していることが多い。
メインの目的はもちろん世情を知ることだ(行儀に拘る読者には、咀嚼音を消すという新たなマナー的一面を提案しておこう)。

「自殺と見られてい...

「SNSでの誹謗中傷が原因となったのではないか...

どうせコロナについての"衝撃の"新事実かと思いきや、コロナに直接起因しない、悲しい事件が起こったらしい。
事実関係に詳しくないため敢えて詳細な記述は避けるが、あるリアリティーショーの出演者が亡くなったようで、死因は自殺ではないかと推察されていた。

自殺の善悪を問うのは非常に難しい。定言命法的に悪と決めつけることも出来ないし、自殺の権利を主張されればこれを批判するのも容易ではない。しかし、社会に対しマイナスの側面を強くもたらすものとして認識されるものであり、その社会の一員である私は自殺を擁護する論理も破綻してしまいそうである。
結局、自殺する人間が在る状況が起きなければ問題は無いのである。

では、今回の事件はなぜ自殺が起きるような状況となったのだろうか。

そもそもリアリティーショーの出演者は自殺率が高いものであるが、これはリアリティーショーという番組の性質上、出演者の精神的負担が増えるのは仕方のないなのだろう。したがって、この事件が特別に大きく取り沙汰されている理由は「SNSによる誹謗中傷」と言う話題性があるからであろう。

私はこの番組を見ていないため、番組スタッフの問題点などは指摘出来ないが、視聴者の態度が良くなかったことは間違いない。(そもそも違法である)。
さらには、コロナ禍における自粛期間がもたらした状況も関係していたと考えられる。

渦中の人物は、コロナ禍のなかで番組出演者と言う仕事を辞める決断ができなかったのではないか。視聴者の数やその凶暴性に"自粛要請"によるストレスが関係しているのではないか。
そう考えるとコロナに関係していないと言い切ることもできないだろう。

「全米で黒人によるデモが...

「の弟は、...『...暴動で兄は帰ってこな...

気付くとテレビ画面は次の話題へ移行していた。薄情な気もするがニュース番組というのは、芸能人が専門外の分野のことに頓珍漢な議論を繰り広げるワイドショーよりよほど価値がある。

人種による不当な差別など一刻も早く失くなって欲しいものであり、黒人差別を訴えるデモは定期的にニュースに上がる話題であるが、

このデモの暴徒化にもコロナが及ぼした精神的なストレスが影響しているのではないか

などと考えてしまった。先ほどの自殺と見られる事件で考えていたことが、頭の中で残像のように重なったのだろうか。

日記にしては長くなってきたので、結論を急げば
ある事件はその時の社会/自然の中で起きたものであり、それ自身が社会/環境でもあるのだ
ということである。

これは単なる屁理屈や言葉遊びではない。風が吹けば何屋が儲かるのかなど知ったことではない。
何か事件が起こると

「コレの理由はコレ」「アレはアイツが悪い」

と、一対一で原因(それも悪者)を探し過ぎる傾向のある人が多いように思える。
出来事や身体はもちろん、思考でさえも社会の構造の中の文脈において自由ではない。

ある出来事を考えるとき、
その出来事を囲む自分を含めた自然/社会を対象化し、
耐え難い複雑系に耐えながら、
それでも最善を目指すことを諦めない。

そんな理想の姿勢を思い出させてくれたニュースを記録しておろう。当時あった代表的な事件を記録しておくことも、日記の役割である。

コロナ禍 、誹謗中傷、全米デモ。

高科 䚯一

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