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舞台演技と映像演技の違い【映像の仕事の特徴・注意点も】

こんにちは。
演技講師、アクティングコーチのスギウチです。

よくワークショップで「舞台と映像で演技の仕方って違うんですか?」という質問を受けます。ボクはどちらかというと映像畑出身なので、「舞台と映像での演技の違い」というよりは「映像の演技ではここを注意しましょう」ということを中心に書いてみようと思います。

・舞台と映像での演技の仕方って違うの?
・舞台中心にやってきたけど、今後は映像でも仕事がしたい。
・カメラの前で演技するときって、どんなことに注意すれば?

このようなお悩みや、今後の活動について考えている方におすすめの記事になっています。

簡単なぼくの自己紹介ですが
ボクは元々20代前半から俳優として活動していて、今から約7年前に俳優から演技講師、アクティングコーチに転向しました。現在も講師として活動中です。今までたくさんのプロの俳優、女優さんのコーチングやオーディション、撮影本番の準備のお手伝いをしてきました。

俳優時代は全く演技のセンスがなく、事務所の先輩から満面の笑顔で「タカシは本当に芝居が下手だなぁー」と爽やかに言われるほどでした。その為、たくさんの演技レッスンやワークショップに通って色々なメソッドを学んできて今に至ります。

舞台と映像での演技の違い

◼️基本的には同じ

「舞台と映像で、演技の仕方って違うんですか?」という質問をよく受けます。答えとしては、「違うと言えば違うし、同じと言えば同じ」という返答になります。どういうことでしょうか?

◼️表現の仕方が違う

例えば、舞台(特に大きな劇場など)で相手役にショックなことを言われたときに目線が下にいくリアクションをしても観客にはなかなか届きません。同じシチュエーションをカメラのアップで撮っているときに、顔が下を向いてしまうと表情が見えなくなってしまいます。

このことから同じシチュエーションでも表現の仕方が違うのがわかると思います。ただ重要なのはどちらもキャラクターの心情(ここではショックを受けている)ことには変わりはありません。舞台でも映像でも一番大事なのはキャラクターとして舞台上、カメラの前で生きていることです。

映像の仕事の特徴

ここからは映像の仕事の特徴や演技の仕方について掘り下げてみようと思います。

◼️ロケの場合とにかく朝が早い

とにかく撮影現場の仕事は朝が早いです。特にロケの場合は集合場所(主に渋谷か新宿)からロケバスに乗っていくことが多いんですが、朝の5時〜6時代の集合もザラにあります。朝早い理由としては

・地方にロケに行く場合、都内が渋滞する前に抜け出す
・外ロケだと日没の時間があるので撮りきる為にはとにかく朝イチで時間確保

こんなところでしょうか。映像の仕事をしようと思ったら朝には強くなっておきましょう。

◼️順番通り撮るとは限らない

これも撮影現場あるあるです。ロケ場所や日程、気候など諸事情により、いきなりラストシーンから撮る、なんてこともあります。

ここで重要になってくるのが、俳優はそのシーン毎にキャラクターの人生の時間軸を行ったり来たりしなくちゃいけないということです。これは結構大変です。

慣れもありますが各シーンの前にどのような出来事があったのか、必ず頭に入れた上でカメラの前に立つことが必須になってきます。

◼️事前にリハーサルがないことがほとんど

作品や監督によっては事前に入念なリハーサルを行う現場もありますが、ないことも結構あります。どういうことかと言うと、キャラクターやシーンの設定など万全な準備をした上で現場に臨むことが求められます。ちなみにですが、アクティングコーチの仕事がこの事前の順番のお手伝いです。

◼️現場で監督とじっくりディスカッションする時間はほとんどない

撮影スケジュールはタイトな場合がほとんどです。その中で監督はたくさんのことを決めなければいけない立場の人です。

時間に追われていることがほとんどの中で現場で俳優とキャラクターについてじっくりディスカッションする時間は残念ながらないと思っておいた方がいいと思います。となると、俳優は事前に入念な準備が必要なのですが、その準備が監督のイメージしているものと違った場合瞬時に変更できる瞬発力も必要になってきます。

◼️撮影現場は素材撮り

作品を作るには
撮影に入る前の準備(企画、脚本作り、スタッフィング、キャスティング、ロケハン、衣裳・メイク・美術準備、スケジュール決定、リハーサルなど)があり、そして撮影、その撮影が終わったあとにポスプロと呼ばれる編集、カラコレ、音入れなどが行われます。

撮影現場でテイクを重ねながら、映像、音声などを撮って(録って)いくのは、この編集段階での素材を集めているともいえます。どういうことかというと、いくら現場で良い芝居をしてもそれがカメラに映ってなければ良い素材にはならないということです。

カメラの前で演じるときの注意点

ここからは実際にカメラの前で演じるときの注意点について書いていこうと思います。大事なことは編集段階での良い素材を「被写体」として作る、ということを考えておくといいんじゃないかと思います。

◼️声はマイクまで

舞台出身でまだ映像に慣れていない方で、声を張りすぎてしまう人がたまにいます。「映像の場合、どこまで声を張れば(落とせば)いいんですか?」と聞かれますが、答えはマイクまでです。(相手役と会話をしているなら相手役に聞こえているのは大前提ですよ)

2021年現在、ほぼ全ての撮影現場ではピンマイクが用意されています。ピンマイクは衣裳の襟の裏側やシャツの下にそっと録音部さんが忍ばせてくれます。ということは、キャラクターとして伝えたい相手とピンマイクにキチンと音(セリフ)が聞こえていれば必要以上に声を張る必要はありません。

※基本的にピンマイクを付けたり、外したりするのは録音部さんに任せること。勝手に外したりして壊したら大変なので。

◼️アップのときの瞬きに注意

キャラクターの表情をクローズアップで撮るときに、緊張のせいか瞬きを連発してしまう人がたまにいます。キャラクターが緊張している場面で瞬きを連発しているのなら問題ありませんが、そうでない場面だと俳優が緊張しているのがモロバレになってしまいます。

そこで演出で「瞬きしないで!!」と言われることがよくあります。そのときに普段から瞬きをコントロールできるように訓練していないと、それだけでいっぱいいっぱいになってしまいます。「瞬きは演出だ!」と仰っていた監督もいました。映像の仕事をする上では瞬きをコントロールできる訓練は必須です。

◼️自分の動きを覚えておく

ワンシーンワンカットの長回しでない限り、各シーンはいくつかのカットに分けて撮影し、編集のときに繫いでいきます。ということは編集で繋いだときに前のカットではペットボトルを右手で持っていたのに、次のカットでは左手で持っているとなってしまうとカットが繋がらなくなってしまいます。

スクリプター(記録)という俳優の動きや髪型、モノの位置など細かいところまでカットが繋がるかチェックしてくれる専門の人もいますが、いざスクリプターさんに注意されたときに自分で覚えていないと混乱してしまうので、気をつけましょう。

◼️動きのパターンを試すならカメラ位置が決まる前までに

引き画(ワイドショット)で、映っているキャストの数も多いときなら大丈夫かもしれませんが、基本的には俳優が動く動線に合わせてカメラ位置や照明を決めていきます。(カメラ位置に俳優が合わせる場合もあり)

カメラがセッティングされて照明も決まったあとに、さっきの段取りと全く違う動きをするとカメラのフレームから出てしまったり、顔に照明が当たらなくなってしまいます。人間なので多少の誤差は仕方がないかもしれませんが、一流の俳優さんはこのような制限がある中でも凄い演技をします。

いくつか挙げてみましたが、どれも共通しているのは編集段階のことを頭に入れて演技をすることです。作品は撮影現場で終わりではありません。その後のスタッフさんが仕事のしやすい素材作りをしましょう。

最後に

今回は「舞台」と「映像」の演技の仕方の違いから、映像の仕事での注意点、カメラ前での注意点まで書いてみました。

ボク自身、俳優をやっているときからずっと思っていたことなんですが、映像の俳優の仕事って「芸術家」というよりたくさんの制限がある中で、その枠の中でどう工夫して良い仕事をするかっていう「職人」という方がピッタリ来るんですよね。現場で一流の俳優さんの凄い仕事に感嘆したことが何度もあります。

では
スギウチ タカシ

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