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新文芸坐にて『 #野球どアホウ未亡人 』が上映

監督作『野球どアホウ未亡人』が池袋・新文芸坐にて公開されます。

上映時間は
12月9日(土)20:00〜(上映後舞台挨拶つき)
12月10日(日)17:20〜
12月31日(日)18:10〜

まさか自分の映画が新文芸坐で上映されるなどとは、夢にも思いませんでした。

なんせ初めて訪れた名画座が新文芸坐だったのです。中学2年生の冬、岡本喜八の作品を追っかけていた私は、映画館で喜八映画が観られるらしい、という情報をどこかから得て、ケータイやスマホも持っていなかったので図書館のインターネットや新聞の映画欄(懐かしい……)を頼りに独り新文芸坐に向かったのでした。

「はじめての人のための岡本喜八」という特集で、その最終日に潜り込みました。『近頃なぜかチャールストン』(1981)と『大誘拐 RAINBOW KIDS』(1991)の二本立て。『近頃なぜか〜』の上映後には岡本みね子さん、風間トオルさん、本田博太郎さんのトークショーがあり、本田さんは岡本監督のコスプレというより岡本喜八に成りきって壇上にいたのを思い出します。その後の『大誘拐』の上映後には会場中が拍手喝采したのも鮮明に覚えています。映画館で拍手が起こるなんてそれまで体験してこなかったからです。

この頃から名画座通いが始まりました。
当時、友達はいたものの古い映画の話ができる者はほとんどおらず、名画座へ行くのは孤独な趣味でしたが、同級生とは違う事をしているというどこか優越感に似たものも感じていたと思います。

所沢の田舎に住む高校生には池袋という立地がとても都合が良く(電車一本で行けるので)、通う頻度は少なかったものの、深作欣二の『バトル・ロワイアル 特別篇』(2001)や『県警対組織暴力』(1975)が上映されるというと、普段古い映画に興味の無い友人にも「絶対面白いから!」と誘ったりして布教活動に努めました。

私のオールタイムベストの一本『狂った野獣』(中島貞夫監督、1976)を観たのもこの頃です。

日本大学芸術学部映画学科に入学した後も、「映画学科」ですから、映画を勉強する大学に入ったのですから、当然新文芸坐には通いました。

勝新太郎監督・主演『顔役』(1971)を念願叶って観られたときの興奮。画面に何が映っているのか分からない程の接写、ぶつ切りにされる音楽にクラクラしました。最近DVDになったので見返したら案外普通だったので、あの興奮は新文芸坐の巨大スクリーンで観たからこそのものであったのだと実感しました。

鈴木清順追悼特集で観たテレビ映画『穴の牙』(1979)全編緑色の世界と、ピタゴラスイッチのような負の連鎖。『野球どアホウ未亡人』の撮影中に起こった一連のアクシデントを、私と堀で「これって『穴の牙』みたいだな」と笑ったりしました。

当時付き合っていた彼女と行った香川京子特集で観た成瀬巳喜男監督『おかあさん』(1952)には圧倒されました。そのときは超満員の為、立ち見で鑑賞したのですが、彼女が貧血状態になり二本目はパスすると言ったので、彼女をロビーに置き去りにして一人で『杏っ子』(1958)を観ました。これもイヤ〜な映画だったなぁ。

オールナイト上映というのも、新文芸坐で初めて体験しました。カブ研究会の面々と行った昭和ガメラ四作、押井守の『御先祖様万々歳!』と『天使のたまご』『立喰師列伝』(まんまと寝てしまった)、北野武の初期三作品。北野映画オールナイトのときは、ヤンキー風のあんちゃんとオタク風の先輩の二人が上映が終わるたびにロビーに出てきて、ヤンキーが「たけしってあんなカッコいい映画撮るんすねぇ〜」と興奮しながら話し、それをウンウンと頷きながら聞いているオタクという素晴らしい光景を目の当たりにしました。

DVD化されていない作品や、されても廃盤になったもの、映画館でなかなか上映されなかったりした作品、貴重だったり貴重じゃなかったりする作品などが、スクリーンで観られる場所、それが名画座であり、その楽しさ面白さを教えてくれたのが新文芸坐でした。

新文芸坐で観た様々な作品が『野球どアホウ未亡人』のあちこちに活きています。

そんな『野球どアホウ未亡人』が新文芸坐で上映されます。いつまでも夢気分ではいられません。恐れ慄いています。

『野球どアホウ未亡人』
12月9日(土)20:00〜
12月10日(日)17:20〜
12月31日(日)18:10〜

池袋・新文芸坐にて上映

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