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2021/8/27 空白を泳ぎたい

最近ランチパックのピーナッツを見ると何も考えずに無条件で買っている。どうやら相当好きらしい。知らなかった。

仕事で青森に来た。
本当は青い森鉄道と大湊線を乗り継いで大湊まで行きたかったが、時間的な問題があったのでとりあえず適当に津軽線に飛び乗った。

乗ってから、そういえば『空の向こう約束の場所』(新海誠)の舞台はたしか青森ではなかったっけ、とスマホを取り出す。あの映画はまず、駅のシーンが思い浮かぶ。あれは津軽線の駅ではないかな。

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調べてみるとあのシーン、津軽線蟹田駅がモデルになっているらしい。僕はいま偶然、蟹田行きに乗っている。思いがけない聖地巡礼。

風景を見るために、車掌室後ろのドアに寄りかかっている。ドアの隙間から入り込んでくる草の匂いが、梨を齧ったときの香りに似ている。

死ぬまでに津軽の方に行ってみたい
後ろに過ぎてく雪景色 あの部屋にバイバイ

紫と赤のあいだのベロア生地
シートはだいたいそんな色 ゴワゴワしてた

ミツメが作り上げた音楽のなかでも特に、僕はこの曲に少し狂っている。北をはしる列車に眠たく揺られているあの感覚に、ここまで音を以て近づいている曲は他にない。列車のシートの色と感触について二行分歌ってみせる冒頭の歌詞も、正直どうかしていると思う。

車窓から見える海は近いようで遠い。蓬田を過ぎたあたりで近くなる。かと思えば郷沢でまた、遠くなる。海までの距離が、波みたいに揺れている。

40分ほどで蟹田駅に着いた。青森から乗っていた高校生たちがみんな降りていく。そのうしろにくっついて、僕も降りた。

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蟹田駅を出るとなんか良い感じの路地があったので入る。

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街並。笑っちゃうくらい人がいない。電気屋さんとか刃物店とか、神社とかがちょこちょこある。焼き鳥屋さんがあったので歩きながらパクつくかーと思って入ってみると「焼くのに20分くらいかかるけど」と言われた。どうせ2〜3本しか頼まないから、申し訳ないので「また来ます」と答えた。「また」がいつになるのかは分からない。

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この先は海。

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階段に貝殻がいっぱい落ちてる。かわいい。

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特に行きたいところもないので、一駅分歩くことにした。瀬辺地という無人駅まで4キロくらい。

海岸線をずっと歩いてく。波の音と、たまに通り過ぎる車の音しか聴こえてこない。もうすぐ日が沈む。

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向こうに薄っすらと見えるのは方向的に下北半島だろう。僕がいまいるのは津軽半島。北海道はここからだと見えない。

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国道280号線沿いになんだか素敵な灯りの建物が立っている。
もう19時に近づいてだいぶ暗くなってきた。

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遠くにぽつぽつと散らばっている光をぼんやりと眺めながら歩く。別野加奈の声が波の音に混ざって心地よく響いている。

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瀬辺地駅に着いた。虫が鳴いている。
もちろん誰もいないし、待合室は真っ暗。公衆電話が愛らしい。
コオロギが体に張り付いていたので「うわー!」と言いながら慌てて振り払った。

ほどなくしてやってきた青森行きの電車に乗ると、ほとんど誰も乗っていない。線路沿いには街灯などないので車窓からの風景は闇だった。

青森に戻って仕事の仲間とご飯を食べた。その後、酔い醒ましに同僚と「青い海公園」まで歩く。芝生があったので二人して寝っ転がる。

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明日は朝から作業して、仙台に帰る。
濃紺の空。草の匂い。

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