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【建築】「排煙上の無窓」と「排煙設備」は別物と考えて。

(2582文字)【2024年1月31日更新】

こんにちは、たかしです。

今回は私がこの仕事を入った時から苦労している「排煙」についてのお話です。

排煙については、相談や審査中の確認では、こんなことがあります。
「鉄骨だから排煙窓はとりませんでした」
「勾配天井なので平均天井高さで検討しました」
「天井が高かったので2.1m以上の部分を有効としました」
「防煙垂れ壁をつけたので、そこまでの範囲で排煙の検討をしました」

ほんと、色々あります。

先に結論から先にいうと

これら4つはすべて「排煙設備」の告示適用です。

排煙については、2つの法文

があります。

窓その他の開口部を有しない居室等(通称:排煙無窓)
 建築基準法施行令第116条の2

②排煙設備
 建築基準法施行令第126条の2

 この2つです。そしてほとんどの場合が②を想定した計画でくるのですが、実際は➊で良かったという場合もあります。(今は、さーっと流してもらっていいです。あとで詳しく説明しますので)

 混乱を生じないようにように今回は➊についてのみお話します。
 ➊をしっかり理解しておけば、それ以外は②で対応すればよいということになります。

それでは。

➊窓その他の開口部を有しない居室等
 令第116条の2

この条文は法第35条避難規定からかかってきます。詳しくは前回の記事を参考にしてください。

 そこに出てくる「窓その他の開口部を有しない居室」から物語ははじまります。

ここで分かるのは、居室には開口部(窓など)がないといけない、ということです。

とはいっても、どんな開口部でもいいのか?ってことになりますので、ここでしっかり決めております。

令第116条の2第1項第二号
 開放できる部分(天井又は天井から下方80センチメートル以内の距離にある部分に限る。)の面積の合計が、当該居室の床面積の50分の1以上のもの
(第1項第一号は採光についてですので今回は省略します)

 とあります。

たとえば

「木造2階建て200㎡の事務所」の場合

 で考えてみます。
法第35条では(上記リンクを貼っております「前回の記事」より)
・「1⃣別表第1(い)欄(1)項から(4)項までに掲げる特殊建築物」
 →ではない。
・「3⃣階数3以上の建築物」
 →ではない。
・「4⃣1000㎡超の建築物」
 →ではない。
・「2⃣窓その他の開口部を有しない居室」
 →かどうかを検討。
 各居室の床面積がすべて「1/50以上」の有効開口があれば、1⃣~4⃣のすべてに該当しないことになるので、避難規定はかかってこないことになります。

次に

「店舗」の場合

について。
法第35条では、
・「1⃣別表第1(い)欄(1)項から(4)項までに掲げる用途に供する特殊建築物」
 に該当するので、「この節(第2節:令第118条~令第126条)の規定を適用(令第117条)」する必要があります。

 なので、1⃣~4⃣の「用途」「階数」「規模」が重要になってきます。

排煙無窓の基準(令116条の2)

では、次に基準についてです。

 これは、「天井又は天井から下方80センチメートル以内の距離にある部分に限る」しかありません。たったこれだけです。

つまり、最初に記載した
・鉄骨だから
・平均天井高さ
・2.1m以上の部分を有効
・防煙垂れ壁
どれもそんなことは書いてありません。

 ということで、実はこれらすべて➊排煙無窓とは無関係だったのです^^;

じゃ計算方法は?

条件にあるのは
・天井から下方80センチメートル以内(令116条の2第1項二号)
・ふすま、障子など随時開放することができるもので仕切られた2室は1室とみなす(令116条の2第2項)

このふたつだけ。

 「勾配天井」や「一体的な空間で天井高さが違う場合」も、このふたつだけで考えるので、各部分の天井から80cm以内の部分で開口部の検討を行います。
どんなに高くても、どんなに天井の高さが違ってもです。あくまで天井から80cm以内の部分で検討します。

 たまに、「壁や扉で仕切られているけど、天井から50cmは開放しているので、ここをひとつの空間として排煙上の開口部としたい」という相談もありますが、これもそんなことは書いておりませんので、使えないことになります。

 「開放」についての定義は審査機関によって違うかもしれませんが、人が通れる程度(75cm)は開ける必要があると考えております。

 ドアで考えるなら、2室1室の引き戸で対応。(開き戸でもいいということは過去にあまり事例がありませんので、難しいと思った方がいいです)

 えー! じゃあ1/50の排煙上の開口部が取れなかったらそーすんのさー!

って思いますよね。

そう! そんな時こそ、

「➋排煙設備(建築基準法施行令第126条の2)」

を使うんだ!

 排煙上の開口部がどーしても取れないと時こそ、そんな時こそ、排煙設備の告示を使うんだ!

 主要構造部が鉄骨(不燃材料)だったら、壁と天井の室内側の仕上を不燃材料にするんだ!

 天井高さが3m以上あるのなら、2.1m以上で、天井の高さの1/2以上の部分を使うんだ!

 勾配天井だったら、平均天井高さを算定するんだ!

 吹抜を設けたいけど、吹抜部分まで含めると排煙が取れないので、防煙垂れ壁を設けて別に区画するんだ!

2つの条文は、そういう住み分けなんだ!

 だから、まずは➊排煙無窓で検討して、それが無理なら➋排煙設備の検討をするようにしてみてください。上手に使い分けすることができれば、いいとこ取りができるようになる! と、思う(^^;

 ➋排煙設備の場合は、手動開放装置もちゃんとつけてねー。

 私の説明でどこまで伝えることができたか疑問ですが、少しでも役に立つことができれば幸いです。

今回から有料記事設定を使ってみました。全部読むことができますけどね(^^;

最後まで読んでくれてありがとう!

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