20240321_ポーカーと法律
アミューズメントポーカー施設では、国内大型トーナーメントの出場権の獲得を争う「サテライトトーナメント」や、その施設内でのコインを賭けて擬似的にギャンブルを行う「リングゲーム」が開催されている。中には、ディズニーランドチケットや加盟店で使えるPokerweb Coinを争うトーナメントなどもある。そのゲーム性の深さゆえに、シンプルなれど飽きることがなく、遊びとして非常に良くできているものであるが、ただそのギャンブル性ゆえに、中には大金を溶かしていく某オールイン〇〇さんのような方も存在する世界である。
私個人としては、各々の責任によって遊びをしているだけであり、ある程度の節度を持った施設運営は肯定されるべきであると考えているので、巷で実質的に許されている賭け麻雀やパチンコ・競馬などのような合法ギャンブルと同じように、法に抵触するものではないという世界線であってほしいと考えているが、実際問題ちゃんと考えた時に法律上の実態はどうなのか気になったのでまとめてみた。
なお、同じようなことを考えた人たちのツイートや記事を下記にまとめているので、参照されたい。
1.法律上の建て付け
1-1.刑法
刑法上、賭博等の規定は第185条〜187条に規定されているが、いわゆる賭博罪では、50万円以下の罰金又は科料が科せられる。また、常習賭博罪では、3年以下の懲役が科され、賭博場開帳図利罪では、3ヶ月以上5年以下の懲役となる。
昨年の令和5年6月8日に大阪府南警察署が配布した資料を踏まえると、以下の場合には賭博罪等に該当し得る。
1-2. 風営法
風営法(風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律)は、1948年から「風俗営業に関する営業時間、営業区域等を制限し、年少者(18歳未満)の立ち入りを規制することにより、風俗業務の適正化を図ることを目的」として制定された法律である。
法律上、風俗営業の区分が以下の通り定められており、アミューズメントカジノはゲームセンターと同様の扱いを受け、風営法の5号区分となる。
なお、「4号」と「5号」の違いは、「4号」が「設備を設けて客に射幸心をそそる恐れのある遊技をさせる営業(遊技方法自体が射幸心をそそる恐れがあるもの)」、「5号」は 「遊技設備で本来の用途以外の用途として射幸心をそそる恐れのある遊技に用いることができるもの」とされている。
したがって、開業時には風俗営業5号での許可の取得が必要となる(加えて、多くの店でお酒を始めた飲食の提供が行われているが、この場合には、保健所において飲食店営業許可を取得する必要がある)。この5号営業の風俗営業許可書は店の見える位置に飾る必要があるため、仮に掲示がなかった場合には、違法性が高い店である。
次に、風営法の規制上、アミューズメントカジノはゲームセンタと同様の扱いとなるため、ポーカーを使った遊戯の提供は24時までとされている(一部地域では25時まで)。
仮に24時を超えて営業を行う場合には、特定遊興飲食店として営業をする必要があり、これにも許可が必要となる。したがって、5号営業及び特定遊戯飲食店として許可を2つ取得することとなるが、実際に深夜0時以降もアミューズメントカジノを営業するということは、法律の建付け上、達成はできな
いこととなっている。これは、特定遊戯飲食店が、遊戯設備を使用させないことを前提としているためである。当該遊戯施設は、「客に使用させないための措置を講じる必要がある」とされているため、24時以降も特定遊興飲食店として営業する場合には、客が遊技機を使えなくする必要が生じるのだ。
なお、特定遊興飲食店営業許可を取得しているナイトクラブが遊戯設備を設置している場合、「遊戯設備の面積の3倍」が客室面積の10%以内であれば、営業に与える影響は少ないものとして0時以降も客が遊戯設備を使用することが可能となる。
次に、賞金等の提供についてであるが、風営法上、5業許可のアミューズメントポーカー施設では、「遊技の結果に応じて賞品を提供してはならない」というルールがある。例えば、ポーカーで得たチップを賞品やドリンクチケット・割引券に交換するといった行為は規定に抵触する。また、海外渡航費や参加費といったサポート名目でのケースも同様となる。この規定に違反した場合には、6カ月以下の懲役又は100万以下の罰金(併科あり)となる。
例えば、店内のチップとアルコールドリンクの交換や、チップと次回ゲーム代金割引券の交換、トーナメントでの有償によるハワイ旅行など、これらも賞品提供禁止違反に該当する。
2.大型トーナメントの取り扱い
上記の内容を引用して説明する。
JOPTなどの大型トーナメントは、必ず会場を閉鎖する時間帯を設けることによって、「営業」にはならないことから、風営法の適用外という取り扱いになっている。したがって、スポンサード契約などは問題ない取り扱いとされている。なお、刑法などの適用は引き続きあることは留意されたい。
3.パチンコの合法性;3店方式について
競馬や宝くじなどは事実上、それぞれの法律で合法化されており、パチンコは三店方式の元取り締まりがされないこととなっているが、このような国家的な脱法スキームをポーカーでも用いることができるのかというと、それはNoである。あくまで、パチンコ店・景品交換所・景品問屋の3つの業者、およびパチンコ遊技者が特殊景品を経由することで、違法性を問われない形でパチンコ玉の現金化しているが、これは風営法上、アミューズメントポーカーとパチンコ店でそれぞれ4号営業と5号営業と、区分が異なることから、アミューズメントポーカー施設で活用することは難しい。
3.現状の実態
1:22:46〜1:31:10
昨年の国会答弁でも話題にあがったが、民間の調査の結果、122店舗のうち、120店舗(98%)で風営法に違反した営業が認められたとのことである。
大半がポイントの付与やサテライトトーナメント開催に係る賞品提供禁止違反のようであり、一部換金性のあるコインや物品の供与、営業時間制限の違反などであった。
上記のような状況にあることを明確に理解すると、店舗選びも慎重にならざるを得ない気がしてくるのがユーザー目線である。
ポーカー自体を遊戯として、健全に楽しみたいということがまず第一にあるので、中谷議員のご指摘の通り、現状のグレーな状況が健全となって、100%安心して遊べる環境に1日でも早くなってほしい限りである。
4.大阪IRの開業を踏まえた展望
大阪IRが2030年秋頃の開業を目指して現在準備中とのことであるが、この開業に伴う法改正や将来的な展望を描きたい。
IRでは、カジノ行為は9種21分類のテーブルゲームおよび電子ゲーム機等に限定されており、ポーカーは8分類が認められ、うち2分類は顧客相互間で行われるもの、1分類は顧客相互間で行われるトーナメントとして規定されている。
また、入場規制については、20歳以上であり、暴力団員、入場料未納付者、入場等回数制限対象者でない場合には、問題なく入れそうであり、韓国やマカオのように、自国籍の入場を制限しているわけではない。
ただ、入場回数は1ヶ月に10回、1週間に3回までであり、入場料は1回6,000円賦課されることから、お金稼ぎにはならず、あくまでエンタメ目的の施設にはなりそうである。
以上のような形で、国内で合法的にポーカーを楽しめるようになるようであるが、アミューズメントポーカーでの法律規制に変更があるかというと、おIR法案は、あくまでリゾート地で自治体によって運営される公営カジノ事業が合法化されるという話であって、競馬や競輪や宝くじなどと同じものの扱いである。
もちろん、IRの動きに合わせたムーブメントによって、刑法等が改正される可能性はあるものの、逆に言えば、国内のアミューズメントポーカーの取り締まりが厳しくなる可能性もある。
純粋に楽しみたい人は、自己防衛をしっかりとした上で、健全に遊べる手段を確立していくことが求められるような気がしていて、皆がやっているからということで、安易に何でもかんでもして良いわけではないのだなというのが、法律の立て付けを見ているとわかってくるものだ。
今度は、税務関連のことについてまとめてみたいと思う。
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