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トレーナー「さあライス、真実の天皇賞春のイラストを見せてくれ!」


【あらすじ】
 天皇賞春当日。
 トレーナーはスーパークリークからイラストを見せられる。
 しかし、トレーナーノートによれば、クリークはお絵描きを苦手としているはずなのだ。
 どうして、こうなってしまったのだろうか…。

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     ◆

トレーナー
(くっ……俺の心の支えであったトレーナーノートにガセネタがあったとは……)

トレーナー
(……ちょっと、ほかのウマ娘の項目を見直してみるか……)

トレーナー
(……おっ! これは!)

     ◆

  (トレセン学園校庭にて)

ライスシャワー
「ふふふーん♪」

トレーナー
「ライス! 君が真実だったんだ!」

ライスシャワー
「ひぃぃっ! ……って、お兄さま?」

トレーナー
「さあライス! 真実の天皇賞春のイラストを見せてくれ!」

ライスシャワー
「な、なにを言っているのお兄さま」

トレーナー
「かくしてもムダだぜライス! トレーナーノートにはこう書かれてるじゃないか!」

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ライスシャワー
「ライスの得意なものが……お絵描き?」

トレーナー
「そして、天皇賞春のヒーローといえば……ライス、君しかいないっ!」

ライスシャワー
「お兄さま落ち着いて!
 ライスには何を言ってるかわからないの」

トレーナー
「フフフ……そう言いながら、背中にかくしたものはなんだ?
 イラストっぽく見えるんだけどな」

ライスシャワー
「こ、これは……絵本だけど」

トレーナー
「……なーんだ、絵本を読んでただけなのか。ガッカリだぜ」

ライスシャワー
「……お兄さま、なぜ失望しているの?」

トレーナー
「いや、今からでも遅くない!
 天皇賞春をテーマにイラストを描くんだライス!」

ライスシャワー
「ど、どうして?」

トレーナー
「だって、ライスは絵を描くのが得意なんだろ?」

ライスシャワー
「……ううん」

トレーナー
「なっ! これもガセネタなのか?」

ライスシャワー
「だってお兄さま。
 私が絵を描いているところを見たことがある?」

トレーナー
「くっ……言われてみれば!
 ライスが絵を描くシーンは、俺が思いつくかぎり……ひとつもないっ!」

ライスシャワー
「絵本を読むのは好きだし……いつか自分でも描けたらいいな、と思うけど……」

トレーナー
「じゃあ、今から描こうじゃないか!
 クリークよりも立派な天皇賞春のイラストを!
 ライス、君なら描けるはずなんだ!」

ライスシャワー
「……ライスが天皇賞春のイラストを?」

トレーナー
「例えば、トウカイテイオーVSメジロマックイーンのTM対決だ!
 その翌年に、ライスはマックイーンに勝つんだからな。
 ライスがあの二人に追いつき追いこせって感じで描けば、ファンは感涙するぞ!」

ライスシャワー
「……それよりライスは、二回目に勝った天皇賞春を描きたい」

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トレーナー
「そ、そうか?
 あのレース、ウマ娘化された競走馬が他に出てないんだけど……」

ライスシャワー
「でも、あのとき……みんなが祝福してくれた。
 私はとてもうれしかった。
 もし、私が絵を描けるなら、その感動をイラストにしたいの」

トレーナー
「そうだなあ。
 あの年は阪神・淡路大震災があって、社会は暗い影に覆われていたんだ。
 だから、ライスの二年ぶりの復活勝利に、人々は大いに盛り上がったと聞く。
 まるで震災復興の象徴のように、ライスの復活劇は持ち上げられたんだな」

ライスシャワー
「うん……こんなライスでも、あのとき、しあわせの青いバラになれたの」

トレーナー
「その人気のおかげで、宝塚記念の事前投票では見事1位!
 10万人以上の人がライス、君に投票したんだ!」

ライスシャワー
「……うん」

トレーナー
「しかも、地震の影響で、そのときの宝塚記念は京都レース場での代替開催!
 過去三度、京都レース場でGIを勝ったライスには、好材料だった!」

ライスシャワー
「う、うぅ……」

トレーナー
「さらに、前年の三冠バであり、現役最強といわれたナリタブライアンは、宝塚記念も欠場!
 まさに、ライスが主役になる舞台は整った! そしてライスは……」

ライスシャワー
「あ、あぁぁぁあぁあああ~!!!」

トレーナー
「し、しまった! 俺はとてつもない地雷を踏んでしまった!」

ライスシャワー
「ごめんなさい!!
 10万人以上のひとの期待にこたえられなくてごめんなさい!!」

トレーナー
「し、心配するなライス。
 ゲームでは、あの宝塚記念に俺は100回ぐらい勝ってるぞ!」

ライスシャワー
「でも……でも! うわああああああ~ん!!」

      ◆

トレーナー
(……結局、あのあとライスをなだめるのに大変だった)

トレーナー
(……これも、トレーナーノートがガセネタを載せていたからだ)

トレーナー
(……そう! 俺は被害者なんだ!
 被害者であるからには……謝罪を要求しなければならないっ!)

トレーナー
(そのためにはもう一度、クリークに会って確かめないと……)

トレーナー
「おいクリーク」

スーパークリーク
「どうしたんですかトレーナーさん」

トレーナー
「クリークは本当にお絵描きが苦手なのか?」

スーパークリーク
「そんなことありませんけど……」

トレーナー
「じゃあ、トレーナーノートに『苦手なものはお絵描き』と記されているのは、なぜなんだ?」

スーパークリーク
「……もしかして、あのときのインタビューが原因なのかも」

トレーナー
「あのときの、インタビュー?」

      ◆

???
『そういえば、クリークさん!
 とても上手な絵を描くそうですね!』

スーパークリーク
『そ、そんなこと……私なんて、まだまだです』

???
『なるほどなるほど!
 絵を描くのは、むしろ苦手だと!』

スーパークリーク
『そ、そこまでは言ってませんけど……』

???
『では、ほかに得意なことはありますか?』

スーパークリーク
『そうですね…。
 他人の世話を焼いたり、とか?』

???
『おお、それでは、得意なことは【お世話】だと!
 ありがとうございました! では、次の子に……バクシーンッ!』

スーパークリーク
『あの……バクシンオーさん……別に絵を描くのは苦手なわけでは……』

    ◆

トレーナー
「サクラバクシンオーが諸悪の根源じゃねえか!」

スーパークリーク
「私が訂正する間もなく、どこかに行っちゃったんですよね…」

トレーナー
「もしかすると、他の子もそんなインタビューだったのかな?」

スーパークリーク
「……おそらく」

トレーナー
「なるほど、ライスが『絵を描くことが得意』とされたのも納得だ。
 絵本が好きだといったライスの答えを、バクシンオーがバクシン的に早合点したと」

スーパークリーク
「そういえば、バクシンオーさん、新しい子にインタビューをすると、張りきっていたような……」

トレーナー
「いかん! このままでは、さらなる犠牲者が増えてしまう!
 バクシンオーを止めないと!」

     ◆

サクラバクシンオー
「バクシーン! あなたの頼れる優等生!
 学級委員長のサクラバクシンオーです!」

ゼンノロブロイ
「……よろしくお願いします」

ヤエノムテキ
「押忍ッ!」

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サクラバクシンオー
「では、さっそく、お二方にインタビューします!」

ゼンノロブロイ
「……どんな質問なんでしょうか?」

ヤエノムテキ
「押忍ッ!」

サクラバクシンオー
「まずゼンノロブロイさん!
 ……その、ゼンノロ・ブロイとはどういう意味なのでしょうか?」

ゼンノロブロイ
「ち、ちがいます。
 これは、ゼンノ・ロブロイでして……」

サクラバクシンオー
「なんと! ブロイさんではないのですか!」

ゼンノロブロイ
「このロブロイっていうのは、とある英雄のあだ名で、本名はロバート・ロイ・マグレガーと言いまして……」

サクラバクシンオー
「次にヤエノムテキさん!」

ヤエノムテキ
「押忍ッ!」

ゼンノロブロイ
「ちょ、ちょっと、まだ話の途中……」

サクラバクシンオー
「あなたは、いかにも祭りが好きそうですね!」

ヤエノムテキ
「……祭り? 祭りだけに囚われてはならぬ!」

サクラバクシンオー
「へえ、そうなんですね!」

ヤエノムテキ
「体練は武の道のみならず全ての道に通ず!
 駆走、舞踏、歌唱、加えて礼節……
 ものみな体練なくして優なき也!」

サクラバクシンオー
「ちょっと何を言ってるのかよくわかりませんね!
 まあ、たぶん、お祭り好きなんでしょう!
 で、ブロイさん!」

ゼンノロブロイ
「あ、また私に戻ってくるんだ。というより……」

サクラバクシンオー
「ブロイさんの得意なものはなんでしょうか?」

ゼンノロブロイ
「だ、だから……ゼンノ・ロブロイなんです私」

サクラバクシンオー
「おっと失礼! ロブロイさんでしたか!」

ゼンノロブロイ
「それより、この名前の由来となったロブロイというのは、スコットランドの英雄でして、本名は……」

サクラバクシンオー
「ふむふむ、ロブロイさんは歴史が得意そうですね!
 よし、これで今日のバクシン的インタビューは終了です! バクシーン!」

ゼンノロブロイ
「……だから、話を最後まで聞いて」

ヤエノムテキ
「押忍ッ!」

     ◆

ゼンノロブロイ
「……というふうに、訂正する間もなく、風のように去っていってしまったんです」

トレーナー
「さすが、短距離王だな。
 ……そういえば、バクシンオーの苦手なものって何なんだろう?」

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ゼンノロブロイ
「……苦手なものは……『手順がたくさん(3つ以上)あること』ですか……ははは」

トレーナー
「なるほど。だから、質問は二人の『得意なこと』しかできなかったんだな」

ゼンノロブロイ
「……それすらも早とちりしてましたけど……あの人……」

トレーナー
「まあ、耳のことで『人の話は半分くらいしか聞こえていない』と書いてるし…。
 このあたりは、まがうことなき事実だな」

ゼンノロブロイ
「でも、このままでは、私の項目が、とんでもないことになってそうですよ」

トレーナー
「いや、育成ウマ娘でゼンノロブロイが追加されるのは、まだ先のことだし……」

ゼンノロブロイ
「そんなことありませんよ!
 見てくださいよ、このメガネと髪型!
 絶対に需要がありますって!」

トレーナー
「……あざといことを自分から言うなよ」

ゼンノロブロイ
「だいたいですね、こういうものは本人が答えたのを忘れたころに追加されるものです」

トレーナー
「……たしかにな。SNSでも数年以上前の発言が発掘されて、炎上することは良くあるし」

ゼンノロブロイ
「だから、このままでは、新たな被害者が増える一方だと思うんです」

トレーナー
「とはいっても、あのバクシンオーを止めるのは難しいぞ」

ゼンノロブロイ
「そこで、ですね……ごにょごにょ」

トレーナー
「……いや、彼女がそんな願いを聞いてくれるとは……」

ゼンノロブロイ
「いや、この項目を見てくださいよ。そして、あの人のことを考えると……」

トレーナー
「おお、言われてみれば!
 うん、彼女に話してみるよ」

ゼンノロブロイ
「はい、よろしくお願いします」

     ◆

サクラバクシンオー
「バクシーン!!
 これで……次に誰がトレーナーの担当になっても、ノートをきちんと用意できるはず!」

???
「ほう……ずいぶんと好き勝手に書いているみたいだな」

サクラバクシンオー
「そんなことありませんよ!
 私は学級委員長として、きちんとバクシン的インタビューを……げぇ!!」

???
「たしかに、生徒会としては、お前にトレーナーノート作成の協力を申し入れたが……
 そのやり方に問題があるのだ」

サクラバクシンオー
「い、異議ありですっ!
 私はそれはもう、生徒一人ひとりの声に、きちんと耳を傾けてるんですよ、エアグルーヴ副会長さん!」

エアグルーヴ
「しかし、お前のインタビューを受けた者から苦情が生徒会に寄せられてるのだ」

サクラバクシンオー
「そ、そんな……。
 私はきちんと公平にしているつもりですのに!」

エアグルーヴ
「とにかく、この件は生徒会で精査させてもらう。
 それまではインタビューを控えること。
 異論はないな? 学級委員長?」

サクラバクシンオー
「……は、はい」

     ◆

エアグルーヴ
「……これでいいんだな」

トレーナー
「ああ、きちんと生徒会でチェックしてくれないと困るぞ」

エアグルーヴ
「このままでは、私のキャラが被るという事件が発生するところだったし……」

トレーナー
「それにしても、エアグルーヴの得意なことが、『花を育てること』とはな……ププッ」

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エアグルーヴ
「……何がおかしい?」

トレーナー
「い、いや、べつに」

エアグルーヴ
「むろん、私はこの特技を誇りに思っているし、隠すつもりもない」

トレーナー
「でも、もし、彼女のプロフィールが追加されたら……」

エアグルーヴ
「ああ、ニシノフラワーだな」

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トレーナー
「このまま、バクシンオーに任せていたら、まちがいなく……」

エアグルーヴ
「ああ、ニシノフラワーの得意なことも『花を育てること』になりそうだ。
 サクラバクシンオーは深く考えることはできないからな」

トレーナー
「ああ、ついでに、今後はトレーナーノートにガセネタを載せないようにしてもらいたいぜ」

エアグルーヴ
「その点は、生徒会に任せてくれ。
 さすがに運営も、今回の騒動で公式設定には、より慎重になるだろうし」

トレーナー
「……運営?」

エアグルーヴ
「いや、ひとりごとだ。忘れてくれ」

トレーナー
「そうだな! 二次創作をするファンのためにも、ぜひとも、公式設定は丁寧に作ってもらいたいものだぜ!
 今後は、あんな設定と矛盾する公式絵を載せて、ファンを混乱させないでくれよ運営!」

エアグルーヴ
「……貴様、メタネタをするなら、最初からそうしろ!
 このたわけがっ!」

      【終わり】

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 今回のネタは、林檎(@Apple_of_Chiho)さんのTweetをもとにしました。

 前回に僕が考えたネタより面白かったので、そのアイディアを借用してSSにしようとしたのですが……オチをつけるために長くなっちゃいましたね。

 僕の知る限りでは、ライスシャワーが絵を描いているシーンは記憶にないのですが……もし、描いてたらごめんなさい。

 ゼンノロブロイについては、サポートSRを入手していないので、口調は適当です。間違ってたら許してください。
(ヤエノムテキは運良くゲットできましたが、使う機会がないんですよね。パワーは優秀キャラ多いですから)

 とりあえず、僕がトレーナーを出すと、どうしても失礼野郎になっちゃいますね。このあたりは二次創作ってことで、ご容赦を。

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