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『銀の匙』の泉を求めて -中勘助先生の評伝のための基礎作業 (21) 学界の決死隊

 医科大学志望の第三部の学生たちが、福岡医科大学への進学を余儀なくされることを「死刑宣告」と言い合う風潮を目の当たりにして、ドイツ語の丸山通一(まるやまつういち)先生が大いに憤慨し、授業時間中にこんな演説を行いました。

《君らと同じ年配の青年たちは旅順や金州で勇ましく戦い、死んでいる。彼等が自分の生命を賭してお国のために戦うのと同じく、君たちは学問の世界でお国に奉公しなければならない。それがこの非常時に国家の金を使って高校や大学で安穏に勉強させてもらっている諸君の義務である。》

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1,967字
中勘助先生は『銀の匙』の作者として知られる詩人です。「銀の匙」に描かれた幼少時から昭和17年にいたるまでの生涯を克明に描きます。

●中勘助先生の評伝に寄せる 『銀の匙』で知られる中勘助先生の人生と文学は数学における岡潔先生の姿ととてもよく似ています。評伝の執筆が望まれ…

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