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『銀の匙』の泉を求めて -中勘助先生の評伝のための基礎作業 (136) 赤城山を思う

 大正15年5月1日、中先生は戸を閉めてから茶の間の柱によりかかり、「きよろきー きよろきよろきー」と言いながら古い思い出にふけりました。この日の朝、タゴをつれて松の中を歩いているときに聞いた赤腹つぐみの鳴き声でした。赤腹つぐみは小石川水道町の高台にあった家の庭にもきましたし、谷中の真如院でも苔をめくっては餌をあさっていました。
 次に引くのは手賀沼のほとりの歌です。

 春なれどあかはらつぐみきて鳴けば葛飾野べはいとどさびしき

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1,157字
中勘助先生は『銀の匙』の作者として知られる詩人です。「銀の匙」に描かれた幼少時から昭和17年にいたるまでの生涯を克明に描きます。

●中勘助先生の評伝に寄せる 『銀の匙』で知られる中勘助先生の人生と文学は数学における岡潔先生の姿ととてもよく似ています。評伝の執筆が望まれ…

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