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『銀の匙』の泉を求めて -中勘助先生の評伝のための基礎作業 (143) 平塚から東京へ

『しづかな流』の時代は昭和7年までで終りました。岩波書店の雑誌『思想』に「しづかな流」という表題で書き継いできた作品は単行本の形になり、昭和7年6月25日付で第一刷が刊行されました。これに先立って4月15日付の中先生の岩波茂雄宛の手紙を見ると、「しづかな流出版の件早速御承諾下すつて有り難う」と、単行本の出版の話がまとまったことが報告されています。この合意を受けて、「では僕のはうも早速原稿の整理にとりかかる」と中先生。8月13日には印税受領の礼状を岩波宛に書き送っています。第一刷、800部。印税は308円です。この礼状は平塚で書きましたが、

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中勘助先生は『銀の匙』の作者として知られる詩人です。「銀の匙」に描かれた幼少時から昭和17年にいたるまでの生涯を克明に描きます。

●中勘助先生の評伝に寄せる 『銀の匙』で知られる中勘助先生の人生と文学は数学における岡潔先生の姿ととてもよく似ています。評伝の執筆が望まれ…

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