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『銀の匙』の泉を求めて -中勘助先生の評伝のための基礎作業 (33) 反響の数々

 藤村さんの死をめぐって、安倍さんの自伝『我が生ひ立ち』からもう少し引いてみたいと思います。5月23日に那珂先生が急遽日光に向ったことは既述のとおりですが、安倍さんによると同行者は高頭正太郎のほかに同じく藤村さんの従兄の渡辺襄(のぼる)、それに一高のクラスメートの藤原正と北島霞江(よしえ)とのことです。二人の従兄はどのような人物なのか、よくわかりません。藤原正と北島霞江は藤村さんのもっとも親しい友でした。藤原さんは山形県上ノ山の時宗の寺の子で、山形中学出身。中学では阿部次郎と同級でした。北島さんは津山の人ですが、出身中学はわかりません。

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中勘助先生は『銀の匙』の作者として知られる詩人です。「銀の匙」に描かれた幼少時から昭和17年にいたるまでの生涯を克明に描きます。

●中勘助先生の評伝に寄せる 『銀の匙』で知られる中勘助先生の人生と文学は数学における岡潔先生の姿ととてもよく似ています。評伝の執筆が望まれ…

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