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『銀の匙』の泉を求めて -中勘助先生の評伝のための基礎作業 (131) 中島さんの話(二)

 中島さんの語る平塚の中先生の話を続けます。中先生は雨が降らなければ必ず朝の散歩に出ました。雨の日は家の三軒ばかりの中廊下を無言のまま往復しました。往復しながら考え事をしているのですから、用事のあるときのほかは話しかけたりしませんでした。あまり見栄えのよくない犬がいて、粗末な犬だからタゴサクと名をつけようと言って可愛がっていました。タゴサクを縮めてタゴになりました。粗末な犬でしたがよく言うことをきくので、中先生は、自分がスパルタ式訓練をしたからだと言ってご自慢でした。中島さんのことは溺愛者だと笑っていました。タゴの散歩はお昼すぎです。

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1,265字
中勘助先生は『銀の匙』の作者として知られる詩人です。「銀の匙」に描かれた幼少時から昭和17年にいたるまでの生涯を克明に描きます。

●中勘助先生の評伝に寄せる 『銀の匙』で知られる中勘助先生の人生と文学は数学における岡潔先生の姿ととてもよく似ています。評伝の執筆が望まれ…

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