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『銀の匙』の泉を求めて -中勘助先生の評伝のための基礎作業 (130) 中島まんさんの話(一)

 中先生の兄と末子さんは大正11年の夏、野尻湖畔に向い、池田萬作さんのお宅に滞在しましたが、翌大正12年の夏もまた野尻湖に向い、再び池田家に滞在しています。大正12年は我孫子滞在の最後の年ですが、9月13日付の和辻さん宛の手紙(葉書)に、「兄、姉は信州へ旅行中」と記されています。中先生は留守番のため我孫子から東京に移り、赤坂表町の家に滞在中でした。9月1日に関東大震災が発生し、和辻先生から和辻家の無事の知らせとともに中家の安否をたずねる手紙が届きました。

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中勘助先生は『銀の匙』の作者として知られる詩人です。「銀の匙」に描かれた幼少時から昭和17年にいたるまでの生涯を克明に描きます。

●中勘助先生の評伝に寄せる 『銀の匙』で知られる中勘助先生の人生と文学は数学における岡潔先生の姿ととてもよく似ています。評伝の執筆が望まれ…

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