『銀の匙』の泉を求めて -中勘助先生の評伝のための基礎作業 (17) 選抜試験
7月に入って身体検査があり、それから学科試験が行われました。試験科目は5科目。7月5日は数学、6日は国語と漢文、7日は外国語。この3科目の試験時間はどれも3時間で、午前7時から10時まででした。8日は物理と化学と地理で、物理と化学は午前7時から9時までの2時間。地理は午前9時半から10時半までの1時間です。
外国語は英語ですが、例外がひとつありました。それは第一高等学校への入学を希望する人のみに意味をもつ規定で、仏法科と仏文学科の志望者はフランス語、独法科と独文学科、それに第三部(帝大の医科に進むコース)の志望者はドイツ語で受験してもよいというのです。フランス語やドイツ語を重視した教育を実施している特別の中学校に配慮した措置と思います。たとえば、中先生の兄の中金一は独逸学協会学校を経て一高に進みましたが、独逸学協会学校にはドイツ語の科目が存在しました。
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中勘助先生は『銀の匙』の作者として知られる詩人です。「銀の匙」に描かれた幼少時から昭和17年にいたるまでの生涯を克明に描きます。
●中勘助先生の評伝に寄せる 『銀の匙』で知られる中勘助先生の人生と文学は数学における岡潔先生の姿ととてもよく似ています。評伝の執筆が望まれ…
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