水琴鈴

シャラ…シャララン……
シャラ…シャララン……

ああ、心地の良い、音がする

シャラ…シャララン……
シャラ…シャララン……

水琴鈴の、優しい音色

シャラ…シャララン……
シャラ…シャララン……

娘のスマホについた、鈴の音

シャラ…シャララン……
シャラ…シャララン……

のどかな日曜の、穏やかなティータイム

シャラ…シャララン……
シャラ…シャララン……

娘の指先が、鈴をかすめるたびに

シャラ…シャララン……
シャラ…シャララン……

ふふ、ジャスミン茶の湯気が…揺れるみたい

シャラ…シャララン……
シャラ…シャララン……

夏に、京都で買った、お土産品

シャラ…シャララン……
シャラ…シャララン……

普通の鈴とは違う、繊細な音色

シャラ…シャララン……
シャラ…シャララン……

大ぶりなのに、こんなにも、か細い音色

シャラ…シャララン……
シャラ…シャララン……

少しお高かったけど、買ってよかった

シャラ…シャララン……
シャラ…シャララン……

ああ、いいな

シャラ…シャララン……
シャラ…シャララン……

ああ、すごく、いい

シャラ…シャララン……
シャラ…シャララン……

今度は、私も買おう

シャラ…シャララン……
シャラ…シャララン……

次の休みは、京都に行こう

シャラ…シャララン……
シャラ…シャララン……

そうだ、予定を確認しておこう

シャラ…シャララン……

自分のスマホを取り出したら！！！

リンリンリン！！

チリンチリン！！

「も～！お母さんの鈴さあ、なんか、めっちゃうるさいんですけど！！」

ああー、なんか、世界観が！！
たった今、この瞬間に！！

一気に全部、ふっとんだー！！！

せっかくの、せっかくの旅情をかきたてる美しい旋律、旋律ぅうううう！！

「ムム、それは悪うございましたね！！」

リンリンリン！！

チリンチリン！！

派手な音を撒き散らしながら、私は少々早めの晩ご飯の準備を始めたという、お話。