キレイ好き

　コロコロ、コロコロ……

　一心不乱に、右手を動かす

　コロコロ、コロコロ

　右手を止めて、ハンドルを持ち上げ、左手で粘着シートのヘッド部分を握る

　ぺり、ぺり、べりっ……

　ホコリと髪の毛と、小さなカスに糸くず…その他もろもろくっついている粘着シートを、剥がしていく

　び、ビリッ……ぐしゃっ、ぐしゃ……

　べたつきのなくなった粘着シートを、手早く丸める

　こすっ

　空のゴミ箱に、投げ入れる

　コロコロ、コロコロ……

　一心不乱に、右手を動かし続ける

　コロコロ、コロコロ

　右手を止めて、ハンドルを持ち上げ、左手で粘着シートのヘッド部分を握る

　ぺり、ぺり、べりっ……

　ホコリと髪の毛と、小さなカスに糸くず

　その他もろもろくっついている粘着シートを、剥がしていく

　び、ビリッ……ぐしゃっ、ぐしゃ……

　ざらつく粘着シートを、手早く丸める

　こつっ

　ゴミ箱に、投げ込む

　ゴロゴロ、ゴロゴロ……

　一心不乱に、右手を動かし続ける

　ゴロゴロ、ゴロゴロ

　右手を止めて、ハンドルを持ち上げ、左手で粘着シートのヘッド部分を握る

　べり、べり、べりりっ……

　ホコリと髪の毛と、小さなカスに糸くず

　その他もろもろくっついている粘着シートを、剥がしていく

　び、ビッ……ぐしゃ、ぐしゃ……

　いまいましい粘着シートを、手早く丸める

　ごっ

　ゴミ箱に、突っ込む

　ゴロゴロゴロゴロ……

　一心不乱に、右手を動かし続ける

　ゴロゴロゴロゴロ

　右手を止めて、ハンドルを持ち上げ、左手で粘着シートのヘッド部分を握る

　べりべりっ、べりりっ……

　ホコリと髪の毛と、小さなカスに糸くず

　その他もろもろくっついている粘着シートを、剥がしていく

　び、ビビビッ……ぐしゃぐしゃ……

　憎たらしい粘着シートを、握りつぶす

　がしゅっ

　ゴミ箱に、押し込んだ

　ゴロゴロゴロゴロゴロゴロゴロ！

　一心不乱に、右手を動かし続ける

　ゴロゴロゴロゴロゴロゴロゴロゴロゴロゴロゴロゴロ！！！

　右手を止めて、ハンドルを持ち上げ、左手で粘着シートのヘッド部分を握る

　べりべりっべりりっ……バリッ！！

　ホコリと髪の毛と、小さなカスに糸くず

　その他もろもろくっついている粘着シートを剥がしたら、茶色い芯が出てきた

　どうやら、粘着シートの最後の一枚だったようだ

　ぐしゃぐしゃ……

　薄汚い粘着シートを、芯に巻き付けなおす

　がさっ

　山盛りになっているゴミ箱の上にポンと乗せて、今日の掃除は終了だ

　まだ多少ざらつきが残っているが…粘着シートが無くなってしまっては、仕方があるまい

　俺はできる事をやったのだ…もうこれ以上頑張らずともいいだろう

　掃除機がないから…もうこれ以上何もできないのだ

　仕事休みの土曜に毎回二本入りの粘着テープを買い、翌週までに使い果たす

　ケチるために、買うのは週に一度と決めている

　中途半端に掃除をして、きっちり汚れが取り切れないままホコリは積もっていく

　一体いつになったら、俺は掃除を終えることができるのか……

　毎週100円、一ヶ月で400円から500円、一年で6000円ちょっと

　このアパートに越してきたころからこのスタイルだから、俺は総額60000円を使っている

　ちょっとした高級掃除機が買える値段だと気が付き、愕然とする

　このままでは、いつかコロコロ代だけで俺の財産は消えてしまう事だろう

　こんな事なら初めから掃除機を買っておけばよかった

　俺は掃除機を買うための貯金を始めることを決め……

　玄関に置きっぱなしになっているカップ麺の器に、100円玉を入れた