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身だしなみ

「……じゃあ、行ってくるよ。今日は、帰りが遅くなるかもしれない」

「今日は大切な会議でしたものね」
「ああ…、なるべく穏便に、短時間で終わってほしいものだけど」

「無事に意見がまるくおさまると宜しいですね」
「もう、今さらじたばたしたところで…はは、せめて笑われないように、努めてくるよ」

「あら…それでは、その寝癖は、直していった方がよろしいと思いますよ」
「寝癖になっているのかい。…すまない、直してもらっていいだろうか」

「もちろんでございます…はい、これでよろしいかと存じます。あ、肩に…ホコリが付いておりますね。ついでにお取りしておきますね」
「本当かい、気付いてくれて助かったよ、身だしなみにうるさい人もいるからね…、ありがとう」

「はい、これでよろしいです……まあ!胸元に誇りがついておりますよ、いい感じに輝いておりますね、どうか胸を張ってお挑み下さいまし」
「…ちょっと派手すぎやしないだろうか」

「大丈夫でございますよ、頬にはほっこりもついておりますから、きっと皆さまにこやかにご対応下さると思います」
「本当かい、でも変に目立ってしまわないか不安だよ」

「そうですね…少々お腹がぼっこりしておりますが、あちらには旦那様よりも大きな体躯の方がお二人もいらっしゃいますから」
「まあ、確かに…それは、そうだけれども。注目を集めて緊張してしまって、ミスをしてしまいそうでね、不安なんだ」

「旦那様の誠実さがあれば、多少の事は…おや、こんな所におごりがついていますね。払っておきますね…はい、これで大丈夫です」
「いつの間に…すまない、他にも怪しいものがついていないか、見てもらっていいかな?」

「もちろん拝見させていただきます。…こめかみのあたりに怒りが少々…ッ!まずいですね、拳にボコりがついております!旦那様、少々手荒いですが、全力で払わせていただきますっ!!」

ぱん!ぱんぱんぱん!!
びしっ!ばしばしばしばしっ!!

「ウッ……、そんなにもしつこくくっついているのかい?!けっこうダメージが大きいけど、まだ付いて?!」
「はぁ、はぁ、…大丈夫です、全力で叩き落とさせていただきました!!ボコりの攻撃性の高さに…ハア、ハァ…、少々翻弄されましたが、正真正銘の清廉潔白紳士にしか見えませんよ!!ご安心なされましっ!」

「そんなに汗をかいて…ありがとう、私のために」
「いえいえ、とんでもございません!!お力になれまして嬉しいです!!」

「じゃあ…行ってくる。留守を頼んだよ」

「はい、かしこまりました。どうぞお気をつけて。行ってらっしゃいませ!!!」

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