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私の電話ボックスを許してほしい。


私は電話ボックスに魅せられてしまった。

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その箱に入った瞬間、突如として現れる一人分の世界。

そして、やがて街から切り取られたような感覚になる。

唯一、社会に認められ受け入れられた私空間。


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しかしそれはいっときの幻想である。


公共物を完全に私有化することはできない。


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じゃあ、私だけの電話ボックスを作ろう。


こうして長きにわたる、私と電話ボックスという幻想との戦いが始まった。
(撮影助手・鳩)


第一章 調査

まず実際に電話ボックスに入ってみる。

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やはり、最高である。
静かな箱の中は多幸感でいっぱいだ。


ちなみに助手の鳩が電話ボックス未経験とのことなので入ってもらう。

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バタン


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あまりの異質な空間に、驚いて固まってしまったようだ。



続いてサイズを測定していく。

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(本当にメジャーを使ったことがない筆者)


こうして製作に向けての情報を揃えていく。

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カスみたいな設計図を書くことはできた。

果たして私だけの電話ボックスは完成するのだろうか。



第二章 完成、そして旅立ち


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私は自分の電話ボックスを設置するために、
公園までやってきた。

いよいよ私の電話ボックスが、解き放たれるのだ!

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(電話ボックス完成を前にして、喜びを隠せない筆者)

ここに公衆電話を置けば完成です。

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できたよ。

なんということだろうか。かなりそれっぽいものが完成してしまった。
公園に置いてあることで異質感を醸し出しているが、
これは私だけの電話ボックスと言えるのではないだろうか。

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「あ!電話ボックスだ〜」

どこからともなく通行人の声も聞こえてくる。
私の電話ボックスが認められ始めている。
この計画に徐々に追い風が吹き始めていた。


私はさらにひらけた場所へと電話ボックスを移すことにした。

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素晴らしい冬の曇天である。
もう私には羞恥心などなかった。
願いを叶えるためだったら、どこへでもゆける。

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そしてこのあと、悲劇が筆者を襲う。



第三章 運命の始まり

ここからは画像なしでお送りすることとなる。
ことの一部始終をご覧ください。

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(設置された電話ボックスから少し離れたところで会話する、筆者と助手の鳩)

ビューーーーーー!!(突風)
(無惨に倒れていく電話ボックス)

筆者・鳩:うあ〜〜〜〜〜〜ーーーー!?!!!!
(すぐさま駆け寄る)

筆者:...もう一度立て直すぞ!
鳩:そうだな!

公園の警備員:あの〜......

筆者・鳩:!?


公園の警備員:イベントか何かと勘違いする人がいらっしゃるので、撤去していただけますか?

筆者:え?

公園の警備員:少し、派手すぎるので....

鳩:は?

筆者:はぃ。すみませんでした。今すぐ帰ります.....。

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私の電話ボックスは社会に認めてもらえなかった。

きっとこれが社会においての常識なのであろう。

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悔しい。あまりにも悔しすぎる。

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そして、その悔しさは私に
抗えない運命の残酷さを知らしめた。



第四章 夢の終わり


私は気がつくと、海岸に立っていた。

もう、残された場所はここしかなかった。

母なる海。

それを前にすれば皆、平等なのである。


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さあ、電話ボックスを立てよう。




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あれ?

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ん?

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え?

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風強すぎね?


鳴り続ける轟音。
弾丸のように飛び交う砂。
立っているのもやっとなほどの激しい向かい風

そのような場所に電話ボックスを設置できるはずがない。

我々は一時撤収を余儀なくされた。


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悔しい。

あの時の悔しさとよく似ている。


もう、あの空間に入ることは許されないのだろうか。

せめて、最後にあの空間に包まれたい。
私が電話ボックスに入ることを許してほしい。


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私は再び進み始めた。

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海が呼んでいる。



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さあ、電話ボックスに入ろう


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だが、更なる突風がそれを許さない。

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私は必死に電話を抱えて、
その空間に留まろうとした。

そして、私の中で一つの葛藤が生まれたのである。



最終章 せめて、人間らしく


私はあの時、切実に、自分の電話ボックスが欲しいと思った。

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自分だけのその空間で、過ごしたいと願ったのだ。

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だが、社会がそれを許さなかった。

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あまりにも馬鹿げていると、大人たちは言うかもしれない。
でも、私は諦めたくなかった。


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この風に吹かれるまでは。


心身はすっかり疲弊しきっていた。
海さえ、私の電話ボックスを見放したのだ。

もうどこにも居場所はない。
この電話ボックスが生まれたこと自体、間違いだったのかもしれない。

私はやってはいけないことをしてしまったのか........







(無言)










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うわあぁアァアアアアア!!!!!!!!!


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気がつくと、私は
無我夢中で電話ボックスを破壊していた。




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もう、こうするしかなかったのだ。


申し訳なかった。電話ボックス。
私たちのことを許しておくれ。




鳩:うわわわあああアアアアアァア

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助手の鳩もこの電話ボックスのことを一生忘れないだろう。



母なる海は私たちに大きなことを教えてくれた。

寄せてはかえす波が、砂をさらう。

地平線にオレンジ色の太陽が、溶けていく。

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結論:私の電話ボックスは許されなかった。







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(「仰げば尊し」を聴きながら、この記事を最初から読み返してください。)
(私たちと同じ気持ちになれます。)


これにて、この記事の幕をおろそうと思う。
おそらく、これは運命だったのだ。

お付き合いいただき、ありがとうございました。(高尾)



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