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『令和3年度 咲くやこの花賞』贈呈式 人生の晴れ舞台に立ち会う幸せ

28日、中之島の大阪市中央公会堂で『令和3年度 咲くやこの花賞』の贈呈式があり、光栄なことに司会を拝命した。

「咲くやこの花賞」は俳優の藤山寛美さんの寄付基金と、多くの市民からの寄付金をもとに創設され、39回目を迎えた。
美術、音楽、演劇・舞踊、大衆芸能、文芸その他と5つのジャンルから、大阪を拠点に活躍する若手芸術家に贈られる。

過去の受賞者一覧を見ると錚々たる名前が並ぶ。
桂べかこさん(当時)、今いくよくるよさん、藤山直美さん、作家の有栖川有栖さん、シンガーソングライターの植村花菜さん、そして私の中学時代の友人で人形浄瑠璃文楽座の三味線奏者、鶴澤寛太郎さんも平成30年度に受賞している。

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令和3年度の受賞者の皆さんは、美術部門 現代美術 谷原菜摘子さん
大衆芸能部門 浪曲 真山隼人さん
文芸・その他部門 小説 呉勝浩さん
演劇・舞踊部門は俳優の伊原六花さん
音楽部門は、なにわ男子の皆さん。

さらに、スペシャルゲストに昨年度の受賞者、ミルクボーイが駆け付けるという華やかな舞台となった。

画家の谷原菜摘子さんは、怖さと美しさが同居するファンタジックな作品を製作している。インタビューをしていて、とても楽しかった。
天国も地獄も私たちが暮らすこの世界に存在していて、美しいものと闇を一緒に描く。黒いベルベットに下書きをせず油絵具を乗せていく。まるで闇から突然姿を現すかのように、次々と人物や人魚など様々なものが生まれる。
製作過程もアートなのだ。
スパンコールやラインストーンなども使用し、金属光沢を非常に美しく描く。さらに必ずご自身を登場させているのが谷原さんの特徴だ。お話しを伺っていて、この人はとても強い方だと思った。
と言うのは「自分と向き合わなければ描けない作品」を描いていらっしゃるから。内なる自分と常に対話をしながらの作業、これは強くなければできない。大変分かりやすく面白く語って下さり、お客様も引き込まれていた。

小説家の呉勝浩さんは映画監督を目指して大阪芸術大学に進学するも、卒業後に小説家へ転向。2015年『道徳の時間』で第61回江戸川乱歩賞を受賞し、デビューを果たす。「いつでも方向転換できるし、自分の好きなことをすれば良い。僕はたまたま上手くいっただけ。あまりおすすめしないけど…」と、デビュー前の苦労を振り返った。
その日の食事にも困るほど余裕の無い生活をする中で「犯罪者」になっていても不思議ではなかったと言う呉さん。犯罪に手を染めるのは、決して特別な人ではなく、誰もが足を踏み外す恐れがある。
作品に登場する人物に、かつての自分を重ね合わせ、世の中の光と闇を鋭く描く。

なにわ男子の皆さんは、残念ながら欠席だったが、9分にも及ぶ特別なメッセージ映像を届けてくれた。
「大阪のお兄ちゃん」と「王子様」は遠いところにある言葉だと思っていたが、見事な7人の大阪の王子様である。
客席には、なにわ男子のぬいぐるみを持って参加しているお客様の姿も。
これまでの苦労、彼らの直向きさ、夢を叶える力に私も勇気を貰った。
なにわ男子のデビュー曲『初心LOVE』のMVをフルバージョンで観て、受賞を祝った。

雪の別名「六花」の名に相応しい純白のワンピースで出席した俳優の伊原六花さん。
贈呈式の間、受賞者の皆さんはステージ上の椅子に座るため、出ずっぱり。他の受賞者の話に頷きながら真剣に耳を傾ける伊原さんの姿が印象的だった。
2018年のデビューから現在まで、TV、ドラマ、映画、歌手、ミュージカルと大活躍の4年間を映像とともに振り返った。
我々メディアはどうしても「バブリーダンスからのシンデレラストーリー」という物語で伊原さんを見てしまいがちだが「あのバブリーダンスの…」と言われることに複雑な思いもあったという。
しかし今は「私を知ってくださった方には、バブリーダンスを見たという方がたくさんいらっしゃって。恥ずかしいことでなく、今はホントに誇りに思ってます。それで『お芝居やってるんだ』『歌も歌ってるんだ』と作品を知ってもらえるのは1つの私の武器。今はもう、ありがとうございます、という感じ」と「バブリーダンス」へ感謝の想いを語ってくれた。
大阪の好きな場所は、大阪狭山市の「狭山池」。伊原六花の原点だ。
「人が来ぉへん秘密基地があって、1人でダンスの練習をしたり、嫌なことがあって友達と泣きながら自転車で走ったり…」と大阪弁で懐かしいエピソードも披露。「私らしく進んで行きたい」と真っすぐ前を見据えて今後の活躍を誓った。

浪曲師の真山隼人さんは、急性硬膜外血種から見事に復活。曲師の沢村さくらさんが奏でる軽快な三味線の音色に合わせて伸びやかで張りのある素晴らしい美声を響かせた。
あと1時間でも発見が遅ければ命は無かったという真山さん。
稽古場に現れず連絡もつかないため、心配して自宅を訪ねた沢村さくらさんが倒れている真山さんを発見。119番通報した。
緊急手術を経て意識が戻ったのは3日後のこと。そこへ飛び込んできたのが「咲くやこの花賞」受賞の報だった。
贈呈式では、このエピソードを浪曲に仕上げた『闘病記~咲くやこの花~』と『西村権四郎』を披露。完全復活を遂げた真山さんに万雷の拍手が贈られた。「中央公会堂で浪曲をするのが夢だった」と笑顔を見せた真山さん。
帰宅後、命の恩人・沢村さくらさんの名をトロフィーに書き足したという。

来年の「咲くやこの花賞」は40回記念!
どんな方が受賞されるのか、今から楽しみだ。
受賞者の皆様の晴れやかな笑顔に「世界に誇る芸術の都」となっている大阪の明るい未来が見えた気がした。

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