ゴールデントライアングルへのヒッチハイク ~手紙~

『ゴールデントライアングルへのヒッチハイク』 ~手紙~

 メコン川が流れるチェーンセンのいなか街では毎日暑い日が続いている。今、俺はタイ人の運転するトラックの荷台に座り、横に流れる大河、メコン川を眺めている。トラックはゴールデントライアングルへと向け、車通りの少ないメコン川沿いの道路を快調に飛ばしている。荷台に座っているため直接に風をあび、みんなの髪は強くなびいている。しかしみんなの顔は誰も爽快である。

 お昼頃に3人でゴールデントライアングルに向けチェーンセンゲストハウスを出発した。
 重本さんが「簡単にヒッチハイクできるよ」と言うので、さっそくみんなで出発したのだが、実際はなかなか車は止まってくれない。暑いさかりの中、日陰もない道を3人でとぼとぼ歩いていた。

 宿からゴールデントライアングルまでは9キロある。歩けない距離でないが、女の子も混じっているため歩いたら2時間半から3時間はかかるだろう。途中で誰かひとりぐらい倒れかねない。俺は首にかけたタオルで額の汗を拭いながら、やけくそのように歩いていた。

 「やっぱりヒッチハイクなど簡単にはいかないのかなあ」と思い始めていた。そんなとき人を乗せるにはちょうど良さそうな、白いマツダのトラックがやってきた。俺は多分今回もダメだろうな、と思いながらもトラックへ向け手を振った。他の2人はもう手さえも振らない。白いトラックはまるで我々の存在などに全く気づいていないかのように俺たちのわきを通り過ぎていった。

 やっぱりダメだと思っていると、通りすぎてしばらくたったあと、ウインカーを出しそして車は止まった。どうもその車の止まり方は、我々のために止まったのではなく、何か小用をたすために車を脇に止めたかのようだった。俺たちは「違うんじゃないか?」と話しつつも車に急いで近づき運転手に話しかける。
「ゴールデントライアングルに行きたいのだけど、後ろに乗せてくれないか?」
運転集はあっさり言った。「OK!」やはり俺たちのための止まってくれてようだった。俺たちは荷台にかけあがり、車はまだ見ぬミャンマーへ向け快調に飛ばした。


 今回の旅でもヒッチハイクをすることになろうとは思いもしなかった。学生の頃に日本では何回もヒッチハイクをしたことがあったが、まさか異国の地でもヒッチハイクしようとは。トラックの荷台というのは想像以上に気持ちがいいものであり、心地よい風がほほをかすめる。子どもの頃、田舎にてトラックの荷台に乗ったことはあったが、当然大人になってからは日本ではそのようなことができなかった。27歳にて久しぶりに少年の頃に戻った気がした。
                                 

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?