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#CLUB_REGULUS の映像演出に度肝を抜かれた話

先日、「VRChat」内で開催されたクラブイベント、CLUB REGULUS DELTAがとてもよかったので感想文です。

イベントスタッフのBUSSANから「人類がまだ見たことのない表現が見られます」と前情報で言われていたので大きな期待を抱えながら見ていましたが、その言葉に偽りなしでした。

自分が映像をつくってることもありどうしてもVJ演出についての言及が多くなっているのはご容赦ください(音楽も最高によかったです…!!)。
写真を撮るのを忘れていたので、皆さんのツイートなどを引用させてもらいつつ書きます。

エントランス。「VRChatのクラブ」と一口に言ってもそのスタイルは本当に様々なのですが、多くの人が想像する「クラブ」とは全く違う景観。
この空間から読み取れる情報がほとんどないので「これから何が始まるんだ…?」という期待と不安が8:2ぐらいの印象。良いデザインだ…。

会場全体の写真も撮れてなかったんですが(反省)、会場はエントランスよりも広く、洞窟の細い道を抜けたら広い空間に出た、みたいな感じ。

あれよあれよという間にフルインスタンス。入れてラッキーでした。

DJごずさんのプレイがスタート。VJ映像はDJブースの奥に表示されるスタイル。

映像は透明スクリーンみたいな感じで、後ろにある岩壁も見えてます。この時点でもう、基底現実ではできない演出になってますね。岩壁にスポットライトを当てちゃうと透明スクリーンとプロジェクターではVJ映像がここまできれいには見えないでしょう。

出てくる映像からしてVJの方(Hatotoさん)は本業の方なんだろうなとは思いましたが、平面1枚のVJの時点で奥行きのある映像を出してます。これがこのあとの演出の伏線になっている。

この時には「あー平面映像で奥行きを感じさせるタイプかあ、確かにおもしろいけどVRならもっと立体的なことができるだろうになぜ…? ワールド容量的にいろいろ仕込んでる感じではなさそうだし…」などと思っていましたが、期待通りに予想を裏切られる展開が待っていました。

映像が立体になりました。この時に「立体に見えているのか、立体なのか」を確認したくて会場を左右に動いた人は私だけではないはず。

6枚の映像を立方体にしてるんですね。普通なら3面しか見えないですが映像が透明なので6面見える。

しかもスクリーンが動きます。そうだよね。動かせるよね。動かせるなら、動かすよね。私が覚えている限りでは、6面ぜんぶに同じ映像を投影している感じでしたが、元の映像の強度もあいまってすばらしい空間演出になっていました。透明であることも活かした表現が印象的。
平面映像だけで空間演出するというのはかなり難しく、ただ立体的に配置すればいいというものでもないと思うのでこれはすごい。

(ちなみに平面映像を立体的に配置して空間演出するアプローチはNONOTAKがとにかくカッコいいです。ぜひチェックしてみてください。)

ところで、「映像を立体に」と言われると、多くの人がプロジェクションマッピングを思い出すのではないでしょうか。
プロジェクションマッピングは立体物に映像を投影し、3次元的な奥行きのある映像表現を可能にする技術ですが、複雑な形状のものだとつくるのが大変な上にハマる演出が少ない。

形状を活かした表現をつくろうとするとキューブなど単純な形のほうがやりやすいんですが、プロジェクションマッピングはその性質上、周りの明るさを抑える必要があるので、ステージ照明も必要なライブ演出とかだとLEDでやっちゃうことの方が多い…という感じで、今ではほとんど見なくなってしまった技術です……。

ええ~!!ブームから10年近く経って、まさかVRでプロジェクションマッピング的な映像演出を見るとは!
私はこの時、驚きと感動のあまりマイクをミュートにして笑っていました。

「立体物に上から映像を被せて動いてるように見せる」タイプの演出をVRでやる必要は本来ないはずです。VRなら、動かせるからです。実際にスクリーンは動いていたし、「動く立体物」をつくっちゃえば映像でやらなくていいんです。でもあえてこれをやる。

おそらくVJのHatotoさんは、このイベントで「平面の映像を立体的に組み合わせてできること」をやり尽くそうとしたのではないかと思います。だからメッシュは使わず、プロジェクションマッピングをやった。ここは、平面映像を扱うVJとしての矜持が見える感動的な演出だと思います。

そして次に、6面のスクリーンをレイヤー状に重ねて時間をズラして再生する表現が出てきます。これもプロジェクターではできない表現で、おもしろいです。

アーティストの中西信洋さんという方が、透明アクリル板に時間をズラして撮影した写真を印刷して空間に並べて時の移ろいを表現する「レイヤードローイング」という作品を手掛けていますが、こちらは映像をレイヤー状に配置することで時間軸方向とZ軸方向に時間が流れていく表現。

文字で書くと「ただ前後に映像を並べてるだけ」なんですが、VRで見るととてもすごい。個人的にはこの表現が最も、三次元的な奥行きを感じる演出でした。映像が奥の方向に進んでいく感じは、何とも説明しがたい。

これも完全に想像ですが、Hatotoさんが「立方体として配置する以外に、6面のスクリーンを使ってできることはないか?」とひたすら考えた末に出てきたアイデアなのではと思います。単純だがなかなか思いつかない。
このスタイルで鑑賞する映像作品がもっと観たい、と思いました…。

ちなみに、これだけカッコいい映像演出が映し出されている間も、背景の岩壁にはスポットライトが当たっていました(付いたり消えたりしていました)。どうやらこの照明もHatotoさんがコントロールしていたようなのですが、この岩壁をあえて見せるところが素晴らしい。

映像がただの平面だった時点では、モーショングラフィックスのような非現実的なものが重なっているギャップで、同様にバーチャルの存在であるはずの岩壁から非常に実在感を覚えるのがおもしろいな~という程度に感じていたんですが、
演出が進化していくにつれて、「岩壁が見えていることによって自分や映像が空間に存在していると感じさせてくれている」ことに気づきました。

もしも、真っ暗な空間で映像だけが浮かんでいるワールドだったら、「自分が空間にいる感じ」がなくなっていたんじゃないかなと思います。いくら立体的な映像表現といっても、人間の視界は二次元ですから、「動かない岩壁」が空間の基準点として機能しなければならなかった。

苦労して映像演出をつくった当人からしてみれば映像を見てほしいと思うのが自然だと思いますが、「空間としての体験」を優先し、あえて岩壁を見せたのではと思います。

巨大な岩壁、というのもいいですよね。「動くはずがない物質」と認識できるので、なんというか安心感がありましたし、映像も引き立っていた。
(個人的にはDJさんの姿がもうちょっと見やすいとうれしかったなと思いました。たぶんそのためのモニターだったと思うのですが、最前で見てるとモニターはどうしても視界に入らず…。)

などということを思っていたら、DJのQ330さんが民族音楽っぽい曲(ジャンル名がぜんぜんわからん)をかけ始めて、めちゃめちゃ盛り上がりました。祝祭すぎた。

そして最後のDJ、Bishamonさんのプレイが始まります。

ずっと最前で見ていたら思った以上に体力を消費してしまっており、後ろのほうで休憩しながら見ていたのですが、先ほどはスクエア型の映像を組み合わせていたのに対して、この時は横長映像の組み合わせになっていました。大正義、16:9。

DJブース背面の岩壁のスポットライトも消えて、平面映像だけの演出!HatotoさんのVJとしての気合が、これでもかというぐらい感じられました。これまでいろいろな見せ方をしてきて、最後は正面から勝負してくる感じ。
マジで強い。在り方が。矜持。

感動のフィナーレ!!!!
「あー…よかったな…」という言葉しかなかったですね。

会場にいらしていたみなさんが仰っていましたが、本当に見れてよかったイベントでした。Hatotoさんによるアフターも仕上がっていて最高でした。
ワ探のDiscordで教えてくれたかわうそさんとBUSSANには大感謝です。

自分は数える程度しかVJをやったことがないので、言及するのもおこがましいんですが、基底現実でのクラブでのVJって目立たないし、マジで映像とか誰が見てんの?って思うときもあるし、やってて結構つらいこともあると思うんですよね(ぜんぜん違ってたらすみません)。

でもVRChatで、平面映像でここまで感動的で印象に残る表現がやれるんだと思って、会場にいる人みんなが衝撃を受けてたし、もちろんほかのバーチャルクラブでVJやってるみなさんもめちゃめちゃ強くていつも感動するし、本当になんか、もっといろんな人にこのすごさを分かってほしいぜ……と思ってこの文章を書きました。

残念ながら今回のCLUB REGULUS DELTAは再演なしということなのですが、HatotoさんのVJは是非ともまたどこかで見たいし、いろんな人に見てほしい。
PCVR環境を整えるのはお金かかりますけど、それくらい投資する価値があると確信を持って言えます。
というか環境さえ整えればこれが無料で見られるって何?

熱量の高い場所にいられるというのは本当に幸せなことですね。
改めて、イベント関係者の皆様、お疲れさまでした。最高でした。次回も楽しみにしてます!!!!

追記:BUSSANによるアフタームービーが公開されました!
とてもかっこいいのでこちらもぜひチェックしてみてください。


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