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Ponniyin SelvanⅠ・Ⅱ(PS1 黄金の河・PS2 大いなる船出)の極めて個人的な感想

 塚口サンサン劇場さんの粋な上映スケジュールのお陰で『PS1 黄金の河』と『PS2 大いなる船出』を通しで観てきた(本当にいつもいつもわかっていらっしゃる。ありがとうございます🙏)
 1は先月公開されており14日は2の公開日だったのと、私の推しマカランド・デシュパンデが2に出演しているので、主に2の感想を。

 原作は5巻からなる長編小説で、そのあまりのスケールの大きさから長年映画化が実現しなかったという本作。さすがに衣装やセットが大掛かりで素晴らしく、登場人物も多い。
 それでなくてもインド映画はみんな髭生やしてて、髭耐性のない日本人には見分けがつきにくいのに、更に時代劇となるとみんな長髪でどれが誰やら状態になる。
 昨年SPACE BOXさんが英語字幕版を上映してくれた時の私はまだインド映画歴3ヶ月(劇場で観るのは3本目、タミル映画は2本目)・英語ほぼわからない・1は未視聴というスキルでよくもまあ観に行ったものだと思う。ただただ推し見たさの一心だった。
 というわけで当時はボンヤリとしか内容がわからず、後にWikipediaのあらすじで補完し、今年になって1を観てやっと全体像を把握できた感じ。なので初見ではないもののかなり新鮮だった。
 物語の舞台は10世紀後半のタミル地方チョーラ王国。スンダラ王の三人の子アーディタ皇太子・クンダヴァイ王女・アルンモリ王子を中心に、愛と復讐、野心、陰謀、戦争と様々なドラマが展開される。とても美しく哀しくドラマチックな作品だ。
 三人の間を繋ぎ助ける皇太子の親友・騎士デーヴァンを演じるカールティがとても可愛い。初見時の私は3日前に『囚人ディリ』を観たばかりで他の俳優さんは推し以外誰も知らなかったので、彼の存在だけを頼りに(だって字幕も読めないし)観ていたが、もう1年前の私とは違う。1も観たしWikipediaも読んだしアイシュワリヤー・ラーイもトリシャも知ってるし字幕も読める。超余裕!と思ったのに、やっぱり最後まで見分けられない人がたくさんいた。恐ろしい映画だ……。
 でも細かいところに「わかる」がいろいろあって嬉しい。
 1のデーヴァンがアルンモリ王子と初めて会うシーンでいろいろな武器を使うが、中にウルミがあった。鞭みたいにびょんびょんする剣。あれは『ガネーシャ マスター・オブ・ジャングル』で覚えた。
 ナンディニが宝物庫で手に取る剣の持ち手の魚のデザインは、パーンディヤ王家の紋章。これは何の映画に出てきたか忘れたけど(忘れたんかい)「王家の紋章の魚みたいに」という表現を調べて知った。
 そして推しが指導者を演じたカーラームガルのモデルになったカーラームカはシヴァ派の一派で、9世紀頃から中世に王家に庇護されたり人気が高まったりもした教団だが、その姿や奇行などからかなり過激な集団だとされていた。
 あの、母親からもムリヤデーと言われ自信のない表情をしていた先王の息子マドゥランダカが、彼らの支援を受けてだんだん顔つきや言動が変わってくるのも、カーラームガルの勇猛さ過激さによるところが大きいのだろう。
 ラストでアルンモリから王座を譲られたマドゥランダカはウッタマ・チョーラ王として970年から985年まで在位し、彼の死後アルンモリがラージャラージャ1世として王位につくとチョーラ朝は隆盛を極め、その息子ラージェーンドラ1世の時代には領土が最大となった。
 だがそれも時代と共に衰退し、チョーラ朝は13世紀に滅亡する。映画には大きな仏教寺院が出てくるが、インド発祥の仏教も13世紀には衰退する。
 ゆく河の流れは絶えずして、しかももとの水にあらず。よどみに浮ぶうたかたは、かつ消えかつ結びて、久しくとゞまりたるためしなし……とは方丈記の冒頭文だが、栄枯盛衰は古今東西みな同じだ。
 ただしインドのは大河!だいぶ大河!!

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