みえぞう絵日記




 

あづい。あづい日は、ノースリーブの迷彩色の綿ワンピースを着て足を放り出して座って本を読む。8カ月ごろから、みえぞうが激しく動く様子が、服の上からでも確認できるようになった。ぎにょーと頭を旋回させて180度の位置変更を行うんである。そのまま腹からみえぞうが「きー」とか叫びながら飛び出してもなんの不思議も無いような、気分はエイリアンの母たかくらだ。
 
既に子がいる友人は「おおきなビニールのゴミ袋に、鯉が入っていて、それが跳ねるかんじ」と言っていたが、手応え(というか腹ゴタエ)としては、そんな雰囲気だ。その時の胎児の向きによって、蹴られる臓器が違ってくるのだが、膀胱を蹴られる時が一番きく。膨れた子宮によって周囲の臓器はかなり肩身の狭い思いを強いられているうえに、しょっちゅう蹴りや頭突きが繰り出されるワケで、たかくらの腹腔内は常に暴動の危機にさらされていると言えよう。「打倒!帝国主義子宮。独裁者みえぞうを追放せよ」とか反旗をかかげた胃や肝臓などが決起する時、いさぎよく体外に出てきてくれるのかもしれん。国から追放された王、みえぞうの運命やいかに。
 世の中では、あまりの暑さに人が死んだりしておるけれども、たかくら家では、同居人が嫌うのでクーラーは御法度だ。たかくらが死んだらどうしてくれる。(扇風機を回した屋内で死にはせんて)
 昨日、夕方涼しくなってから、かねてから懸案のバイク磨きを実行した。半年間、放ったらかしになっていた愛車ビラーゴ殿は、やっぱりというか完璧にバッテリーが昇天している。とりあえず出産するまでは乗る機会も無いので、車体を磨き錆止めを塗ったくってワックスをかけ、カバーで覆っておく。久しぶりにじっくりと見るバイクは懐かしく、身軽だった頃の自分を彷彿とさせて「きしょー、ツーリングいきてー」と拳を握ってしまうのだったよ。小学生になったらポケバイに乗せようか、自転車のレースに出場させようか、と産まれてもいない帝国主義者胎児みえぞうに思いを馳せて自分を鎮める。ああ、軽自動車税払わなくちゃ。
 



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