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映画『新聞記者』を観たけど・・・(パート2)

前回(パート1)の続きです。今回はネタバレ記事ですので、ネタバレでも良い方、もう観てしまった方へ向けて書いています。

【以下ネタバレです!】

僕は祝儀の中身が知りたかった・・・

松坂桃李はヤバイ真実を国民に知ってもらうため、上司の田中哲司を裏切る決断をします。しかし、田中哲司はその裏切りの可能性に気付いていました。

田中哲司は違う部下に松坂桃李を尾行させ、さらには、第一子が生まれたばかりだった松坂桃李に祝儀を手渡します。

この中身がいくらか、相当気になりますよね?一体いくら包んだのでしょう。でも、映画の中でその祝儀袋が開かれるシーンはありませんでした。

ラストシーン

最後、新聞でヤバイ真実が報じられます。朝刊にその記事が出た後、田中哲司はそれを誤報にするために情報提供者である松坂桃李に圧力をかけます。

松坂桃李はシム•ウンギョンとこのヤバイ真実について、情報提供者が国家公務員である自分だということを報道していいと約束していたのです。

なので、松坂桃李がその記事は真実だと証言すれば、そのヤバイ真実が国の大問題となり、反対に松坂桃李がその記事は嘘であると証言すれば、そのヤバイ真実は新聞社の誤報となるわけです。

ラストシーン、松坂桃李とシム•ウンギョンが横断歩道を挟んで向き合います。そして、松坂桃李がシム•ウンギョンに何かを伝えます。

これが口パクで表現されるので、観る人は、松坂桃李が何って言ったのか想像するしかないのですが、おそらく「ごめん」と言ったでのしょう。

結局、出世や圧力には抗えないし、「国のため」という大義もあるし、子どもも生まれたばかりで露頭に迷うわけにはいかないし。

これは推測ですが、結局、松坂桃李は田中哲司の説得に折れ、新聞記者に与えた情報が嘘だった報道することを了承し、その事をシム•ウンギョンに「ごめん」と謝罪したのでしょう。

ごめん、僕は真実のために自分の家族や国の大義を捨てることは出来なかった。松坂桃李はシム・ウンギョンにそういうことを伝えたかったのだと思います。

祝儀は1万円か、3万円か、5万円か、それとも?

これを描いてたらなんか、もっとエグかったと思うんですよね。それに、松坂桃李を説得するために田中哲司が、人事の話以外にどんな言葉をかけたのかも知りたかったです。

祝儀にはいくら入っていたのか。田中哲司が最終的にどんな言葉で松坂桃李を説得したのか。田中哲司の説得に折れた松坂桃李が何と言ったのか。それらは、僕ら国民が決して知ることができない、生々しいやりとりです。

僕はそういうエグいところが観たかった。それ以外は、想像どおりのことだったので、せっかくここまでリアリティを持って描いているのなら、監督や脚本家さんが考えたその言葉を聴きたかったです。

正直、この映画の素晴らしさはエグさだと思ったので、一番エグいところを表現しないのは、なんか本当に残念だなーと思いました。

忖度(そんたく)の話とか、もうなんか描くまでもなく皆んな知ってるんじゃね?

正直、この映画がリアルに描かれているとか、国の内部ではこの映画みたいなことが本当にありそうだとか、そんなことはもうみんな分かってることのような気がします。

つまり、『新聞記者』というタイトル、リアリティのある演技、リアリティのある設定だけど、それは森友問題や加計問題を知ってる人なら誰しも想像できる展開だったのではと。

あらゆる表現物は、僕らの想像の先に、価値があるのだと僕は思っています。もちろん、それだけが表現物の価値ではありませんが。

映画『リバーズ•エッジ』を観た後だったし、他にも『マリッジ•ストーリー』や『アイリッシュ•マン』とか観た後だったので、正直、冒頭の日本アカデミー賞についての記述の通りでした。うーん。

最後に、田中哲司が言う「国のため」や「国の大義」は、「現在の政権の維持」という意味です。

田中哲司は言います。「政権が揺らげば、国が揺らぎ、国民の生活は苦しくなる」おそらくそれは真実です。

だからと言って不正を隠すのはおかしいです。しかし、不正を暴けば、政権への不信が高まり、株価が下がり、景気が悪くなり、一時的に、あるいは一定期間、国民の生活が苦しくなるのも真実だと思います。

なんかエグいですよね。強力な政権によって安定している国にとって、不正って何なのでしょうか。そんな国は一体この先、どうなるんでしょう。

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