伝えられなかった言葉

 私は口下手だと思います。本にも書いたように定時制に移っていた私の元に全日制にいた時に教えた生徒が卒業式の日に来て「第一志望校は不合格でした。家庭の経済状況を考えると浪人はできません。第二志望校に進学します」と言われました。大学の2年次に編入試験を受けて合格すれば第一志望校をタイムラグなしに卒業できるよと教えてあげれなかったのです。編入試験は入試よりかなり易しいことも。そして言ったことは浪人せずに第二志望校に進学するのは家庭の経済状況は関係なくあなたの判断だということを納得できるのかと聞きました。
 最近その事を考えていると、同じようなことが一杯あることを再認識しました。そして、今一番後悔していることは約35年前に5年間務めていた私の母校での離任式で言えなかったことです。その1~2ヶ月前に私の授業で「物理は受験に不利と言うことで学校・担任も選択しない方が良いといっているようだが、理工系に進学したとき殆ど全ての学問の基礎は物理だと思っている。もし合格できても高校の物理程度の基礎知識がないと大学の講義について行けるのか疑問である。だから皆は来年度も物理を選択して欲しいと言ったら、生徒から「私たちが物理を選択したら、来年度も教科担任をしてくれるか」と聞かれたので当然であると答えていたのです。だから離任式で一部の生徒だがと前置きして物理の重要性と共に教科担任の約束を守れなかったことを謝るべきだったと思うのです。
 また前に書いた通信制高校に新任教頭として赴任していたときにいたF君にも「教師の子どもはつらいよな」と言ってやりたかったなと自分の短気さも含めて未だに後悔しています。余談ですがこの当時に組合員の教員から「職員による管理職への逆評定であなたは県下で最低です」と言われたとき、心の中で「私は30年近くしていた教諭の時に組合費を1ヶ月だけしか払っとらんよ(県下では非常にまれな非組合員だったんよ)」と言ったらこの人はどんな顔をするんかなと思わず笑いそうになりましたが、管理職による組合批判ととられかねないと言わずに過ごしました。しかし、現役最後の年の定時制では県下の最高の管理職だと職員に評価されていると思いますと言われたときには心の中で苦笑いをしてしまいました。その他後になって言っておけば誤解されずに済んだなと思うことはかなりあります。
 また約10年前に人身事故を起こしてしまいました。悪いのは私です。夕方かなり暗くなった頃に右折しようとしていて歩行者に気がつかなかったのです。歩行者も私の車に気がついていなかったのです。だから事故は双方が気がつかなかったときに起こるのだなと確信しました。私が1秒早く交差点に進入していれば、今頃は刑務所暮らしをしていたと思いますし、1秒遅ければ何事もなくすんでいたと思われます。検察庁から呼び出され、事故検分されました。当然私が悪いので全て私の責任ですと認めました。最後に何か言うことはないかと聞かれたときに、多分「被害者さんが、明るい服・懐中電灯・反射板のどれか1つでも着けていてくれたら、私も気がついたかも知れないので痛い目に遭わないで済んだ可能性もあります」と言いなさいと言われたと思いましたが、何もありませんとだけ答えました。そうすれば多少罰金も減ったかも知れないなとは思いました。事故時の現場検証の人の予想より多額の罰金でしたから。しかし、あの場に戻れたとしても同じことをしていたと思います。変に弁護・損得を考えるよりも自分のしたことだからと認めることを優先しましたから。

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