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「悲しみの忘れ方 Documentary of 乃木坂46」ネタバレ感想メモ

アイドルグループ乃木坂46の初ドキュメンタリー映画「悲しみの忘れ方 Documentary of 乃木坂46」を本日鑑賞してきましたのでメモ程度に感想を書いてみようと思います。普段映画を見ても感想を書くことはあまりないのですが、ネタバレが少し無いと自分が見に行って耐えられる映画かわからないというアイドルファンの方の意見が少しありましたのでネタバレをちょっと出しつつ個人的な感想も。

ネタバレを見たくない方はすぐ映画館へそのまま行ってください。ただネタバレがあっても、そこの画面に映っている人から何を見るのかはドキュメンタリーという性質上興味深さを削がれるものではあまりないのかもしれないのですが。

テーマ

この、作品でずっとテーマになることはサブタイトルになっている「悲しみの忘れ方」ということです。ポスターに写真が載っている5人(白石さん、生駒さん、西野さん、生田さん、橋本さん)の、乃木坂46以前のそれぞれの「悲しみ」、そしてそれを乃木坂46に入って活動することにより「忘れる」(乗り越える)様子を乃木坂46の3年あまりの歩みと合わせて、オフショット映像やインタビュー、そしてメンバーの母親の言葉をナレーションとして(声は西田尚美さん)振り返りながら描きます。

そして、アイドル活動する中でも「悲しみ」(スキャンダルや選抜、選抜落ち、プレッシャー、紅白落選など)が生じ、それを乗り越える過程を同じように5人以外のメンバーも含め描かれます。

それでは興味深かったところを何点か。

自己啓発セミナー的なものとしての乃木坂46

基本的に5人(生田さんはちょっと違うかな?)に共通しているのが、乃木坂46以前の自分についての自己否定です。昔の自分は嫌い、忘れたいというもの。

そのために乃木坂46が機能して、ある種のイニシエーションを受けることによって昔の自分を否定し、新しい生き方を選択することによって乗り越えるという過程は非常に興味深く、冷静に見ると自己啓発セミナーやカルトの洗脳のようにも見えてきます。

一番象徴的になるのが、「16人のプリンシパル」のシーンです。2部制の演劇ショーのそれは、1部でメンバー1人1人の自由な自己アピール、2部は1部の自己アピールによって客席から投票オーディションをされ選抜されたメンバーで演劇をするというもの。

彼女たちが自己アピールで選ばれないことを体験するうちに、1部の自己アピールで自己批判を客席に向かって始めるのです。「私の今までの人生はこうでした。でもそんな自分を変えたい。」というように。自己分析や目標を立てることは肝要なことであると思うのですが、それを公に晒しながら行うということはある種の自己啓発セミナーやカルトへの帰依段階で起こるような事ではと思うのです。

ただ、ここで注意したいのは誰しも何かに帰依して生きているということで、帰依すること自体を批判したいとかは思いません。でも、その段階が公に晒されて見えることが興味深かったのです。

それと本当にこの「悲しみの忘れ方」は正しいのだろうかと考えるようにもなりました。あと、映像に精神的また身体的に追い込まれて変調をきたしている所が赤裸々に映し出されますので、そういうものを絶対に見たくない人は厳しいかもしれません。

アイドルとは

そのあたりの話から、現代のアイドルとはなんだろうかという私の考えとも一致するところがあります。

私の考える現代のアイドルとは「その『人』を見て良い」ということです。作品だけを見るのではなくて「人」を見ることが許される、これが今のアイドルだと思うのです。

その「人」の真の姿を見られるかという話ではありません。念のため。その人の素の姿であれ、演出された姿であれ、作品だけではなく「人」を見て好きになることが許されるということです。

その人の姿を見せる(真実であれ嘘であれ、多かれ少なかれ)ことがアイドルであるというのを、こういったドキュメンタリーシリーズを見ると再確認します。

フィクションは現実に勝てない

以前にこのnoteに朝井リョウさんの小説「武道館」の感想を書きましたが、この映画では同じような内容をもっとすさまじい姿で見せてきます。現実のアイドルの姿が演出だろうとなんだろうとドキュメンタリーとして出てくるときにフィクションでは「人」を見せるという点では足元にも及びません。

先週FNSドキュメンタリーで放送された、中年アイドルオタクの話もとてもフィクションがかなうものではありませんでした。

このnoteに「武道館」の感想を読みに来た人がいれば、ぜひこの乃木坂46のドキュメンタリーを見に行くことをお勧めします。興味深かった「悲しみの忘れ方」に沿う部分以外にも、素敵なシーンも満ち溢れていますので。人間が生きています。

映画だけをご覧になった方へ

映画はある程度、露悪的なつくりになっているので是非アイドルとしての本来の姿のほうにも目を向けて、そこで生きているのもアイドル、人間で苦しみだけじゃなくていろいろな面が当たり前だけどあることを知っていただきたいと思います。

ライブ映像、テレビ番組等是非彼女たちが出ているものをご覧になってみてください。

特に、「乃木坂って、どこ?」(~2015.4)という結成当時からやっていたバラエティ番組では、乃木坂の姿の移り変わりを表側から見ることができますのでお勧めです。DVDもでているので手に入れてもいいかもしれませんし、ごにょごにょな場所にも転がっております。この乃木坂の正史といっていい番組があっての、裏の乃木坂の歴史的な今回のドキュメンタリーですので。

もう一つ。取り上げられていなかったメンバーのほうが多いということです。そして、その1人1人が人間として生きて登場した人たちと同じように、また違う形でアイドルとして向き合っているということです。是非機会があれば彼女たちにも興味持ってみると面白いと思います。

乃木坂が好き

結局乃木坂46のメンバー達を人間として、好きだなあというのが個人的な感想です。私は自己啓発、自己変革的なものに苦手意識があるのですが、彼女たちが忘れたいものがあるということに表現者としての可能性を感じまた尊敬の念、愛着を覚えるのです。

イニシエーション的な段階を経ても、パーソナリティがすべて崩壊するわけではないのだなというそこに少しの安心感すら覚えました。だから、イニシエーションの段階を踏めずにある意味で逃げ出した松村さんは私にとってはアイドルを見る上で少し救いです。

そして、イニシエーションをセンターポジションを経験するということで通過した生駒さんが、グループに意見するシーンがあるのですがあのアドバイスや意見を受けるその立場に至っていないメンバーは相当の苦痛だろうなとも。でも生駒さんすごい人ですからね!

というわけで、乃木坂46の映画お勧めです!

結局アイドルの人生云々言っていても、恥ずかしながら私は「自分の人生考えろ」って突っ込まれて終わる話なので、一生懸命これから自分のことを悩んでみますね。30歳あたり悩む時期らしいので。それでは。

長文読んでくださりありがとうございました。

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