夢を追いかけるということ

 夢というか目標を常に持って生きなければいけないと思って今まで生きてきて、そして今もそう思っている。思っているだけで、考えるとそんなことはないことも解っている。夢とか目標とかなく生きてもいいのだ。

 小学生の卒業アルバムやタイムカプセルの作文に将来の夢を大工さん、棟梁になりたいと書いた。そして、中学時代は高校は工業高校の建築科にいくのだと中学一年から学校見学などに行って好きな学校を選んだ。公立だけど学圏としてはぎりぎりの遠さで自分の中学からそこに行く人は初めてというくらいの距離だった。建築勉強していた高校3年間は本当に楽しかった。図面を書いて賞をもらったりもした。

 高校を卒業するときにいろんな事情があって大工を諦めた。不景気だったので設計事務所に高卒求人がバイトでもでていない時期に、大卒以上と書かれているようなところでも連絡して門前払いたくさんされてバカにするなとか怒られたりとかしながらやっと構造設計事務所にバイトとして入った。2級建築士を取るまではけじめとして建築を続けようと思っていたから。建築士を取るには高卒だと3年は実務が必要なので。そして一発ではないけど2級建築士を取った。

 かなり設計事務所の勤務の自由度が高く高卒で入った時は850円だった時給も倍くらいまで上がり生活に困らないくらいにはお金もらえて、大きな事務所だったので物件も面白いものが多く飽きずに続けてしまったのだけど、30歳前になったときそろそろ何か決めなければいけないと思うようになった。目標を持たないで生きてはいけないという思いが常にあるからだと思う。それで、覚悟を決めて仕事以外の時間を勉強に当てて一級建築士を取った。

 一級建築士を取ったらバイトではなくもっと責任を負う立場で設計に携わらなければと思い転職して、小さい意匠設計事務所に入った。業務量が多いのはすごい勉強になったけど所長のパワハラがすごく結局辞めた。すぐ、また別の事務所で働き始めて今に至る。

 そこで自分は今なにを次にすれば良いかわからなくなっている所なのだ。大工から形は変わったけど建築で生きるという当初の夢は叶えたけど、仕事が向いていないように感じることが非常に多い。前職のパワハラのトラウマで時折仕事中に恐怖心に襲われて頭が痛くなったりもする。会社の中を見ても自分がこんな人になりたいという人がいない。そんな現在。

 おととい、自分の好きなAKB48のメンバー早坂つむぎちゃんがグループを卒業した。彼女は山形県の子でAKB48を好きになり、そしてAKB48に入った。12歳から16歳までの4年間をAKB48で過ごした。けれど、最後の1年くらいはかなりつらい時期で彼女を好きな僕もとても見ていて苦しかった。

 卒業発表で彼女は「ステージに立つのが怖くなった」と自分のことを冷静に分析しながら完璧な言葉で語った。とても寂しく思ったけれど、彼女の辛さをずっと見ていたからやっと解放されたとすごく安心した。最後の握手会の日、卒業のことはあまり話さなかったけど沢山話せて今までにないくらい彼女が晴れやかですごい嬉しかった。握手しながらこれから苦しいことじゃなくて楽しいことお互いに探しに行こうって話せて彼女もそう言っていて寂しくはあるけどとても幸せな気持ちで送り出せた。

 でも、好きなところの先で彼女が生きてもがいているのを見ながら自分を勝手に重ねて頑張っていたのだなとふと気づいてやる気が急に出なくなってしまった。気持ちはまだついていけないけれど、彼女を見ていたから上をめざすとか前を目指すとか売れるとかそういうものの空虚さを改めて噛みしめて自分の等身大の幸せや愛情を受けたり返したりの生き方が大事だなとすごい学んだ。夢や目標はその先のおまけだ。自分を捨てて夢や目標のために生きるよう関係ない人は求めてくる。会社でいえば上司とかもそうだ。

 彼女が卒業発表するちょっと前に家の近所で喫茶店で夜スナックになるというお店で月一ジャズライブをしている店に仕事帰りふと7年ぶりに寄ってみた。ママと久しぶりに会って昔の話をした。早坂つむぎちゃんの話もした。そこで思ったのがスナックという世界のすごさ。ずっと同じ常連客の小さい界隈だけで欲張らずに続いていく世界。そこに彼らの満足感があるとしたら自分もそういうものにしっかり気づきながら足りるようにもなりたいなと思った。

 早坂つむぎちゃんはAKB48の後にやりたいことがまだないみたいな感じで卒業発表時は言っていたけど、握手会よりあとの卒業直前に女優さんとか一からのチャレンジだけどやってみたいなと話していた。彼女の若さがとてもうらやましかった。

 自分も一旦、ずっと何かこのジャンルでやり続けなければ、目標を決めて追い続けなければという生き方から自由にされる日が来るだろうか。そこから自由になることはやってきた時間が長ければ長いほど怖くなる。はっきり言ってトップランナーの方々に届くとかは思っていないけれど、自分の力だと端くれにしがみつくだけでもとても一生懸命やらないといけないのだ。

 でも、楽しいこと僕も探しに行かなくちゃ。仕事じゃなくてもいいけど。そして楽しいこともう僕の手の中にあるならそれをきちんと感謝したい。

  昨日雨のパレードというバンドのライブに行ってきた。「shoes」という曲が刺さりすぎて泣いた。


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