エクシア合同会社の研究 その6
今回は、エクシア合同会社の会計について、考えてみよう。少々わかりにくい話かもしれないがお付き合いいただきたい。
エクシア合同会社の社員権を購入した者については、個別に社員資本持分管理表が作られる。
内容としては、資本金、資本剰余金、利益剰余金の形で管理される。
エクシア合同会社は、資本金については、会社設立以来、100万円のままであり、社員権を購入した者については、資本剰余金に全て計上されている。
Xが100万円を出資したとすると、
資本金 資本剰余金 利益剰余金
0円 100万円 0円
がスタートラインとなり、会社として利益を上げることがあれば、持分に応じて、利益剰余金に計上される。
通常事業を行い、利益を上げていたのであれば、利益剰余金の項目が増えているはずである。
エクシア合同会社は、2019年2月の一般社団法人フリードデスク主催(当時、同住所で大石武が代表取締役をしていた株式会社ノークリーが存在しており、大石武は、一般社団法人フリードデスクの代表理事でもあった。)で行われていたエクシア勉強会において、関戸直生人、北川悠介、大石武は、エクシア合同会社が海外法人に貸し付けを行い、その海外法人でFX取引を行い利益を上げ、その利益をエクシア合同会社は利息として受け取っていたと話していた(エクシア合同会社の研究その2、その3を参照)。
その利益率は以下の通りとされていた。
この言説が本当であれば、Xの社員資本持分管理表は、
資本金 資本剰余金 利益剰余金
0円 100万円 2017年であれば、53万6600円
となるはずである。
そして、その後も、上記利率に基づき利益剰余金が増えていくことなるはずであった。
出資者が、エクシア合同会社からお金を受け取る方法は、法的には、利益の配当(会社法621条1項)、出資の払戻し、持分の払戻しである。
エクシア合同会社のNo.2である関戸直生人は、2020年5月8日に直昌宏が主催するチーム直の勉強会において、「はい、でーありがとうございます。こちらーがーずっと過去の実績、2016年4月からの実績なんですが、えーこれですね、これもまたよく聞かれるのでお伝えしておくと、2016年4月、5月まあ8月辺りまで、利益がすごく大きかったんです、もう月間で37%出たりとか、15%出たりとか、これお客様への配当実績なんですけれども、でーこちらですね、この配当高く出た理由なんですけど、今ご出資いただく資金を今三か所に投資をしてますが、この三か所に全部のお金を投資をしているわけではないです。余らせてるお金もあるんですが、でーなんですけれど、この最初の頃ってのは特にそういったことはあんまり考えずに、あのー余らせとくお金もほとんどのお金も全部ぼんって投資して全部運用してもらってたっていうような状態でした。なので、で、2016年9月頃からそれでやってると仮にですけど、今月全部お金なくなっちゃうってことも有り得たので、えーちょっとリスク高すぎるしこわいねっていう状況になって、2016年の9月以降は基本的に一か所に投資する資金の割合を決めようってことにしました。なので、資金を限定し始めたのでそれ以降はあのー大体近しい数字だと思うんですけど、月間で多分平均すると大体3%前後くらいだと思います。で、実際コロナの影響を受けた先月、先々月の3月の結果がお客様への配当ですね、5.4%でしたので、3月は結構大きかったです。その前の月は2.50でその前の月は2.54とかですね。とかっていう状態ですがー、こちらがお客様への配当実績ですね。で、またよく言われるんですがうちの会社は運用はしてないんですが、うちの会社のこの配当っていう数字、本当にどうあっているのかどうか、利益出ているのとかっていうのがよく言われるんですが、さきほどからお伝えしているように、うちの会社にご出資をいただいた資金があって、それをうちらいろんなところに投資をしていて、その結果うちの会社が儲かったら配当出すよ、というのがお客様が得ている利益です。お客様の配当、所得を得てもらうんですけども、この配当、うちが何%っているのはうちが勝手に決めて発表しているわけではないです。というのも、配当っていうのはですね、会社がどれだけ儲かったかてものがないと配当出せないので。で、会社がどれだけ儲かったかっていうのはうちの税理士先生が3人がかりで、えーしかもホームページにお名前も出して、発表してくださっていますので。で、これが実際あのーこの何%っていう数字が勝手に僕らが伝えてる数字、ま、虚偽の数字をやってるとすると、あのー会社の決算がもうできなくなります。で、決算やれないと配当だせないので。って状態なので、こちらみなさんよくお考えいただいて、ご理解いただけたらと思いますけれども。でーこういった配当が出てるの年間で多分30から40、30から50%とかの間かな?と思いますが、利益が出ているかと思います。」と述べている(https://www.nicovideo.jp/watch/sm41090753)。
この発言は、明確に、エクシア合同会社が出した利益を出資者に配当していると述べているものである。
また、株式会社ノークリーの代表取締役、一般社団法人フリードデスクの代表理事であった大石武は、クラブアルケミスタのエクシア勉強会(2019年2月開催)において、「出た利益ありますよね。それって例えば10%利益出ましたよってなると、投資家さんとエクシアまあジャパン、エクシアプライベートリミテッドの方が半分いただいてエクシアグループが半分いただいて皆さんの方が半分、えーまあ利益反映させていただいてっていう形になるんで5%5%って形なってると思うんですけど、これエクシアの取分からまあ社員に給料がでてるわけですよね。で社員はもう菊地さんと面接を経て、社員という形で入らせていただいてるんですけど、この5%のうちえー実際にあの話合いの中で僕も現状でえーまあお給料いただけますかっていただけてるパーセントをここのメンバーだけに発表しますね、ゆうとえーこの5%分のえー1.5くらいもらってます。なのでえー全体の15%くらいですか。こっちエクシアの取分からいうと30%くらいですか。ってことですね。をもらいます。でこれを、えーまあ窓口対応させていただいているので、ご紹介いただいた方とわけてくって感じですね。」と述べ、出た利益を出資者とエクシア合同会社で折半していると述べている。
なお、大石武は、エクシア合同会社のアシスタントヴァイスプレジデント(2019年8月時点のエクシア合同会社のホームページで確認)であった人物である(https://web.archive.org/web/20190829002526/https://exiallc.jp/)。
そして、既に示した株式会社ノークリーの小林昌平が勧誘資料として用いた運用実績一覧においては、明確に「運用実績」・「利益率」と記載していた。
勧誘時に上記のような説明がなされ、上記のような勧誘資料が示されていたのであるから、当然、出資者においては、毎月出される返戻率を、出資金に対する運用利率、また、評価額として増えた分については、利益の分配を受けていると認識し、出金したお金については利益の配当と認識していた。
エクシア合同会社は、出資者に送るメールにおいては、「契約日、返戻率、出資金額、社員権評価額」を掲載し、評価額については、2021年末の段階では、メールでの出金申請が可能であった。その際には、出資者は、エクシア合同会社に単に出金したい額を伝え、それにエクシア合同会社が応じるというものであった。出資金部分について引き出したい場合は、出資者は出資金解約を申し出て、部分解約であっても、エクシア合同会社に対して退社申出書の提出が求められた。その際に、評価額(利益のこと)が部分解約する出資金に紐づいてあれば、未解約の評価額に加算されるという説明がされていた。
エクシア合同会社は、出資者とのやりとりにおいて従前のメールでのやりとりではなく、マイページという出資者が出金申請や退社申請が表面上はできるウェブサイトを2022年5月13日に作成した(この時点では既に出金停止について騒がれるようになっていた)。そこでは、当初は、資産の状況の項目が「出資金合計金額」、「現在出金申請可能額」という表記になっていた。「現在出金申請可能額」には、利益にあたる部分が表記されていた。
そのインターフェース上では、利益部分については「出金」で対応し、出資金部分については、「退社」申請する形になっていた。
ホームページ上の表記は、現在においては、資産状況の項目は、「現在評価額」、「出資額合計」と記載し、「現在評価額」は、それまでの「現在出金申請可能額」と「出資金合計金額」の合計金額が記載されている。また、「出金」という項目がなくなり、「出資の払戻」が代わりに置かれた。
このホームページ上の表記の変化は、この後説明するエクシア合同会社のロジックの変化に基づく。
エクシア合同会社は、利益の配当については、
という姿勢を現在示している。出金申請可能額として、外部に示していた利益部分の引き出しについては、それは、「利益の配当」ではなく、出資の払戻し(エクシア合同会社はそれを「期中払戻」と表現する)とするのである。
合同会社は、利益の配当額が利益額を超える場合には、利益の配当をすることができない(会社法628条)。
この利益額というのは、基本的に利益の配当をした日における利益剰余金の額をいう(会社計算規則163条)。合同会社においては、資本剰余金は配当財源にはならない。
この点、エクシアは、出資の払戻し、持分の払戻しについては資本剰余金からしていたと言明している。
出資の払戻しについての財源は、社員が既に出資として払込みまたは給付した財産に限定される。利益の配当と異なり、利益剰余金を財源とすることはできない。
出資の払戻は、出資払戻額が、資本剰余金額または定款の変更により出資の価額を減少した額のいずれか少ない額を超える場合には、その出資の払戻は認められない。
しかし、エクシア合同会社が行っていた出資者への金銭の払い出しの2021年末2022年初頭の実例では、出金と出資金の解約は別に扱われていた。出金では、「現在出金申請可能額」(利益部分と評価できるもの)のみを財源としたのだ。このため、出金の場合は、「出資金合計金額」(資本剰余金)は財源とされずに、「出資金合計金額」は維持されたままとなっていた。
文字だけだとわかりにくいので、また事例で考えていこう。
Yが500万円出資したとしよう。
資本金 資本剰余金 利益剰余金
0 500万円 0
年利30%だとして、1年後には評価額が650万円になっている。
本来であれば、その際には、Yの社員資本持分管理表は、
資本金 資本剰余金 利益剰余金
0 500万円 150万円
となっているべきである。
その出資者がかりに90万円を引き出したいとしよう。
その場合、エクシア合同会社が出資の払戻しとするならば、資本剰余金から90万円を減じることになる。
資本金 資本剰余金 利益剰余金
0 410万円 ?
しかし、このような取り扱いはせずに、90万円が払いだされた後もエクシア合同会社は、
資本金 資本剰余金 利益剰余金
0 500万円 ?
といった取り扱いをしていたのである。エクシア合同会社は、利益剰余金を財源としたことはないと言明していることから、そうなれば、他の出資者の資本剰余金を財源としていたにほかならない。上記会計的取り扱いからすれば、出資の払戻し、持分の払戻し(退社)のいずれでもないため、利益の配当をしたと本来は評価せざるをえない。利益の配当をしたと言えないのは、社員資本持分管理表上の利益剰余金の部分を財源とできるほど利益を上げられていなかったからであろう。
このようにエクシア合同会社は説明するが、上記の通り、エクシア合同会社は、ある者への利益を払い出す際には、他者の資本剰余金を財源として支払いを続けていたのである。
エクシア合同会社は、出資者において、利益を得た者がいたことについて、現在、
と述べる。これは、エクシア合同会社においては、退社時の払戻金額において、時価評価額としていたから、出資金額よりも多く受け取る人がいたという説明だ。この説明は、エクシア合同会社が出資の払戻し、退社の2種類しか出資者がエクシア合同会社から利益を受けるとることができないというロジックを立てたため、出資金額しか払戻しを受けることができない出資の払い戻しでは、利益部分の説明がつかず、退社の部分において、その説明をつけようとするものだ。
しかし、実態は、エクシア合同会社は、期中に実質利益の配当としか評価できない支払いをしていたのであり、上記説明は明らかに事実に反する。
エクシア合同会社は、利益の配当としてしまうと利益剰余金の話になり、これまで公開していた決算書上の利益の少なさから説明が困難となり、出資者への金銭の払い出しについて、出資の払戻し、持分の払戻しとして財源の説明の困難さから逃れようとしたが、既に説明したとおり、エクシア合同会社が実際に行っていた実例から他者の資本剰余金を財源としていた事実があぶりだされ、また、利益の配当と評価された場合は、それは、法的に別途問題が生じることになるというジレンマが存在するのだ。
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