【その22】うちのスタッフのこと

今日は薬剤師国家試験の合格発表でした。
今年度は3名、受けたみんな無事に合格しました。よかった。
これから新しい社会人生活が始まっていくんだなぁと。たくさん経験して、たくさん苦労して、素敵なおとなになっていってほしい。

わたしは最後の最後まで成績が極めて芳しくなく、合格ラインに+3点くらいのギリッギリを攻めて合格しましたが、その分喜びは本当にエグかったことを覚えています。ギリッッッギリだからもう落ちる想定してたもんね。あんな爆発的に嬉しいこと人生でなかなかないもんな。またあの興奮を味わいたいものです。


今日うちのスタッフが一人卒業していきました。
2年前に国家試験に合格したのがつい最近のことみたいだ。
元実習生で、実習中から仲良くさせてもらっていて、歳の離れた後輩というより友達のような感じでした。
彼女の入社当時、うちの薬局は在宅医療のキャパが限界寸前で、わたしが実務と会社としての運営をほとんどやっていて、子どもがまだ0歳で、家にいる時間がなくて、妻の育児負担が重くて。自分もけっこう限界で。
家族経営もそれはそれで都合がいい部分もあったけれど、それを脱却しようと思って初めて入社したのが彼女でした。
だから最初はルールなんかなくて、税理士さんの手を借りながら居心地が良くなるよう良い待遇、良い環境にしたいと思っていて。
こんな自営業の薬局で最初から働いたら社会人的な研修もなくて不安だろうと他社さんの研修に参加してもらったり、とにかく入社してよかったと思ってもらえたら、って。

なにしろマンパワーが圧倒的に足りないので、最初は調剤してもらえるだけで感謝感謝で。
そして入社して半年くらいで急遽父が引退して、ゆっくり育っていけたらと思っていたのが急ピッチで業務をこなさないといけなくなって。


入社当時からずっと、周りの会社やいろいろな薬局を見た方がいいんじゃないか、もっと人手が多くて研修担当もいて、同期もいて、同世代と比べてしまって焦ったりしながら働かなくていいのかな、とわたしは思っていて。自分がそういう環境でやってきていたから。うちみたいなところで働いて、彼女の薬剤師人生にとってそれは良いことなのか全然自信が持てなくて。
でも薬局にいてくれないともう成り立たないから、せめて居心地が良かったり待遇を良くしていくしかできないな、って。

昨年になって他のスタッフさんも入ってきて、歳の近い事務さんも入社して。
居心地がもっと良くなって気付いたのは、薬局にとっては恩人だけれど、やっぱりまだ薬剤師歴の浅い新入社員だからこそ厳しい環境でやった方がいいんじゃないか、って。
そのチョイスができるのはもしかして今しかないんじゃないか、って。

わたしは彼女にタカハシ薬局を良くしてもらったけれど、わたしは彼女が良い薬剤師になれる手伝いができたんだろうかと思うと、
自分の管理者としての無力さと、責任を負う立場としての不甲斐なさと、大切な20代の人生を預かる先輩として本当にもう何も言えないな、って。
だからせめて反面教師でもなんでもいいから、この後働き始めたときに転職して良かったって心から思って欲しいし、なんの関係性もない薬局で一から始めて、本当の意味で良い環境を作っていってほしい。

仲が本当に良かったんですよ。
だから明日から小姑みたいにやることに苦言を呈する必要もなくなってホッとしていて、そしてもう目の前で成長を感じられることがなくなったことが本当に悲しい。
本当に実感するのはこの先なんだろうな。


わたしはMRからスタートした社会人人生で、メンタルやられて早々にドロップアウトしたのですが、辞める報告をした前任者の先輩に、
「どんな理由であっても転職して新しい生活をスタートするんだから、前を向いてがんばれ、再スタートおめでとう」と言われた言葉を本当に大切にしていて。
やめるのはまた始めることで、おめでとうなんだ、って。

でもどちらかというとわたしが再スタートするくらいの気持ちで、卒業したスタッフはあんな薬局辞めて良かったぜ!と言えるくらいでちょうどいいような気もするのですが。
でも、頑張ってほしい。もう祈ることしかできないから。

とはいえ、数ヶ月後にまた元気に飲み会に呼べるくらい自分も頑張りたいと思います。
さすがに感傷がエグい今日でした。

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