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【TAKAHAMA力】

「方法を場所に押し付けない,場所から方法を見つけ出す」

建築家,吉阪隆正の言葉です.建築・まちづくりに関わる者として,いつも大切にしている言葉です.


 はじめまして,地域外研究員の下田と申します.

日本で1番漁村に詳しい学者(訓読み希望)を目指し,
全国津々浦々(津:港の意,浦:漁村の意)の漁村を訪ねながら,建築・まちづくりの視点から調査・研究を行っています.

(高浜町には過去に4回,お邪魔させてもらっています)

 今回のnoteは地域外から見た高浜町の漁村(すみません,一部の漁村を除き),その3つの「恵まれポイント」について(勝手ながら)書いてみたいと思います.

※ちなみに,これらの内容は,地域内の皆さんに気を使っているわけではなく,
お世辞でもなく,これまで300を超える漁村を見てきた専門家としての意見である事を付記しておきます.


 ■恵まれポイント1:【交通インフラ力】
 僕から見ると,これほど交通インフラに恵まれた漁村を持つ町は全国的にみて珍しく,まちづくり的には優位性しかありません.

  1.駅が存在すること
  2.駅から徒歩圏で漁村・海まで行けること
  3.国道(27号線)が存在していること
 4.町内にインターチェンジが存在すること
 
日本の多くの漁村は陸の孤島に立地し,交通の便が極めて悪い場合が多いです.
町の皆さんにとっては当たり前かもしれませんが,海と町と交通インフラの距離が近い関係性で成立している高浜町はシンプルにとても恵まれていると言えます.
まちづくりの観点から見ると来訪者が「立ち寄れるコトのできる町」であり,「立ち寄り続けるコトのできる町」,その環境が整っていると言えます.

 まちづくりへの展開としても,アイデアやコンテンツを考えるとき,交通インフラを生かした想像の射程距離で議論してみたくなるし,色々とアイデアも湧いてきますね.
繰り返しますが,これは当たり前の事ではなく,漁村の視点だけでなくアイデアを運用していく時,交通インフラ力は「まちづくりの梃子」としての高いポテンシャルを持っています.


 ■恵まれポイント2:【道の潜在力】

高浜町は,南から北の順番に国道27号線,旧丹後街道が平行に東西に通っています.そして,旧丹後街道の北側に漁村が位置します.
道の構成で見てみると南から北に向け「国道→旧街道→路地」と言う3層構造で成り立っており,道のグラデーションを楽しみながら歩くことができます.

路地の魅力を最大限に生かした「路地祭」(行きたい!)など,既に魅力的な取り組みも存在しますね.

 さて,高浜を訪れた際に,もう1つ「道」があったら良いなと思ったことがあります(3層構造から4層構造へ!).

もう1つは,「海の道」です.

漁村間,ビーチ間を船で移動できる道です.海岸線が様々な角度を持った地形である高浜ならではの,海から見る町の風景にも大いに期待できるだけでなく,一次産業を活用した観光資源への展開も期待できるかもしれません.
少し妄想アイデアが入りましたが,

まずは,道の3層構造を貫く南北の海まで続く道の魅力を何かしらの面白い仕掛けで,魅力的にしていくことが先決かもしれません.とにかく,旧街道も含め,道のバリエーションが豊富で近い位置関係で立地していることは大変魅力的であり,まちづくりアイデアを展開する上でも有効過ぎる要素だと感じます.


 ■恵まれポイント3:【無形力】
 無形とは,字のごとく形を持たないことを意味します.
 ここで言う無形力は,人の繋がりの強度を指し,お金では計れない価値を地域内で共有していることを言います.


写真(2020年9月6日)は,神輿の足洗いの際に撮影した一枚です.コロナ禍での神事が青葉山を背景に行われた一枚です.

「祭りが元気なところは,生業も元気」と,ローカルまちづくりの1つの標語としてよく言われます.


この神事を拝見させてもらったとき,他地域の人からは,見えない地域固有の繋がりの中が,多世代に渡って存在しているのを目の当たりにしました.時にそれは,しがらみとなり,物事を決めていく時,新たな動きに対し不合理な側面もあるかもしれません.
しかし,祭りや地域内行事やお役など,地域の習慣・慣習にもとづく人の繋がりは,イコール地域の持続力を担保する仕組みであることは事実です.


さらに,先祖代々受け継いできた土地や地蔵尊,井戸なども含め,現代の経済合理性と比べることの出来ない価値体系を地域で受け継いだ暮らしを拝見する場面も多くありました.この地域内の繋がり,そして,地域内外の新たな繋がりの素地が形成しつつあることに,大変な可能性を感じています.
ここで言う可能性は,何の可能性かはうまく言葉に出来ないし,まだ分かりません(苦笑).

しかし,これまで見てきた面白いまちづくりの展開がなされている所に共通する「無形力(人の繋がりとお金じゃない豊かさの価値共有)」が明日研には存在しています.

 ■「無形力」から「明日力」へ

無形力が地域を動かしていく原動力になっていくことは間違いありません.
断片的ではありますが,明日研の皆さんとお話しする機会を通して,目的を持ちながらもある意味心持ちとして


「無目的を目的に,目の前の事を楽しみながら」

活動を進めている姿をとても羨ましく,とても力強く感じています.
その理由は,冒頭に書いた「方法を場所に押し付けない,場所から方法を見つけ出す」,まさにその実践を行なっているからこその魅力だと感じています.「3つの恵まれポイント」を通して,高浜漁村には,いや,高浜町には,まちづくり潜在力が強く存在していることが伝わればと願いながら,書かせていただきました.


 最後に,明日研は,(勝手ながら)組織化すべき!だと(個人的に)感じています.(もちろん,地域内の理解やタイミングなども踏まえて)
地域の承認を得て,活動を担保するための「仕組みと仕掛け」は,組織化を伴って行うことが有効だと考えています.
無形力が明日を楽しみことの輪を広げていく事を期待しながら,混ぜてもらいたい遠方研究員のひとり言でした.

長文を失礼しました.

 (小屋飲みしたいです….) 

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