種子法改正案は日本の食を外国企業に売る悪法

安田節子さんのたんぽぽ舎への投稿(2020年7月18日TMM:3987のコピーです。

農家の自家増殖を禁止する種苗法改定は批判の高まりで今国会での審議
は見送られ次期国会に持ち越されました。
 種苗法は新品種(登録品種)の育成者の知的財産権を守るための法律です。
 品種登録して育成者権を取得すると登録品種の種苗、収穫物、加工品の
販売等を一定期間独占できます。
 登録品種は育成者権者の許諾を得なければ利用することはできません。
ただし、農家が自分の農地で再生産するための自家増殖は例外として認め
られ、育成者の権利は及ばなかったのです。

○ところが改定案はこれを180度転換し農家の自家増殖を禁止としたのです。
農家は育成者権者に許諾料を支払って許諾を毎年得るか、許諾が得られな
ければ毎年全ての苗を購入しなければならなくなります。
 さらに収穫物や加工品の売り上げにも対価が求められる可能性がありま
す。侵害したと判定されると10年以下の懲役または1000万円以下の罰金と
する重罰が法案に盛り込まれました。

 これまでにシャインマスカットやサクランボ、いちごなどの優良品種が
海外流出して問題になっており、これを防止するのが改定の目的とされて
います。
 しかし、農家の自家増殖を禁止すれば海外流出が防げるのでしょうか。
 なにより農水省自身がHPで「種苗などの国外への持ち出しを物理的に
防止することは困難」であるとし、「海外において品種登録を行うことが
唯一の対策」と記載しています。
 育成者権は、国ごとに取得する必要があり、品種登録していない国では
育成者権は主張できないからです。

 海外流出防止というのは後付けで、本当の狙いは農家の種取りの権利を
剥奪することにあると思われます。
日米貿易交渉のもと、規制改革推進会議を窓口として米国の多国籍企業の
ために日本の岩盤規制が次々と撤廃されています。
 これまでに「種子法廃止」(2018年4月)で日本のコメ、麦、大豆の公
的種子事業を止めさせ、「農業競争力強化支援法」(2017年8月)で農業
試験場が持つコメなどの遺伝子資源(種苗)や育種技術を企業に移転させ、
そしてとどめが農家の自家増殖禁止なのです。
 これで公的種子や農家の手にある種子を企業の種子にすべて置き換える
ことができるのです。
 今後、多国籍種子企業が日本で品種登録し、高額な許諾料を設定する事
態が頻発しかねません。それは農家の大きな負担になり、日本の農業衰退
に拍車がかかります。

○多国籍種子企業は現在ゲノム編集種子に力を入れています。日本は規制
なしの流通を認めたのですが、彼らが日本に乗り込んで高い利益を得るの
にネックなのが農家の自家増殖容認です。彼らの自家増殖禁止の要求が今
回の種苗法改定の背景にあるのかもしれません。
 農水省は、登録品種は10%ほどで90%は一般品種で今まで通り自由に種
取りできると説明しますが、企業が主体になれば登録品種は増大すること
必至です。また、野菜類は8割が種取できないF1種で、毎年農家は購入
せざるを得ない種子なのです。

 特に心配なのはコメなど穀物です。欧米では主要穀物は農家の自家増殖
を認めています。日本のように穀物までも企業に明け渡し、一律に自家増
殖を禁止するような国はありません。
 気候変動やコロナ禍による食料輸出制限が起きる世界において、多国籍
種子企業の限られた品種に依存するのは食料安全保障をあきらめることな
のです。
 種を握る者が食料生産を左右し、農家の手に種がなければ、国家の独立
も危うくなるのです。
 種苗法改定は廃案にしなければなりません。
  (全国商工新聞2020年6月15日「視点」農家の自家増殖禁ずる種苗法
  改定から転載)

 ※編集部より:安田節子さんには、これから月1回のペースで寄稿して
 いただくことになりました。ご期待下さい。

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