【アニメ解説】「デジモンフロンティア」~コンセプトを根本からひっくり返して本末転倒した迷作~

 ある日、某大手玩具メーカーBンダイの通販サイトで「デジモンフロンティア」のグッズが販売されるという情報を目にする私。

 ……ああ。懐かしい……。
 私は小学、中学時代、デジモンシリーズが大好きだった。
 毎週日曜朝9時に放送され、楽しみにしていたんだよな……と懐かしさに浸る反面、このデジモンフロンティアについて、私はなんとも言えない複雑な気持ちになる……。


【解説】
「デジモンフロンティア」(2002年~2003年 フジテレビ系列 東映アニメーション)
原作 本郷あきよし
シリーズディレクター 貝澤幸男
シリーズ構成 富田祐弘
キャラクターデザイン 中鶴勝祥
声の出演 竹内順子、神谷浩史、石毛佐知、天田真人、渡辺久美子、鈴村健一、杉山佳寿子、菊池正美


 ……ハッキリ言ってしまうと、このデジモンフロンティアはデジモンアドベンチャーから始まったアニメデジモンシリーズを一時撤退させた問題作なのである。

 まず、『デジモン』とは『デジタルモンスター』の略で、90年代に大ブームを起こした「たまごっち」にバトル要素を加えた感じで1997年に発売されました(たぶん、N天堂の某ポ〇ットモ〇スターに対抗してBンダイが製作したと思います)。
 4000円ほどの価格で買えるチョコボールの箱一個ぐらいのサイズの携帯ゲームで、デジタルモンスター(略してデジモン)をリアルタイムで育成。プレイヤーの育成方法によってデジモンは様々な姿に成長(進化)し、自分の育てたデジモンを他のプレイヤーのデジモンと戦わせるという携帯ゲームでした。
 このゲーム性がウケたのか、デジモンはヒット。アニメ化へ。

 一作目の「デジモンアドベンチャー」(1999年)は、90年代を代表する名作アニメとして語り継がれるほどの大人気を博しました。
 少年少女たちが異世界に行きに、そこで出会ったデジモンたちと友情を育み、冒険するというストーリー。今で言う異世界モノの走りだったかもしれません。
 主人公達にはそれぞれパートナーのデジモンが居て、敵が現れてピンチになるとデジモンが一時的にパワーアップする『進化』をして戦うという展開は変身ヒーロー物のような要素があり、主人公たちもデジモンも個性豊かで共感しやすいキャラクターたちが多かったので、男女と共に人気があり、幅広い層から人気を集めました。
 元々は4クールだけの放送予定だったのが延長し、そのまま続編が決定という異例の人気の記録。

 さらに日本を代表するアニメ監督の一人、細田守監督がこの作品に携わっており、その細田監督が担当した劇場版もヒット。映画通も唸るほど高い評価を得ています。


 デジモンアドベンチャーの直接的な続編として、デジモンアドベンチャー02(2000年)がスタート。
 前作以上にボリュームアップしましたが、やはり前作の壁を超えられなかったのか、本作でアドベンチャーシリーズは完結します。


 ですが、デジモンシリーズ人気は衰えなかったのか、三作目で登場人物と世界観を一新。
 ウルトラマンティガ、ウルトラマンガイアの脚本を担当し、クトゥルフ神話研究家でもある小中千昭さんをメインライターに置いた「デジモンテイマーズ」(2001年)が三作目としてスタート。
 前作までのファンタジー要素は薄くなり、「現実にデジモンが現れたらどうなるか?」をロジカルに徹底的に描いたリアル路線になります。
 クトゥルフ神話的なホラー描写があったり、やや鬱展開になったり、未知の生命体との戦いになったりと、ちょっとハードで難解な作品でした(面白かったんですが)。

 デジモンテイマーズはコアなアニメファンには人気でしたが、あまりの難解さに従来のターゲットである少年少女たちがついていけなかったようで賛否両論に。
 こうして、デジモンシリーズの人気は作品を重ねるごとに地盤沈下していったのです。


 そのため、4作目となる「デジモンフロンティア」では、とんでもないことになります……。

 なんと、主人公達が直接デジモンに変身します……。

 デジモンシリーズの基本コンセプトである「少年少女とデジモンの絆」をぶっ壊して、ただの変身ヒーローモノにしたのです……。
 リアルタイム時、「東〇は正気か?」とマジで思いました。


 なんで、こんなことになったかと言うと、雑誌などでプロデューサー本人が言っていた発言と、私の推測ですが……。

・デジモンが戦っている時、主人公たちはなにもしないのでわかりやすく主人公たち本人を戦わせたかった。

・前作がリアル路線だったんで、初代みたいなファンタジー物に回帰したかったが、普通に原点回帰しても初代には敵わないので主人公たちを直接デジモンに変身させることにした。


 ……など、制作サイドでいろんな考えがあったんでしょうけど、モンスターバトルというジャンルの作品なのに、主人公たち本人が変身してしまったら本末転倒である……。


 当然ですが、この主人公たちがデジモンに変身するというコンセプトに拒否反応を感じた人々が多かったのか、視聴者がかなり離れました。
 ちなみに肝心のストーリーは……は、はい……(苦笑い)

 以上の理由があってか、デジモンフロンティアは記録的な不振を出し、東映アニメフェア(東映制作のアニメ作品数作をセットにして劇場公開する形式)で劇場版デジモンフロンティアが公開されても観客動員数が前作と比べると大幅に激減。
 私もデジモンフロンティアの劇場版を公開2日目に観に行きましたが、私を含めて劇場内に3人しかいませんでした……。

 マジでビックリしたなぁ……。

 この劇場版デジモンフロンティアの興行成績が記録的にヤバかったらしく、ニュースにもなり、東映アニメフェアがこの作品で廃止になりました……。
※ちなみに同時上映がキン〇マン二世、ク〇ッシュギアで、ワ〇ピースなどの人気アニメがラインナップされてなかったことと、さらに毎年ラインナップされていたおじゃ魔女ドレミシリーズの放送が終了したため、女児客が来なかったのも不振の原因の一つと言われている。


 これにより、フロンティアでアニメデジモンシリーズは一時終了。デジモンフロンティアの後番組に、金色のガッシュのアニメ版が始まったのです。
 フロンティア放送終了後の何年後かにデジモンのTVアニメシリーズが復活。それからは、ブランクを挟みつつ新作アニメシリーズがTV放送されるようになり、さらに初代のデジモンアドベンチャーの続編が劇場公開されたりと、一応デジモンのアニメ展開は未だに続いてはいます。
 その辺はまあ、話が脱線するし、長くなるんで割愛……。


 日曜朝に毎週放送されているスーパー戦隊、仮面ライダー、プリキュアは初期の頃は毎年打ち切りと隣り合わせだったそうですが、いろいろ試行錯誤し、なんとか安定期を手に入れ、毎年新作がTV放送されるようになりました。
 ですが、その一方……このデジモンシリーズのように記録的なヒットを出してシリーズ化させたのに、新作を作るたびに軸がぶれてしまい、本質的なテーマから大幅に外れた試みをして、シリーズを衰退させてしまった作品もあるのです……。

 なので、デジモンアニメシリーズは、もし戦隊、ライダー、プリキュアが本質的なテーマを見誤って変な方向にぶっ飛んだら、こうなってしまう……というifを体現した作品だったのではないのでしょうか?



 さすがに問題点ばかり挙げるのもアレなので、一応、デジモンフロンティアという作品の良い点を挙げると……。

・デジモンというフィルター抜きで観れば、戦隊シリーズのアニメ版として楽しめるのでは?
 実際、敵幹部の一人が実は主人公達の仲間の一人の弟だったという展開があり、この兄弟対決は見ごたえがあった。


・デジモンがいない分、人間関係が深く描かれていた。
 6人の少年少女の成長劇でもあり、他の作品のキャラはデジモンという相棒がいたおかげで成長したって部分もあったが、本作では自分の力で成長していく形になっている。


・ヒロインのデジモンへの変身シーンがエッチだった。
 変身後もちょっとエッチな姿だった。


 以上(綺麗に締めろよ)

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