新版 子どもの行動変容 9章を読んで

とても古い本です。初版は1988年のようですね。しかし、初学者である私にとって、大切なことを教えてくれる良本だと思っています。

その中から9章、「オペラント学習の留意点」について書いていきたいと思います。

この章はガードナーという人が作った行動アプローチがうまくいっているかを調べるためのTPSという尺度についてと、著者が実践する展開上の留意点についての2点について書かれています。

TPSについては、大まかには、標的行動の決定と進め方について、以下の4つのサブカテゴリーに分けて記載されています。

1.形成→標的行動の選定とステップの踏み方
2.強化→強化子の選定と段階的な連続強化から間欠強化への移行
3.意思伝達→教示の仕方と言語や身体のプロンプトを減らすこと
4.ラポート→行動変容に入る前にそもそも親密になるなど関係性を作っておくこと、丁寧に接すること

がそれぞれいくつかの項目に分けて書いてありますね。行動分析を実施するための必要な要素がわかりやすく書かれています。素晴らしい。

特に、4のラポート。当たり前なんですが、まずは信頼関係を作る、築くのが基本。これがないと、来所することがそもそも強化子にならないので、失敗しますね。後は、その子の生育史含めた環境刺激の問題で、来所が強化子にならないこともあるにはあります。この場合、自分の責任にしすぎないこと、そもそもきちんと自分の力で支援ができるのかをその子の置かれている状況も含めて考えておくことが大事なことかなと思いました。

次に、著者の実践の中から留意点が7つの項目に分けて書かれていて、私が感銘を受けたのは1でした。

7まで抜き出して、書いてみると、

「1.関係するスタッフたちの、行動変容計画への理解や態度が適切であること
2.行動変容の目的を明確にすること
3.行動変容の手続きを適切に選択する
4.強化刺激を適切に識別する
5.行動変容の計画をきちんと作成すること
6.結果の客観的な表示を心がけること
7.全般的に注意する事項」
となっています。どれも行動変容、行動分析には大事な要素だと思いますし、なかなかすべてを言語化して、記述をして、というのは現場にいると難しく、暗黙の了解のようになっているように感じます。

その中でも、1はかなり大事なことです。
私は教育・児童福祉領域で働いていますが、他職種の方もいるので、それぞれがそれぞれの理念のもと関わりを子どもとすると、統制がなかなか難しい。教職の立場か、心理支援の立場かでアプローチが随分違うように感じます。

私自身は秩序やルールはともかく、まずは楽しんで取り組めることからスタートさせますが、ある人はもっと秩序を重んじながらという人もいますね。どれが正解かはないですが、方向性が一致していないと、介入がバラけて、結果的にお子さんにいい影響はないので、コンセンサスはとっておきたいところです。

加えて、保護者の方々にも理解を促しておくことも大事なことですね。せっかく介入して支援者との間では標的行動ができるようになっても、保護者の方が介入と正反対のことをお子さんに言って、水の泡になるのを割とよく目にします。

決して保護者の方々が悪いわけではなく、一生懸命お子さんのために、しつけだから、親だからと、頑張ってしまうんですよね。もう少し肩の力を抜いても…と説明することもしばしばありますね。

さてさて、もう終わりにいたしますが、行動分析のやり方を簡潔にこの9章ではまとめてくれていました。本当に気づきの多い良本です。

ただ、少し機械的過ぎる印象に見えるのが、行動分析の欠点かなあとかも感じました。

古い本なので、レスポンデントがリスポンデントになってたり、言葉が古めかしいのも少し難点かもしれないなぁ。

ああ、後、つくづく説明する力がない、文才がない…

文献は
東 正(1987) 子どもの行動変容 行動分析の方法とオペラント入門,川島書店

でした。

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