この部屋で

この部屋で
あたりを飛び交う考えを
一つにまとめようとしている
コップをひっくり返して
部屋中に散らばった真っ白いミルクを
一滴ずつ拭うように

僕のこの存在を
ドアの外に漏らさないように
この部屋にある
あらゆる動きを凍らせている

隣の居間では
柔らかな会話がなされてる
もしかしたら
こうなったのかもしれないと
頭の中で仮定する
自分の手で
ドアを施錠してしまったことから
僕はこの部屋から出ることを
本当は望んではいなかった

この疎外感は
この孤独は
この静けさは
かつての自分が生み出したものだったとしたら

この鎖の先は
自分の中へと続いている
闇の奥へと無限に伸びていき
たとえ一生を費やしても
たどり着けない場所のように

ひっくり返った天地の間に
飛び交う真っ白い意識のかけら
僕は明かりの漏れる方へと行かないようにした
明かりの漏れる扉を
絶対に開けないようにした

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