働かないアリ、集団存続には必要 「一見無駄」は短期的

働かないアリ、集団存続には必要
「一見無駄」は短期的

以下は共同通信のニュースの全文です
(http://this.kiji.is/72272370068375029)

アリの集団は常に全ての個体が働くより、働かないアリがいた方が長く存続できることを、北海道大大学院農学研究院の長谷川英祐准教授の研究チームが突き止め16日、英科学誌電子版に発表した。働き者のアリが疲れて休んだ時、怠け者とみられていたアリが代わりに働くためという。長谷川准教授は「一見無駄な働かないアリも、集団の長期的存続には欠かせない。人間も含め、短期的効率を求めすぎると、組織が大きなダメージを受けることがある」と指摘している。

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さて、共同通信の記事が短すぎてよくわからなかったので、元論文を読んできました。この研究成果はnatureの姉妹誌であるscientific reportsに掲載されています。(open誌です)
一応引用元を提示しておきます。
http://www.nature.com/articles/srep20846

多分、元論文まで辿って読む方はあまりいないと思うので、頑張ってアブストラクトを日本語訳に直しました。なるべく直訳にこだわったので日本語が変だと思いますが、ご了承ください。 
普段、論文なんて読まない!という方に向けてなるべくこのような原文を紹介していきたいと思っています。
案外、ニュース記事は簡潔に書かれていて、本当に正しいことを見つけるのが難しいです。
積極的に原文を読む癖を少しずつつけていきたいものですね。

【本文アブストラクト】
社会性を持った昆虫の集団は、その生産性を最大化することが最適性理論によって予想されていました。しかし一方で、多くの非活動的な労働者(働かないアリ)がアリの集団においては報告されています。
実際に、このアリ社会において非効率的な低短期間な生産性は、仕事依存的な刺激に応答するための閾値内での働きアリ間の高い多様性によって生じます。
なぜ、このような非効率的な戦略が自然の選択圧によって維持され続けているのでしょうか?
この論文において著者らは、非活動的な労働者(働かないアリ)は集団の長期的な持続性に取って必要であることを明らかにしました。
著者らのシュミレーションによって、活動的な労働者(働きアリ)が疲れた時に非活動的な労働者(働かないアリ)が彼らに代わって労働をするという重要な役割を担うことを明らかにし、更にそれらによって(労働における)可変的な閾値を持つコロニーは、持たないコロニーと比較して長続きすることがわかりました。
また、この非活動的な労働者(働かないアリ)が活動的な労働者(働きアリ)に取って代わる証拠をアリの集団において確認することができました。
それゆえに、非活動的な労働者(働きアリ)の存在は、短期的な生産性を犠牲にする代わりに長期的な集団の持続性を増加させるのです。
この非活動的な労働者(働きアリ)は、環境の確率性に応答するためのbed-hedging strategy(両賭戦略)を示していると考えられます。

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