Taking the online medicine

The economist の3/16の少し古い記事です。バイオ系の研究室にいた身としては興味深かったので、読んでざっくり要約してみました。本当にざっくりなので人物名とか日付とかは書いてないのでちゃんと知りたい人は是非原文を読んでください。

Taking the online medicine

http://www.economist.com/news/science-and-technology/21694990-old-fashioned-ways-reporting-new-discoveries-are-holding-back-medical-research?fsrc=scn/tw/te/pe/ed/Takingtheonlinemedicine

【ざっくり要約】
ジカ熱に関する研究を行っている研究者が自身のラボでの最新の研究成果をオンライン上で共有することを発表して、話題となりました。
医学・生物学系においてはこのような取り組み自体はとても稀です。

一般的に、医学・生物学においてはnatureやscience、cellなどのいわゆる一流ジャーナルに掲載されることが重要であり、生物学者は研究成果がパブリッシュされるまでは自身の研究をシェアすることを拒む傾向にあります。

一度研究論文を各ジャーナルにサブミットすると、何週間もpeer revier(査読)という審査プロセスを経ます。
ジャーナルへの掲載が断られると次のジャーナルに応募することを繰り返すので、研究成果が日の目を見るまで何年もかかることがあります。
また、近年は医学・生物系の論文数は急増しており、出版社側も非常に多くのデータを求めるようになったことから研究者にとっても厳しい状況が起きています。

最近、大学や多くのアカデミア系のジャーナルが研究者に対してジカ熱に関する重要な研究結果は最新の情報を公開するように呼びかけており、彼らは、プレプリント(前刷り)した後にジャーナルに掲載する際のデメリットはないと述べています。

物理学の分野においては、arXivというプレプリントを保存・公開するウェブサイトが既に1991年からあり、これを医学・生物学でも行っていこうという主張もあります。
しかし、バイオ系による同様のサービスは、研究者側の否定的な意見も多く現在はあまりうまく稼働していません。

この記事では、いくつか医学・生物学が否定する理由をあげています。
1つ目の主張として、「一流ジャーナルへの掲載に不利になってしまうのでは無いか」ということがあります。
Natureやscienceを含む多くのジャーナルではサブミットの前にプレプリントを公開しても問題無いという声明を出している一方で、Cellなどはケースバイケースの対応なので出版側に連絡をするようにしてくれ、といった対応もあります。
一般的には肯定的な意見が多いようです。
2つ目の主張としては、「プレプリントを公開することで、他の研究者に盗まれてしまうのでは無いか」です。
この問題ついて物理学などでは、最初の発見はジャーナル誌への掲載された論文よりもプレプリントなどで公開されている論文が優先されるという対応をしています。
なので、同様のやり方を踏襲すれば医学・生物学系でもこの問題は解決できます。

最後に「プレプリントにおける研究結果の間違いがミスリーディングな印象を他人に与えてしまうのでは無いか」という主張があります。

しかし、物理学においてはこれに関して重大な問題は起きていません。また、そもそも査読のシステムが間違いを完全に排除できるわけでは無いのでこの点も問題無いと述べています。

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自分は生物系の研究室だったので、この記事に出てくるような物理学などにおけるarXivといったサービスがあることを全く知りませんでした。
確かに、現状バイオ系の論文は、大量のデータを要求される傾向がかなり強いらしく、投稿数も非常に多いことから実際に掲載までかなり時間がかかると聞いています。
ただ、医学・生物学系においては、物理学とは違った問題も多くあるので、手放しにプレプリントの公開をすること自体はまた違うのかな…とも思ってしまうのですが。
どうなのでしょう。

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