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コロナハラスメントへの対応と改正労働施策総合推進法の施行

新型コロナウイルスの感染拡大に伴い、職場で新型コロナウイルス感染症を理由にしたハラスメントが頻発しているといった報道がなされています。

連合には「上司が部下に除菌スプレーをかけた」「新入社員は『若いから大丈夫』との理由で東京都内の職場に通常出勤を指示された」などの相談が寄せられた。(共同通信・4月21日付佐賀新聞)

見えないウイルスに対する不安や企業業績・経済情勢に対する不安が、新型コロナウイルス感染症を理由にしたものも含め、パワーハラスメントの増加をもたらすかもしれません。

事業者としては、職場でパワーハラスメントが生じないよう、パワーハラスメント対策を行う必要があります。

パワーハラスメントに関しては、職場におけるパワーハラスメント対策を義務化する改正労働施策総合推進法が来月1日(令和2年6月1日)に施行されます(中小企業については、2年後の令和4年3月31日まで適用が猶予されます)。

令和2年1月15日に、パワーハラスメントに関して雇用管理上講ずべき措置等について定めた指針等が告示されています。例えば、事業主が職場における優越的な関係を背景とした言動に起因する問題に関して雇用管理上講ずべき措置等についての指針(令和2年厚生労働省告示第5号)が告示されました。

この告示は、職場におけるパワーハラスメントを、次のように定義づけています。

職場において行われる
1 優越的な関係を背景とした言動であって、
2 業務上必要かつ相当な範囲を超えたものにより、
3 労働者の就業環境が害されるもの
であり、1から3までの要素を全て満たすものをいう。

また、

客観的にみて、業務上必要かつ相当な範囲で行われる適正な業務指示や指導については、職場におけるパワーハラスメントには該当しない

としています。

「優越的な関係を背景とした」言動とはどういうことを意味するのか、「業務上必要かつ相当な範囲を超えた」言動とはどういうものを意味するのかといった、細かな定義についても指針に示されています。

代表的なパワーハラスメントについては、従来より6つの類型があるとされています。

1 身体的な攻撃(暴行・傷害)
2 精神的な攻撃(脅迫・名誉棄損・侮辱・ひどい暴言)
3 人間関係からの切り離し(隔離・仲間外し・無視)
4 過大な要求(業務上明らかに不要なことや遂行不可能なことの強制・仕事の妨害)
5 過小な要求(業務上の合理性なく能力や経験とかけ離れた程度の低い仕事を命じることや仕事を与えないこと)
6 個の侵害(私的なことに過度に立ち入ること)

「上司が部下に除菌スプレーをかけた」などは、刑法の暴行罪の構成要件に該当する可能性すらありますから、1の身体的な攻撃に当たります。

もちろん、パワーハラスメント、上の6つに限定されるものではありません。6つの類型に直接当てはまりそうにないものでも、

職場において行われる
1 優越的な関係を背景とした言動であって、
2 業務上必要かつ相当な範囲を超えたものにより、
3 労働者の就業環境が害されるもの
であり、1から3までの要素を全て満たすものをいう。

という要件を満たすものであれば、パワーハラスメントとなります。

「新入社員は『若いから大丈夫』との理由で東京都内の職場に通常出勤を指示された」などは、上の6つには当てはまらなくても、このパワハラの定義には当てはまるのではないのでしょうか。

指針では、事業主が雇用管理上講ずべき具体的措置として次の4つを示しています。

1 事業主の方針等の明確化及びその周知・啓発
2 相談に応じ、適切に対応するために必要な体制の整備
3 職場におけるパワーハラスメントに係る事後の迅速かつ適切な対応
4 1~3に併せて、相談者・行為者等のプライバシーを保護するために必要な措置や不利益な取扱いをされない旨を定め、労働者にその周知・啓発
することについて措置を講じること

見えないウイルスに対する不安や企業業績・経済情勢に対する不安により、新型コロナウイルス感染症を理由にしたものも含め、パワーハラスメントが横行する危険性が高まっていますが、事業者としてはそのような事態が生じないようしっかり対策を講ずる必要があります。


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