一時保護への司法審査の導入・児童への意見聴取を盛り込んだ児童福祉法改正案

今通常国会に、児童福祉法改正案が提出されることとなりました。

児童相談所実務に大変大きな影響を及ぼしそうです。

以下、法案の中でも、特に、一時保護への司法審査の導入と、児童に対する意見聴取制度の仕組みの導入について触れます。

一時保護開始時の判断に関する司法審査の導入

「一時保護開始時の判断に関する司法審査の導入」については、改正案33条3項は、親権者の同意がある場合等を除き、一時保護を開始した日から7日以内に地裁・家裁又は簡裁に、一時保護状を請求しなければならないという内容になっています。

第三十三条
3 児童相談所長又は都道府県知事は、前二項の規定による一時保護を行うときは、次に掲げる場合を除き、一時保護を開始した日から起算して七日以内に、第一項に規定する場合に該当し、かつ、一時保護の必要があると認められる資料を添えて、これらの者の所属する官公署の所在地を管轄する地方裁判所、家庭裁判所又は簡易裁判所の裁判官に次項に規定する一時保護状を請求しなければならない。この場合において、一時保護を開始する前にあら
かじめ一時保護状を請求することを妨げない。
一 当該一時保護を行うことについて当該児童の親権を行う者又は未成年後見人の同意がある場合
二 当該児童に親権を行う者又は未成年後見人がない場合
三 当該一時保護をその開始した日から起算して七日以内に解除した場合
4 裁判官は、前項の規定による請求(以下この条において「一時保護状の請求」という。)のあつた児童について、第一項に規定する場合に該当すると認めるときは、一時保護状を発する。ただし、明らかに一時保護の必要がないと認めるときは、この限りでない。

一時保護状の請求が却下された場合には、児童の生命又は心身に重大な危害が生じると見込まれるときに限り、一時保護状請求を却下する裁判があった日の翌日から3日以内に却下の裁判の取消しを求めることができるとされます。一時保護状の請求についての裁判が確定するまでの間は引き続き一時保護ができる。改正案はそのような内容となっています。

7 児童相談所長又は都道府県知事は、裁判官が一時保護状の請求を却下する裁判をしたときは、速やかに一時保護を解除しなければならない。ただし、一時保護を行わなければ児童の生命又は心身に重大な危害が生じると見込まれるときは、児童相談所長又は都道府県知事は、当該裁判があつた日の翌日から起算して三日以内に限り、第一項に規定する場合に該当し、かつ、一時保護の必要があると認められる資料及び一時保護を行わなければ児童の生命又は心身に重大な危害が生じると見込まれると認められる資料を添えて、簡易裁判所の裁判官がした裁判に対しては管轄地方裁判所に、その他の裁判官がした裁判に対してはその裁判官が所属する裁判所にその裁判の取消しを請求することができる。
8 前項ただし書の請求を受けた地方裁判所又は家庭裁判所は、合議体で決定をしなければならない。
9 第七項本文の規定にかかわらず、児童相談所長又は都道府県知事は、同項ただし書の規定による請求をするときは、一時保護状の請求についての裁判が確定するまでの間、引き続き第一項又は第二項の規定による一時保護を行うことができる。

一時保護状の請求をする際に児童相談所はどのような資料をそろえる必要があるのか未知数です。

そして、これまで児童虐待案件に触れたことのない(例えば、家庭裁判所において一時保護延長や児童福祉法28条審判に携わったことがない)裁判官が一時保護状の審査に携わることとなると推測されます。裁判官が一時保護状の謂わば自動発券機になっては司法審査は無意味なものとなりますが、審査する側の質の確保がどのように行われるのかも気になるところです。

児童相談所、裁判所、それぞれのキャパシティ的に大丈夫なのか、心配です。

児童に対する意見聴取等措置の導入

「児童に対する意見聴取等措置の導入」については、改正案33条の3の3において、児童・保護者に対する指導措置、里親委託・施設入所措置、児童福祉法28条の入所措置の更新、一時保護の際、そしてこうした措置を解除等する場合に、児童の意見聴取等措置をとることを義務づける内容となっています。

三十三条の三の三 都道府県知事又は児童相談所長は、次に掲げる場合においては、児童の最善の利益を考慮するとともに、児童の意見又は意向を勘案して措置を行うために、あらかじめ、年齢、発達の状況その他の当該児童の事情に応じ意見聴取その他の措置(以下この条において「意見聴取等措置」という。)をとらなければならない。ただし、児童の生命又は心身の安全を確保するため緊急を要する場合で、あらかじめ意見聴取等措置をとるいとまがないときは、次に規定する措置を行つた後速やかに意見聴取等措置をとらなければならない。
一 第二十六条第一項第二号の措置を採る場合又は当該措置を解除し、停止し、若しくは他の措置に変更する場合
二 第二十七条第一項第二号若しくは第三号若しくは第二項の措置を採る場合又はこれらの措置を解除し、停止し、若しくは他の措置に変更する場合
三 第二十八条第二項ただし書の規定に基づき第二十七条第一項第三号の措置の期間を更新する場合
四 第三十三条第一項又は第二項の規定による一時保護を行う場合又はこれを解除する場合

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