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『ニュータイプの時代』を生きる。

2019年5月8日(水)山口周さんによる講義を伺った。山口さんは、私がデザインに関心を持つきっかけを与えてくれた人である。山口さんの著書である『世界のエリートはなぜ「美意識」を鍛えるのか?』という本を読んで、初めて経営における「アート」や「デザイン」という言葉に興味を抱いた。

山口さんは1970年東京都生まれ。慶應義塾大学文学部哲学科卒業、同大学院文学研究科美学美術史学専攻修士課程修了。電通、ボストン・コンサルティング・グループ等を経て、組織開発・人材育成を専門とするコーン・フェリー・ヘイグループに参画。

以下は、山口周さんによる講義のまとめである。

現在、企業活動は様々な評価指標(KPI)によって計量されている。典型的には、「資本回転率」であったり「生産性」であったりするが、このような指標で計ることができるのは、企業活動でもごく一部の「計測可能な側面」に限定される。しかし、企業活動というのは極めて多岐にわたる複雑な要素によって構成される全体的なシステムであるため、経営の健全性は、必ずしもこのような「計測可能な指標」だけによって計れるわけではないし、そもそも、計られるべきではない。しかし、残念ながら日本企業の多くは、経営に関わる人たちの美意識がほとんど問われず、計測可能な指標だけを伸ばしていく一種のゲームのような状態に陥っている。

本質的には、企業というのは人の集積で出来上がっており、ビジネスというのは、人と人とのコミュニケーションによって成立しているため、「数値」だけに限って経営の健全性をチェックし、改めようと思っても限界がある。本来、経営の意思決定においては「論理」も「直感」も、高い次元で活用すべきモードであるが、両者のうちの一方が、片方に対して劣後するという考え方は危険だという認識の上で、現在の企業運営は、その軸足が「論理」に偏りすぎている。

現在の世の中は、全地球的な経済発展の結果、世界が巨大な「自己実現欲求の市場」になりつつある。「自己実現欲求の市場」においては、機能的な便益や価格競争力よりも、顧客の完成を刺激する情緒的で自己実現的な便益が重要となる。市場に聞いても不満はない時代だからこそ、「解答」よりも「問題」が希少であり、「問題」を生み出すためには「ありたい姿」を描くことが重要である。そして、その「ありたい姿」を描くためには、「ヒューマニティ」つまり、人を理解することが必要である。

加えて、このような世の中では、これまでの「役に立つ」という軸ではなく、個人にとっての「意味」が重視される。パタゴニアや石坂産業のように、ミッションに共感されることが大切となる。そして、それらの共感を生み出すために必要な能力が、センスメイキングであるという。

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