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言葉

表現しきれないもどかしさ
伝わらない寂しさ

話せば話すほど 遠ざかる
話せば話すほど 心が痛む
話せば話すほど 虚しさが募り
話せば話すほど あなたを傷付けた

声を失い森へ入ったあの日
僕は木に囲まれ
鳥のさえずりをはじめてきいた
風の中で
光と影のダンスを見た

言葉で説明できない
言葉では説明できるはずもない
大きなもの

目の前の苔 雨に濡れた草
その中を歩く虫
ゴマ粒くらいの虫

そんな小さなところにも 感じた
感じたものの大きさに 震える

気付こうとすると逃げられる
ふとした瞬間に現れる

ごめんなさい 
が雫となり

ありがとうが
木霊する

声にしたのは
誰だろう

あの木や草や虫たちに見たもの
そこから生まれる

言葉も同じ

およそ表現できないものを
言葉で伝えようとする
尊い試みを

もう一度
手の中でやさしく握りしめ

僕は森から出ていく

(変遷する詩 5)