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【短編小説】電車の遅延にイライラしてしまうあなたへ

まだ日が明るい夏の19時。仕事が終わり、電車のホームへ行く。

19時2分、電車が到着。いつものように後ろから2番目の車両に乗る。この時間帯は帰宅ラッシュで座れないのでつり革を持ち、スマホでTwitterを見ながら過ごすのが毎日の日課だ。


電車が動きたし、次の駅へ到着。となりにいたお婆さんと部活帰りの高校生3人組がホームに出たと同時に車内アナウンスが入った。

「現在、二駅先で発生した人身事故の影響で、一時運転を見合わせおります」

遅延だ。

「はー、まじか。ついてないな。」


待てど待てど電車は動かない。車内の空気はピリピリとし、同じ車両に乗っていた50代のサラリーマンは車掌に声を荒げている。

そんな雰囲気もあってか、自分自身もイライラとしていた。気付けば右足は小刻みに揺れていて、舌打ちをしていた。

おっそいな。早く動けよ。と思わず声に出して言う。


突然手に持っていたスマホが震えた。しばらく連絡していない妹からの電話だ。

なんだよ、こんなときにと思いながら車両からホームに出て電話に出る。


「もしもし、何だよ」

「もしもし、お兄ちゃん!!お母さんが、お母さんが、、、」


遅延の原因は線路に身を投げた母親だった。


遅延になるとついイライラしてしまう。

ただそんな遅延が大切な人によるものだったとしても、あなたは同じような気持ちになるのだろうか。


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