三略 上 3

そういえば、社会科学ってあるのだけど。



社会科学は、客観的に社会の真実を探求することとともに、人類にとっての有益を追求する。また、文科系の学問において基礎となる人間主体的な洞察力の活用と自然科学に由来する客観的視点を両立することで成立する。

まあ、兵法・戦略論のそのものみたいなところがあると思う。

まあだから「社会科学は役に立たない」って考えるのは、脳みそが壊れているのでしょう。


まあ「社会科学の入門」には、たぶん社会科学の専門家からみたら
「違う」とは思われるけど、

象牙の塔の、凡人には触れても意味不明な「社会科学」よりも、まだ理解しやすい「兵法」を知って、もう少し、賢くなれたら、幾分かマシになると思うので、

しばらくは、日本語の現代文訳をそのまま載せていきます。



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《軍讖》にこうあります「将の威を示すことができるのは、号令の効果です。戦の完全勝利は、軍政の効果です。兵士が身を投げだして戦うのは、命令を実行しようとする気持ちです」と。ですから将は命令を軽々しく取り消さず、賞罰は天地のごとく真っ直ぐに行うものです。そうであればこそ人を使いこなす事ができるのです。そして兵士は命令を実行するため、国の境を越えて行くのです。

軍を統率し態勢を整えるのは将軍です。勝負を制し敵を破るのは兵士です。ですから乱れた将軍が統率しても軍は整わず、統制の取れない兵士が戦っても敵を討つことが出来ません。そうなれば城を攻めても抜けず、町を攻めても落とせません。二者の攻略が上手くいかなければ、兵士の気力は衰え疲弊します。兵士が疲弊すれば、将軍は孤立して兵士は四散して離れます。そうなれば守っても固さはなく、戦えば敗北します。これを「老兵」と言います。

兵が老い疲れれば、将軍の威は弱まり、将軍の威がなければ、兵士は刑罰を軽くみるようになります。そうなれば小隊は統制を失い、兵士は逃亡します。兵士が逃亡すれば、敵がそれに乗じて攻め寄せます。利に乗じた敵と戦えば、我軍は必ず敗れます。

《軍讖》にこうあります「良將の軍の統率は、思いやりの心をもって人を治める」と。恩恵を施せば士気は日に日に高まります。戦えば疾風のごとく、攻めれば貯めた河の堰を切るが如く。このようなれば敵は戦いたくても為す術がありません。降伏するしか他になく、勝利の道はありません。これはつまり、将軍自ら人より率先するからであり、そうであればこそ天下を競うことができるのです。

《軍讖》にこうあります「軍は賞を表に出し、罰を裏とする」と。賞罰が明らかであれば、将の威信は保たれます。優秀な部下を得ることができれば、兵士は心服します。任じた部下が賢者であれば、すなわち敵国は震えることでしょう。

《軍讖》にこうあります「賢者の行くところ、そのまえに敵はなし」と。ですから賢士には驕らずにへりくだらなければなりませんし、将軍に任じたら安楽をはかって憂い事をなくすようにし、賢者の謀は深く信じるようにして疑ってはならないのです。

もし賢士に対して驕りを見せれば、従うことはありません。将軍に任じて憂い事があるならば、内外の信用を失います。賢者の謀を疑えば、敵国がよろこびます。このような状態で戦ったとしても、混乱を招くだけです。

将というものは、国の命です。将が上手く勝利をおさめるからこそ、国家は安定するのです。

《軍讖》にこうあります「将は清廉、冷静、公平、均整で、諫言や訴えに耳を傾け、進言を採用し、国の内情や土地や地形を心得て、そしてしっかりと軍権を司るもの」と。

仁者賢者の知恵、聖人の配慮、下々の願望、朝廷の意志、興亡の歴史のことは、将であれば良く良く知っておくべき事柄です。

将軍が、人材を渇望するように求めるならば、策謀も集まります。将軍が諫言に耳を傾けなければ、優秀な人材は去ります。献策を採らなければ、智謀の士は背きます。善悪同列に扱えば、功臣は気力を失います。独断専行ならば、部下は上に責任転嫁します。自分の功績を求めれば、下は働く気力がなくなります。陰口を信じれば、下の心は離れます。財をむさぼれば、下の悪事を責められません。好色すれば、部下も淫らに行動します。

この8項のうち一つに該当すれば、下の心は掴めません。二つあれば統制がとれません。三つあれば下は逃げます。四つもあるなら国に災禍が及びます。

《軍讖》にこうあります「将軍の謀は内密にするのが理想、将兵は一つにまとまるのが理想、敵は疾風のごとく攻めるのが理想」と。

将軍の謀が内密であれば、裏をかかるスキがありません。将兵が上手く連携すれば、結束が固くなります。敵を攻めるのに素早く行えば、敵は守りを固める余裕もありません。軍にこの三つの要素が備わっているならば、計画通りに事が進みます。

計画が漏れているならば、軍の勢は崩れます。外にも内にも気を使う必要が出てくるならば、とてもその災いを全て防ぐことは出来ません。そのうえ賄賂でもまかれたならば、裏切り者も増えるでしょう。この三つの要素が発生した軍は必ず敗北します。

将軍に思慮がなければ、智謀の士は愛想を尽かします。将軍に勇気がなければ、士卒の士気が保てません。将軍がみだりに動けば、軍も軽率になります。将軍がたびたび怒れば、全軍が萎縮します。

《軍讖》にこうあります「思慮と勇気は将軍に欠かせない要素。怒りと行動は将軍が制御すべき要素。この四者は、将軍の気をつけるべき事柄である」と。

《軍讖》にこうあります「軍に資金がなければ、人材は来ない。軍に賞賜がなければ、人材を使えない」と。

《軍讖》にこうあります「美味なる下には必ず釣れた魚あり。重賞の下には必ず勇者あり」と。これはつまり、礼をもって遇すれば人材が自ずと集まり、賞をもって遇すれば人材は身を投げ出して働く、ということです。

人材を集めようと思えば環境を整え、人材を働かせようと思ったら見返りを示すことで、そこでようやく人材を得ることができるのです。

逆に言えば、礼を渋れば人材は去り、賞を渋れば人材は働かないのです。どちらも怠らずに行ってこそ、人材は我先にと働くものなのです。

《軍讖》にこうあります「国が軍を興す時は、まず恩恵をさかんに施すもの。敵を攻め取ろうとする時は、まず民衆を養うもの。少をもって多に勝つ要因は恩恵。弱をもって強に勝つ要因は民衆」と。良將が人材を我が身のように養うのは、このためなのです。

また、そうであってこそ全軍の心は一つになり、そして完全なる勝利をおさめることができるのです。

《軍讖》にこうあります「用兵の要は、まず敵情を観察し、敵の備蓄を探り、敵の食糧事情を調べ、そして勝利を算定し、天の時と地の利を考慮し、敵の弱点を探すことにある」と。

国に戦もないのに物資を運び入れているのは、物資が不足しているからです。民衆の顔色が悪いのは、物資に困窮しているからです。遠方に食料を輸送すれば、人はそのぶん飢えることになります。あわただしい様子であれば、食が満たされていないことのあらわれです。

つまり遠方に運んだ分の食料が不足するということであり、二倍運べば二倍不足し、三倍運べば三倍不足するのです。そうなれば国が空っぽになります。国が空っぽであれば、民も貧窮することになり、そうなれば上下の信頼もなくなります。そして敵が外から攻めてくれば、内に盗人が横行するようになり、このような状態では国は必ず潰れてしまうでしょう。

《軍讖》にこうあります「上が暴虐であれば、下は忙しく過酷になる。たびたび重税を集め、たびたび刑罰を与えれば、民も残虐になる。これを国を亡くすという」と。

《軍讖》にこうあります「内情は貪欲であるのに外面は清廉にし、栄誉を偽り名を高め、公を傘にきて恩を売り、上にも下にも惑わせて、身を飾って良い顔をし、そして高位を得る。これを盗人の始まりという」と。

《軍讖》にこうあります「有力者たちが結党し、顔見知りだけを推し進め、姦賊を取り上げ、仁者賢者を退け、公事よりも私事を優先し、結果として官吏に乱れが生じる。これを乱の源という」と。

《軍讖》にこうあります「豪族が集まって姦計をめぐらし、本来の位よりも高い地位を得て、つねに威を高めることを求め、蔓のように連なってはびこり、私の徳を植え付けて恩を売り、権力を奪い、下々の民をしいたげ、結果として国内が騒がしくなるも、ほかの臣は隠れて発言しない。これを乱の根という」と。

《軍讖》にこうあります「地方の姦賊が成り上がり、地方官を押しのけ、つねづね利便を追求し、意を曲げて公文書を弄り、そして君主の立場まで危うくする。これを國姦という」と。

《軍讖》にこうあります「役人は多く民は少なく、尊卑の区別もなく、強弱が対立し、それをみて禁止も制御もすることなく、しまいには君主までそれに飲み込まれてしまえば、国にまでその咎が及ぶ」と。

《軍讖》にこうあります「善を善きことと知りながら行わず、悪を悪いことと知りながら退けず、賢者がいても見ぬふりをし、不肖者が高位にあるだけでは、国までその害が及ぶ」と。

《軍讖》にこうあります「根よりも枝葉のほうが大きく、連携して勢力を保ち、卑賤のものが貴をしのぎ、ながらくそのような状態であるのに、上がそれを退けずただ忍んでいるのでは、国までその腐敗が及ぶ」と。

《軍讖》にこうあります「佞臣が上に在れば、全軍みな訴える。威を借りて自らを可愛がり、行動するに周囲に耳を傾けない。進むでもなく退くでもなく、いやしくも堂々と地位を取る。独断に任せて動き、動けばその功を誇らしくする。徳のある人物を誹謗し、平庸なものを用いるよう進言し、善でもなく悪でもなく、自分を規準として周りを同調させる。政務を怠り、命令を怠る。苛烈なる政治を横行し、しばしば古きことと通例を変える。君主がこのような佞臣を用いたなら、必ずひどい害を被ります。

《軍讖》にこうあります「姦雄なる腹黒い人間たちが互いに称賛し、実態を明らかにせず陰に隠蔽する。中傷と賞賛を自由に行い、正論を聞き入れず耳を塞ぐ。それぞれ私利するところに媚びへつらい、主君から忠臣を遠ざける」と。

ですから主君は異なる意見も考慮すべきですし、そうであれば小さな企みも看破できるのです。主君が優れた人材を招聘すれば、姦雄は自然と去るほかありません。主君が老練な旧臣を用いれば、万事全て安定します。主君が在野の人材を招聘すれば、人材としても能力を発揮でき国としても実利を得ます。下々の民にも気をかければ、功績を広めることにもなります。人心を失わなければ、その徳は満ちて天下という広い大洋に溢れることになります。

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